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日本経済はまだ成長できるか?
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2025年6月17日

デフレマインドからの脱却で日本はまだ成長できるのか? 夏の参院選で何を論点にすべきか? エコノミスト・永濱利廣氏が語る、日本がもう一度成長するための"3つの戦略"とは? <ゲスト> 永濱利廣|第一生命経済研究所 首席エコノミスト 早稲田大学卒業、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。 第一生命...
永濱利廣氏が語る「日本経済の供給力強化」とは?高圧経済と転職人材育成の可能性
日本経済の供給力強化には短期・中期・長期の3つの視点が必要だと、第一生命経済研究所の首席エコノミスト永濱利廣氏は指摘する。特に「転職人材の育成」と「支出支援」という2つのキーワードが重要な役割を果たすという。日本経済の活性化のために何が必要なのか、永濱氏の見解を聞いた。

Q. 日本経済の供給力を上げるために必要な視点は?
日本経済の供給力を上げるためには、短期・中期・長期の3つの視点が必要だと考えている。特に短期的に日本の実質賃金が上がらない原因として最も影響しているのが「労働時間の減少」だ。アメリカやヨーロッパと日本の実質賃金の変化を比較すると、日本で最も足を引っ張っているのがこの部分だ。
非正規労働者の割合が上がったことも一因だが、特に近年は「もっとバリバリ働いて稼ぎたいのに働けない」という人たちが多い。そのため、短期的には労働時間規制の緩和が手っ取り早い対策になるだろう。
Q. 中期的な供給力強化策とは?
中期的には国内への生産拠点の回帰が重要だ。日本経済の供給力が低下した原因の一つは、長期間続いた円高によって生産拠点が海外に流出してしまったことにある。
特に半導体などの戦略物資については、経済安全保障の観点からも国内で生産することが望ましい。既に国内回帰や対日直接投資は増え始めているが、この流れを政府が後押しすることで供給力を強化できる。
Q. 長期的な人材育成についてどう考える?
長期的には「転職人材の育成」が鍵になる。これまでの日本では、大学に進学してホワイトカラー志向になる傾向が強かった。しかし、これからのAI時代では、AIでは代替できない技能職やエッセンシャルワーカーの価値が高まっていくだろう。
例えばドイツのマイスター制度のように、早い段階から手に職をつける教育システムが参考になる。ドイツは転職人材を育成して国内で生産し、輸出することで貿易黒字を生み出している。日本と対照的に、ドイツの経常黒字のほとんどが貿易黒字なのに対し、日本は所得収支だけで黒字を稼いでいる状況だ。
Q. 転職人材の市場価値はどうなっている?
既に一部の地域では技能職の価値が高まっている。例えば岩手県北上市では、半導体工場の建設により地元の工業高校生の採用競争が激化している。高卒で入社すると1年目から月収30万円ほど稼げるため、地元の大学に進学するよりも工業高校から大手メーカーの工場に就職する方が給料が高いケースもある。
また、熊本のTSMC工場では、派遣社員でも食事完備で時給3000円という求人があり、月収50万円を超える可能性がある。さらに、タクシー運転手のように、自分のペースで働けて高収入を得られる職種も存在する。
Q. 「高圧経済」という考え方とは?
高圧経済とは、需要を喚起して経済を加熱気味にすることで供給力を引き上げるという考え方だ。従来の経済学では、需要面の不足は金融政策や財政政策で対応し、供給面の強化は構造改革や規制緩和で対応するとされてきた。

しかし、高圧経済の考え方では、需要を過剰気味にすることで、若年層や女性など厳しい状況に置かれていた人々の労働供給を引き出し、結果的に供給力を高められるとする。この考え方はバイデン政権の下でも「モダンサプライサイドエコノミクス」として実践された。
Q. 日本経済の問題点は何か?
日本経済の最大の問題は、安倍政権のアベノミクス以前から続いた異常な円高デフレによって国内の供給力が外に出て行ってしまい、供給力が毀損したことだ。
供給力を上げるためには、構造改革や規制緩和だけでは不十分で、政府が供給力強化につながる分野に積極的に財政を投入することが必要だ。さらに、消費を促す政策も組み合わせることで、日本経済は改善していくだろう。
Q. 支出支援とはどういう意味か?
日本の場合、賃金が上がっても支出の紐が緩まないことが問題だ。これはデフレマインドが根強く残っているためで、人工的に支出を促す政策が必要になる。

内閣府のマクロモデルによると、1兆円の財政支出がGDPに与える影響は政策によって大きく異なる。公共投資が1.05兆円と最も効果が高く、消費税減税は0.44兆円、法人税減税は0.35兆円、所得税減税は0.21兆円となっている。
給付金や所得減税のような「使わなくても得する政策」よりも、消費税減税のような「使わないと恩恵を受けられない政策」の方が効果は高い。しかし、給付金が選ばれやすいのは、ワンショットで完結できるという政治的な理由もある。
Q. 国債利回りの上昇についてどう見るべきか?
最近の日本の長期国債利回りの上昇は、主にアメリカの長期金利上昇の影響を受けたものだと考えられる。4月以降のG7諸国の30年債利回りの上昇幅を比較すると、最も上昇したのはアメリカで、次いで日本、カナダ、イギリスの順だ。
一方で、イタリア、フランス、ドイツの利回りはむしろ下がっている。これはアメリカの金融市場と強く結びついている国々の国債利回りが上昇し、関連性が薄い国々の利回りが下がるという国際的なマネーフローの変化によるものだ。
Q. 今後の金利見通しはどうか?
2025年の日本銀行の利上げについては、現時点では可能性は低いと見ている。ただし、アメリカ経済が予想外に底堅く、悪影響が出るのが遅れるのであれば、その前に1回程度は利上げを行う可能性もある。
また、国債利回りの上昇対策としては、既に財務省が国債の年限別発行計画を修正して対応し始めている。具体的には、長期国債の発行額を減らし、中長期国債の発行を増やすなどの調整だ。さらに、日銀の国債保有減少ペースを緩めるという対応策も考えられる。