PIVOT TALK BUSINESS
2040年の人材ビジネス大予測。インディードリクルートのAI戦略
(228)
1.5万回視聴
2025年6月2日

AIマッチングにより急激に変化する人材ビジネス。2040年までに人材ビジネスの競争地図はどう変わっていくのか?リクルートインディードのAI戦略を軸としながら、『2040年の人材ビジネス大予測』著者の黒田真行氏に分析してもらった。 <ゲスト> 黒田真行|ルーセントドアーズ代表・転職コンサルタント 1...
2040年の人材ビジネス予測:「企業が人を選ぶ時代は終わる」
人材業界は大きな転換点を迎えている。今後、企業が人を選ぶ時代から、人に選ばれる企業だけが生き残る時代へとパラダイムシフトが起きると予測されている。この変化の中心にはAIがあり、人材マッチングの精度と効率を飛躍的に高めている。

Q. 2040年に向けた人材ビジネスの最大の変化は何ですか?
最大の変化は「企業が人を選ぶ時代が終わり、人に選ばれる企業だけが生き残る時代になる」ということだ。この言葉は簡単に理解できるように感じるが、それが引き起こす世界のイメージはまだ多くの人にとって漠然としている。
単に採用が難しくなるというだけでなく、選ばれる企業と選ばれない企業の二極化が極端に進む。特に優秀と言われる人材ほど選択権が強くなり、限られた企業に集中していく傾向が加速する。今の状況と比較できないほど、人材の選択権が強化される世界が訪れる。
この構造を支えているのは、生産年齢人口の激減だ。15歳から64歳の人口が前例のないレベルで減少し、平均すると2社に1社しか生産労働人口を雇えない状況になる。移民や労働参加率の向上などの対策だけでは解決できない根本的な問題だ。
Q. 人材サービスはどのように変化していきますか?
求人サービスは対象によって違いがあるが、大きな変化として以下の点が挙げられる:
1. 求人検索エンジン(インディードなど)が大きな存在感を示す
2. AIが直接機能して企業に人を送り込む、または個人に仕事を提案する流れが拡大
3. アルバイト、派遣、フリーランスなどの領域でもマッチング手段が多様化
特に注目すべきは、既存のサービスとその対象者の区分けが溶け出している点だ。例えば、タイミーのような仕事マッチングプラットフォームは、正社員として働きながら隙間時間に利用する人も増えており、従来の分類が曖昧になっている。

Q. AIは人材ビジネスにどのような影響を与えていますか?
人材業界におけるAIの影響は極めて大きい。2000年頃からインターネットの普及が始まり、2010年頃からデータベース化とマッチングのテクノロジー化が進展してきた。AIはこの2年ほどで急速に台頭してきたが、その潜在能力はまだ10%も発揮されていない状況だ。
特筆すべきは、人材業界がAIのマネタイズに成功した最先端分野であるという点だ。他の業界ではAIの活用が実際の収益化に至っていないケースが多い中、HRテックの領域では既に経済効果を生み出している。
リクルートエージェントは過去10年で売上が3倍以上に成長したが、その背景にはマッチングテクノロジーの進化がある。AIがマッチングに加わることで、スピード、量、質が飛躍的に向上し、見たことのない世界が実現しつつある。
Q. AIによるマッチングはどのようにして優位性を確立していくのですか?
AIによるマッチングが強力な理由は、「高循環」の仕組みにある。職の増加→閲覧データの蓄積→求職者の増加→実際のマッチングの増加→より良いマッチングのためのデータ蓄積、というサイクルが自己学習しながら回り続ける。
この仕組みにより、情報をたくさん持っている企業がより強くなり、結果的に市場は独占的になりやすい傾向がある。ただし完全な一極集中ではなく、カテゴリーごとに特徴を持ったサービスは残っていく。総合トップとカテゴリーごとの第一位者が市場を支配する構造になるだろう。
一度このサイクルに入ると巻き返しは難しく、先行者利益が非常に大きいビジネスモデルとなる。
Q. リクルートが掲げる「シンプリファイ・ハイアリング」とは何ですか?
インディードリクルート(2024年4月に社名変更)が掲げる最大のビジョンが「シンプリファイ・ハイアリング」だ。これは仕事探しの面倒さや採用プロセスの手間を減らし、シンプルにすることを目指している。
具体的には企業向けの「タレントスカウト」と求職者向けの「キャリアスカウト」という2つのダッシュボードを中心に、余分な機能を削ぎ落とし、AIアシスタントが最適な結果を導くモデルを構築している。
例えば求職者が希望の仕事や場所について相談するだけで、AIがその人の経歴やニーズを分析し、最適なマッチングを提案する。裏側には膨大な選択肢があるが、すべてを表示すると混乱するため、AIアシスタントが最適なタイミングで最適な案件を提示する。
このモデルは既に部分的に実装されており、今後1〜2年で本格的に普及すると予想される。
Q. 人材紹介のAI化とはどのような状態ですか?
人材紹介のAI化は「パワードスーツを着た人間」のようなイメージだ。これまで人力だけで1日に3人程度のマッチングをしていたエージェントが、AIの支援により1日30〜40人のマッチングができるようになる。
AIは候補者の選定や提案だけでなく、人間が何を語るべきかという「台本」も用意する。人間はループの一部として組み込まれ、AIと人間が一体化した状態で機能する。これが人材紹介のAI化成功の秘密だ。
この状況では人間の役割は、AIが提示する選択肢から最終的な判断を下すこと、倫理的な監視をすること、そして何より「納得感」を提供することになる。求職者は最終的に人間からの承認や背中を押してもらうことで安心感を得たいという心理がある。

Q. 今後の人材ビジネスにはどのような可能性がありますか?
従来の人材サービスは顕在的に人を募集している企業に候補者を提供するものだったが、労働人口が減少する中ではそれだけでは不十分になる。
今後は「募集していなくても、こういう人がいればこの会社は伸びる」と判断して人材を提案するサービスが増えるだろう。AIを活用することでこうした提案が容易になり、新たな雇用を創出する可能性がある。
また、就労人口をどれだけ増やせるかという観点から、人材サービスの新たな役割が生まれる。それによって人材ビジネス自体が社会から尊敬される産業へと進化していく可能性もある。2040年に向けて、人材ビジネスはまだまだ成長領域であり続けるだろう。