PIVOT TALK BUSINESS
スーパー米農家と考える、日本のコメが世界で勝つ方法
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2025年6月4日

世間を騒がすコメ高騰。ただ、現場で働くコメ農家の声が届いてこない。今、現場で何が起きているのか?コメ政策をどう変えればいいのか?日本のコメは世界で勝てるのか?スーパー米農家の経営者に現場のリアルと打開策を聞いた。 <ゲスト> 江城嘉一|YUIME 取締役 沖縄県出身。2012年にYUIME前身のエ...
「日本の農業は世界で勝てる」大規模農家が語る2025年問題と米産業の未来
Q. 2025年問題とは何ですか?
2025年問題とは、団塊の世代の方々が全員後期高齢者になる年で、農業界に大きな影響を与える問題です。農業界には定年がないため、現在も70代の専業農家が多く活躍していますが、彼らが一気にリタイアする可能性があります。

農業界の担い手が急激に減少することで、日本の食料安全保障に深刻な影響を与える可能性があります。専業農家がいなくなることについては議論するまでもなく、自然に起こることです。むしろ大切なのは、どうやって農地を集約し、大規模農家がより効率的に生産できる環境を整備するかという点です。
Q. 大規模農家の経営者たちは、どのような支援を求めていますか?
大規模農家が規模を拡大するには資金繰りが大きな課題となります。米作りは1年に1回しか収穫できないため、規模の拡大スピードが上がるほど資金繰りが苦しくなります。国が規模拡大を推進するなら、資金繰り支援と拡大に対する補助金をセットで提供する必要があります。
具体的には、規模拡大加算のような、規模を拡大した農家の拡大分を応援する補助金や、保証協会の特別枠の拡大などが求められています。さらに、地域計画を通じて計画的に農地を集積し、大規模農家が投資判断をしやすくすることも重要です。
Q. 日本の米産業は世界で勝てるのでしょうか?
日本の米産業は世界市場で十分に競争力を持っています。実は世界の米産業は、歴史的に日本人が権威づけてきました。明治時代に海を渡った浩田圭三郎はアメリカで「ライスキング」と呼ばれ、カリフォルニアでの米作りの技術体系を確立しました。同時期にオーストラリアに渡った高須譲も大規模化に成功し、アジアの米作りの成長にも日本人が貢献しています。

日本には40万kmの水路という世界に類を見ないインフラがあり、この豊富な水資源は高品質な米生産に不可欠です。また、気候変動に対応した新しい品種改良や、低コストで生産できる直播栽培技術なども進んでいます。世界的に見ても、人口増加に伴い米の需要は特にアジアとアフリカで増加しており、日本の技術を活かした米産業の成長可能性は非常に高いと言えます。
Q. オーガニック米市場の可能性について教えてください
世界のオーガニック米市場は急速に成長しており、北米で30億円、ヨーロッパで3000億円の市場規模があります。この市場は毎年14%の割合で成長しており、10年後には1兆2000億円になると予測されています。
日本は世界で唯一オーガニック市場が伸びていない国ですが、これは30年のデフレが原因の一つです。しかし世界では、特にアメリカやヨーロッパでオーガニック食品が当たり前になっています。フランスでは学校給食を100%オーガニックにする動きがあり、アメリカでもウォルマートがオーガニック商品を扱い始めるなど、オーガニックは主流になりつつあります。
EUは「緑の食料システム戦略」を掲げており、将来的にはオーガニックでない食品の輸入を制限する可能性もあります。日本の農業が世界市場で競争力を維持するためには、オーガニック米の生産拡大が不可欠です。
Q. 日本の農業のフルオートメーション化はどこまで進んでいますか?
農業の大きな課題は、毎日天候などの前提条件が変わるため、意思決定の再現性が難しい点です。熟練農業者は長年の経験から最適な判断ができますが、これを拡大してマネージャーに任せるとなると、その知識と経験を伝えるのに時間がかかります。
この課題を解決するため、AIを活用した「農場経営の仮想空間でのシミュレーション」が開発されています。AIマネージャーが過去のデータを分析し、その日の天候や土壌の状態に合わせて最適な作業計画を提案します。将来的には、このAIシステムがロボットトラクターやIoTデバイスと連動し、フルオートメーションファームが実現する見込みです。
さらに、24時間動き続ける除草ロボットなども開発されており、これが普及すれば農薬の使用量を大幅に削減できる可能性があります。このような技術革新は、オーガニック農業の実践をより容易にし、環境に優しい農業の拡大にも貢献します。
Q. 日本の米農業はカローラ戦略とレクサス戦略のどちらを取るべきですか?
日本の米農業の将来戦略については、大きく二つの視点があります。一つは「カローラ戦略」と呼ばれる、コモディティとしての米を大量生産し、国内外の幅広い市場に供給する方法です。もう一つは「レクサス戦略」と呼ばれる、高付加価値のプレミアム米(特にオーガニック米)を生産し、高価格帯の市場に供給する方法です。
カローラ戦略を支持する意見としては、日本の優れた水資源や技術を活かせば、生産コストを下げながら高品質な米を大量生産できるという点があります。特に世界の人口増加に伴い、アジアやアフリカでの米需要は増加しており、この市場を狙う価値はあります。
一方、レクサス戦略を支持する意見としては、日本の国土形状では規模の経済性が低く、コモディティ米では中国や南米などとの価格競争に勝つのが難しいという点があります。むしろ欧米のオーガニック市場を狙い、kg1000円程度で売られるプレミアム米を生産することで、日本の高コスト構造でも利益を出せるというメリットがあります。
両方の戦略にはそれぞれ利点があり、日本の米農業は市場のニーズに合わせて多様な戦略を取ることが重要です。
Q. 農業の人材問題はどう解決すべきですか?
農業の人材問題の核心は、学習の経済(経験による知識の蓄積)にあります。家族経営が多い農業では、家族内で知識が継承され、離職も少ないため効率的に運営できます。一方、企業が農業に参入する場合、従業員の教育コストが高く、離職リスクもあるため、マネジメントコストが大きな課題となります。

この問題を解決するには、AIやテクノロジーの活用が鍵となります。AIシステムが熟練農業者の知識を代替し、意思決定をサポートすることで、新人でも効率的に農業経営に参加できるようになります。また、農業経営においては、改善によって利益率が高まることを従業員に見える化し、経営者目線を持った現場オペレーターを育成することも重要です。
テック人材が農業に関心を持ち、データやAIを活用した新しい農業経営モデルを構築していくことが、日本の農業の未来を切り開く鍵となるでしょう。
Q. JAの役割について、大規模農家はどう考えていますか?
JAは兼業農家の集まりである共同組合として、重要な役割を果たしています。地域にライスセンターを設置して乾燥調整を行い、共同購買で肥料や農薬を提供するなど、小規模農家を支えるインフラとなっています。
実際にはJAの経済事業は約1500億円の赤字を抱えており、信用事業と共済事業の利益でこれを補っています。手数料も安く設定されており、地域の農業を支える社会インフラとして機能しています。

しかし、2025年問題で兼業農家が減少していく中、JAの役割も変化しています。JAの米の集荷率は約26%にとどまっており、農業界を支配しているわけではありません。むしろ、地域ごとにJAと大規模農家が新しい協力関係を模索する動きが出始めています。
欧米のように、米のような特定の品目に特化した専門農協へと変化していくことも一つの方向性です。将来的には、農業の大規模化や専業化に合わせて、JAも投資や生産性向上を重視する組織へと変わっていく可能性があります。