PIVOT TALK BUSINESS
熱中症対策完全マニュアル。酒とカフェインに要注意
(221)
6,226回視聴
2025年6月5日

6月からの法改正で対策が義務化される熱中症。なぜ今、熱中症が増えているのか?どう職場や学校や家庭で対策すればいいのか?プロの医師2人に解説してもらった。 <ゲスト> 志賀隆|国際医療福祉大学教授 2001年千葉大学卒業。米国メイヨー・クリニックで研修を経て、マサチューセッツ総合病院で指導医に。帰国...
熱中症はもはや社会問題に!予防と対策の新常識
社会通念が一段階上がった熱中症対策。気温上昇と共に増え続ける搬送者数、そして法改正による企業責任の明確化。いま私たちに求められる対策とは?専門家が語る最新情報と注意点を、Q&A形式でお届けします。

Q. なぜ今、熱中症が重要視されているのですか?
熱中症による搬送者数は年々増加しています。特に高齢者を中心に搬送が増えており、社会問題となっています。環境省のデータによると、気温の上昇に伴い熱中症による死亡者数も増加し、年間1,000人を超える事態となっています。

さらに2024年6月から労働安全衛生法が改正され、企業の熱中症対策が義務化されました。これにより、職場での熱中症対策が法的義務となり、事業者には明確な責任が課せられるようになりました。
熱中症に対する社会通念が一段階上がったといえるでしょう。近い将来、日本では熱中症で亡くなる方が交通事故死を上回るとも予測されています。
Q. 熱中症はどのような人がなりやすいのですか?
熱中症のリスクが高い人には以下のような特徴があります:
1. 高齢者:体内の水分量が少なく、喉の渇きを感じる感覚が弱くなっています
2. 若年層(特に中学・高校入学時):暑さに慣れていない
3. 持病のある人:糖尿病、高血圧、アレルギーなどの薬を服用している人
4. 肥満の人:体温調節が難しい
5. 屋外で激しい運動や労働をする人
6. アルコールを摂取した人:体内の水分量が減少し脱水状態になりやすい
特に注意すべきは、二日酔いの状態で暑い日に活動することです。アルコールには利尿作用があり、水分が失われるため、熱中症のリスクが高まります。
Q. 熱中症の初期症状は何ですか?
熱中症の初期症状には次のようなものがあります:
- めまい、ふらつき
- だるさ
- 頭痛
- 吐き気
- 足がつる
- 生あくび
症状が進行すると:
- 大量の発汗
- 強い口渇感
- 筋肉痛
- 筋肉の硬直
さらに重症化すると:
- 意識障害
- けいれん
- 高体温(40℃以上)
特に意識障害や40℃以上の高体温は「熱射病」と呼ばれる最重症型で、命に関わる状態です。
Q. 法改正で企業に求められる熱中症対策とは?
2024年6月1日から労働安全衛生法が改正され、企業の熱中症対策が強化されました。具体的には:
1. 外気温31℃以上、またはWBGT(暑さ指数)28以上の環境で、連続1時間または合計4時間以上働く職場では対策が必須
2. 水分・塩分補給の徹底
3. 休憩時間の確保(1時間に1回程度)
4. 適切な服装の指導(通気性の良い服装など)
5. 緊急時の対応手順の明確化
6. 熱中症発生時の記録と再発防止策の検討
これまでは熱中症が発生してから対応していましたが、法改正後は「めまい」「ふらつき」などの初期症状の段階で対応することが求められています。違反した場合は罰則(罰金)も設けられています。
Q. 熱中症予防のために日常生活で気をつけるべきことは?
日常生活での熱中症予防のポイントは以下の通りです:
1. 水分補給:15分に1回、コップ1杯程度の水分を摂取する
2. 休憩:1時間に2回程度の休憩を取る
3. 服装:白や黄色など光を反射する色の、通気性の良い服を着用する(黒色は避ける)
4. アルコール:摂取量を減らす(特に夏場)
5. カフェイン:体を覚醒させ体温を上げるため、摂取を控える
6. 朝食:必ず摂る(熱中症対策にはエネルギーが必要)
7. エアコン:適切な温度で使用する(特に就寝時)
8. 暑さ慣れ:徐々に屋外活動を増やし、体を暑さに慣らす(1週間かけて1日20%ずつ活動量を増やす)
特に高齢者は、夜間のトイレを気にして水分摂取を控える傾向がありますが、これは危険です。多少トイレに起きることになっても、水分はしっかり摂るべきです。
Q. 熱中症になった人を見つけたらどうすればいいですか?
熱中症の疑いがある人を見つけたら、以下の対応をしましょう:
1. 涼しい場所に移動させる
2. 衣服を緩め、体を冷やす
3. 水分・塩分を補給させる(自分で飲めない場合は医療機関へ)
意識がおかしい、自分で水分が取れない、歩けないといった症状がある場合は、すぐに救急車を呼びましょう。

現場で体を冷やす方法として「TACO法」があります。これはビニールシートの上に患者を寝かせ、両端を持ち上げて簡易的な水風呂を作り、氷水で全身を冷やす方法です。氷や冷たい水で体の表面を冷やして体温を下げることが重要です。
Q. 特に注意が必要な場面や状況はありますか?
特に注意が必要な場面・状況には以下のようなものがあります:
1. 学校の運動部活動(特に新入生で暑さに慣れていない時期)
2. 屋外イベント(スポーツ観戦など)
3. 夏の甲子園のような長時間の屋外活動
4. 二日酔いの状態での屋外活動
5. 前日にアルコールを摂取した翌日のゴルフや運動会
6. 高齢者の散歩(特に日中の暑い時間帯)
7. エアコンを使わない夜間の睡眠

特に気をつけるべき時間帯は12時から15時で、この時間は外出や激しい活動を避けるのが理想的です。また、シーズン初めの暑い日は体が暑さに慣れていないため、特に注意が必要です。
Q. 熱中症と気温・暑さ指数(WBGT)の関係を教えてください
熱中症リスクを判断する指標として、気温とWBGT(暑さ指数)があります:
- 外気温31℃以上、またはWBGT28以上の環境は熱中症リスクが高い
- WBGT31以上では屋外活動は中止すべき
WBGTは気温だけでなく、湿度や輻射熱も考慮した総合的な熱中症危険度を示す指標です。黒い球体の中心に温度センサーを設置し、輻射熱の影響も測定します。
近年では、この指標に基づき、学校ではプール授業を含む屋外活動が中止になるケースも増えています。イベント主催者は、このWBGTを参考に安全配慮義務を果たすことが求められています。
Q. 熱中症対策として今後社会的に変わるべきことはありますか?
熱中症対策として社会的に検討すべき点には以下のようなものがあります:
1. 夏の甲子園などの屋外イベントの時間帯変更(朝や夕方・夜間へ)
2. 屋外スポーツ大会の屋内施設(ドーム)での開催
3. 夏季の労働・活動時間の制限と柔軟化
4. 高齢者向けのエアコン使用補助(東京都の水道料金減免など)
5. 気候変動に対応したイベントカレンダーの見直し(夏季集中から分散へ)
すでにサッカーはシーズンを変更し、夏を避けるようになっています。野球など伝統的なスポーツも、安全配慮義務の観点から見直しが必要かもしれません。