PIVOT TALK FOOTBALL
欧州サッカー総括。リヴァプール黄金時代とヤマルの覚醒
(128)
6,304回視聴
2025年6月1日

2024-25シーズンが幕を下ろした欧州サッカー。新たなトレンドは何か?注目選手・監督は誰か?そして、日本人選手をどう評価するか?PIVOT FOOTBALLレギュラーメンバーに語ってもらった。 <ゲスト> 木崎伸也|スポーツライター 1975年、東京都生まれ。2002年夏にオランダへ移住。翌20...
2025年欧州サッカー総括、注目のポイントを専門家が分析
欧州の主要サッカーリーグが2025年シーズンを終えた。プレミアリーグを中心に、今季の特徴や注目選手、監督について専門家が総括する。

Q. 今季のプレミアリーグを一言で表すと?
「ファストブレイク」と「対応力の差」、そして「プレミアNBA化」というキーワードが挙がった。特にプレミアリーグでは、カウンターアタックの攻撃回数やシュートまで持っていく回数がヨーロッパの中で最も多かった。以前はブンデスリーガがカウンターのリーグと言われていたが、それを超えるレベルになっている。

また、マンツーマンプレスが流行しており、エデルソンのアシスト数が4、ハーランドと同じ数字というのも象徴的だ。長いボールが増えている証拠で、相手のディフェンスラインを捕まえてボールを奪い、そのまま得点を狙うパターンが多く見られた。
Q. なぜカウンター戦術が増えたのか?
各チームが「ボールは持ちたい」という思いを持っている。例えばクリスタルパレスはゴールキックから後ろから繋いで、相手のプレスを引き付けた後に裏を狙う「疑似カウンター」と呼ばれるプレーを多用した。一度は繋ぐスタイルを目指していたが、途中でより縦に速いサッカーに変更し、トレンドに適応した。
相手チームからボールを奪った瞬間に攻撃するファストブレイクの増加は、マンツーマンプレスの流行と関係している。最下位のサウスアンプトンでさえ高い位置からマンツーマンで相手を捕まえにいくスタイルを採用しており、この傾向はリーグ全体に広がっている。
Q. プレミアリーグの強さは他のリーグと比べてどうなのか?
プレミアリーグは横(他のリーグとの比較)でも縦(イングランド国内の下部リーグとの比較)でも圧倒的に抜けている。プレミアとチャンピオンシップの差は非常に大きく、昇格組の3チームが2年連続で1年で降格する結果となった。
例えばリーズは選手の市場価値だけを見ると、セリエAやブンデスリガ、リーグアンなら7位に入るレベルだが、プレミアでは21位になる。また、試合中継に使用するカメラの質も全く違い、映像の鮮明さが視聴者体験に大きな差をもたらしている。
強度で言えば、プレミアが「10」だとすると他のリーグは「3」程度の差があるとの見方もある。ただし、チャンピオンズリーグなどの欧州大会では戦術的な駆け引きがあり、必ずしも予算の差がそのまま結果に反映されるわけではない。
Q. リバプールの成功の秘訣は何か?
リバプールはエッゾ・スヴィベルディと監督交代があったにもかかわらず、予想以上の結果を残した。彼らの成功の秘訣として「対応力」が挙げられる。主力選手の怪我が少なく、戦術的にもうまく対応できた。

これはトレーニング施設の充実や医療スタッフの質の高さも関係している。アクサのトレーニングセンターは非常に優れており、選手一人一人をパーソナルトレーナーが細かくケアしている。また、選手が筋肉系のトラブルを起こしにくいプレースタイルを採用していることも大きい。
さらに、データ分析も徹底しており、AIを活用して戦術面でのアドバイスも行っている。例えばコーナーキックの時の動き方をAIが分析し、コーチにアドバイスする仕組みも取り入れている。
Q. バルセロナのハイラインはリスクが高すぎるのでは?
バルセロナのハンジ・フリック監督は極端なハイラインでの守備を採用し、それが「フリック劇場」と呼ばれるスリリングな試合を生み出した。しかし、これは「ギャンブル的なラインコントロール」との評価もある。
ハイラインの問題点は、相手チームがその戦術に慣れてくると対応策を見つけられることだ。バルセロナのような有名クラブは特に研究されるため、最終的には修正が必要になる。実際、ラスパルマスに敗れるなど前半戦でつまずく場面もあった。
一方で、フリック監督の選手起用は高く評価されている。特にラフィニャやレヴァンドフスキといった選手の特性を最大限に活かす配置を行い、ヤマル・ラミン選手の台頭も大きな要因となった。守備面の課題を攻撃力でカバーする形だ。
Q. ドルトムントの小薔薇監督の復活劇について
ドルトムントは11位だった時点で小薔薇監督が就任し、最終的に4位でチャンピオンズリーグの出場権を獲得した。彼が変えたのは「走れるチーム」にしたことだ。
具体的には、選手の走行距離が小薔薇就任前と比べて1試合あたり4km増加した。また、守備のタスクをしっかりこなせる選手を優先的に起用し、例えばイングランド代表のギッテンスよりもバイヤを選ぶなど、明確な基準を示した。
さらに、試合に出られない選手のコンディションを維持するための特別なトレーニングを導入し、いつでも戦力として起用できる態勢を整えた。こうした基本的なことを徹底したことで、チームが大きく変わった。
Q. リバプールにビルツが加入する可能性についてどう見るか?
ビルツは「魔法使い」と呼ばれるほど技術が高く、特にスペースを使うのが上手い選手だ。リバプールでの起用法としては、センターフォワードか「トップ下」の可能性が高いと見られている。
彼の特徴は、相手の背中に隠れておいて、味方がパスを出せる瞬間に現れるというプレースタイル。これにより相手ディフェンダーからマークを外し、効果的に攻撃に参加できる。また、引き付けた後の裏へのパスも非常に優れている。

リバプールの新監督スヴィベルディが直接ビルツに接触し、どのような起用法を考えているかを伝えたことで、ビルツの心が動いたという。フリンポンと共にリバプールに加入する可能性が高まっており、来季のチーム構想にも大きく影響しそうだ。
Q. 三苫選手や久保選手など日本人選手の活躍をどう評価する?
三苫選手のパフォーマンスは過去最高と評価できる。守備への貢献が異常に高く、また中に入ってのプレーも増えてマリーのようなストライカーとしての役割も果たすようになった。長くトップレベルでプレーするためには、「クリスティアーノ・ロナウド化」していくことも一つの選択肢だろう。
久保選手もレアル・ソシエダでできることを高水準でこなしていた。攻撃のポジションにも関わらずデュエル数、勝利数がリーグ6位と守備面でのハードワークも評価されている。ゴールに絡む回数も増え、さらなる飛躍が期待される。