9 questions
松本大氏に聞く「株価を上げる経営」。還元性向100%、借金して投資せよ
(306)
1.5万回視聴
2025年5月29日

今後、日米の株価はどう推移するのか?どうすれば日本の株価はもっと上がるのか?経営をどう変えるべきなのか?マネックスグループ会長の松本大氏に聞いた。 <ゲスト> 松本大|マネックスグループ会長 東京大学法学部を卒業後、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券(現:シティグループ証券)に入社。その後ゴールドマ...
マネックスグループ会長・松本大に聞く「トランプ時代の投資戦略」と「日本株の未来」
日本経済の長期低迷を経験した世代が日本企業の経営を任され始め、資本コストへの意識も高まってきた今、日本株はどこまで上昇するのか。マネックスグループ会長の松本大氏に、トランプ大統領の政策が金融市場に与える影響や日経平均の見通しについて聞いた。

Q. トランプショックで株価が乱高下しましたが、これからの株式市場はどうなりますか?
トランプ大統領が言っていることは、実は選挙公約で述べていたことばかりで、特に驚くようなことではない。この数週間で最も重要な観察結果は「トランプもマーケットには勝てない」ということだ。
関税政策を強く主張していたが、アメリカの国債価格が大きく下落し金利が上昇した際、彼は方針を変えて協議を開始すると発言した。これは、トランプがどれだけ強気であっても、市場の動きには敏感に反応せざるを得ないことを示している。
特に債券市場は重要で、アメリカは巨額の借金を抱える国家であり、借金の借り換えが困難になると国としての存続が危うくなる。大統領は行政命令で多くのことを決められるが、国家財政に関わることは議会の権限であり、そこで抑制が働く。
株式市場についても過度に心配する必要はない。すでにアメリカの大手テック企業の配当利回りは国債の金利より高い状況になっている。これは投資家がアメリカ政府よりも優良企業の方が信頼できると判断している証拠だ。

Q. 米国株はバブル崩壊の可能性があるという見方もありますが?
金利上昇による足かせはあるものの、AIの進歩は止まるところを知らない。関税問題が発生すれば、新たな生産の仕組みも作られていくだろう。
そもそもトランプは「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」をスローガンにしており、アメリカの株価が下がり続けることを容認するとは考えにくい。心配事は以前より増えたかもしれないが、アメリカを一つの国として強くしようとする政策の中での調整であり、長期的に悪化する方向には向かわないだろう。
現代はSNSなど情報流通が活発で、一部の人だけで情報が共有される時代ではなくなった。全世界で多くの人が情報を持ち議論する時代になり、問題があれば早く牽制がかかるようになっている。今回もマーケットの反応を見てトランプが方針を変えたように、自由経済主義国家では牽制が早く働く。
市場のボラティリティが高まった主な原因はSNSではなく、規制の影響が大きい。リーマンショック以降、銀行にリスクを取らせない規制が強化され、かつては巨大な資本を持つ金融機関がマーケットメイクしていたが、現在は資本規制によってレバレッジファンドが代わりにその役割を担っている。しかしリスク許容度が低いため、市場が動き始めると一気に売りが加速する構造になっている。
Q. 日本株への資金流入は続きますか?
日本への海外からの資金流入は依然として続いているが、状況は少し変化している。以前はヨーロッパ経済が低迷していたため、「アメリカ以外は日本しかない」という状況だった。しかし、トランプの厳しい姿勢に対応して、ヨーロッパ各国が財政出動や防衛費増強に舵を切ったことで経済が回復してきている。
そのため、以前は「10点満点」だった海外投資家の日本株への関心は、現在「7点」程度に下がった。しかし数年前は「2点」だったことを考えると、依然として高い水準を維持している。
Q. 日経平均株価は5万円まで上昇しますか?
日本株は株価が低いだけで、技術力や社会の安定性、インフラの整備など、実力は十分にある。株価が低い理由は、日本企業が不良債権問題の記憶から多額の現金を内部留保し、株主還元や成長投資に十分活用していないからだ。
最近は東証の改革などで還元率が上がり、資本コストを意識した経営への理解も深まってきているが、まだアメリカ企業との差は大きい。アメリカの優良企業は「利益は全額株主に還元し、成長投資は借入でまかなう」という資本効率を重視した経営をしている。この方法ならROE(株主資本利益率)が上がり、株価も上昇する。

日本の経営者の資本コストに対する理解は「10点満点の6点」程度だが、数年前は「2点」だったことを考えると大きく改善している。この変化の速度は予想より早く、特にコロナ禍が転機となった。
日経平均が5万円に到達するのは、「3年もかからないだろう」と見ている。2年で到達する可能性も高く、1年で到達しても驚くべきことではない。重要なのは「行くかどうか」ではなく「いつ行くか」という点だ。
Q. なぜ日本企業の経営者の意識が急速に変わったのですか?
最大の要因は世代交代だ。1989年以前に社会人になった世代は、日本経済の奇跡的な成長を経験しており、強い成功体験から「自分たちのやり方が正しい」と考え、外部の意見に耳を傾けなかった。
一方、私(松本氏)のような1987年以降に社会人になった世代は、日本経済の停滞を経験し、「海外のベストプラクティスを取り入れればいい」と考えている。この世代が企業経営の中心になったことで、変化が起きている。

特にコロナ禍が変化を加速させた。それまでは引退した先輩経営者が顧問や相談役として会社に残り、現役経営者に影響を与えていたが、コロナ禍の2年間で彼らは出社せず、その後も戻ってこなかった。これにより新しい世代の経営者たちが初めて自分自身の判断で経営できるようになり、海外の投資家や社外取締役の意見に耳を傾けるようになった。
さらに、日本の大企業の経営者はサラリーマン経営者が多く、創業者のように大量の株式を保有していないため、むしろ思い切った改革がしやすい面もある。株を多く持つ創業者経営者なら、改革で株価が下がるリスクを恐れて躊躇することもあるが、サラリーマン経営者はそうした懸念が少ないため、大胆な変革が可能だ。
Q. 日本経済の長期的な見通しはどうですか?
人材も年功序列、資金も内部留保、企業も同じ分野に多数存在するという非効率な状態で、日本はGDP世界第3位(一時期は第2位)という驚異的なパフォーマンスを上げてきた。もしヒト・モノ・カネという生産要素を効率的に使えば、さらに大きな成長が期待できる。
今後20〜25年は日本経済にとって良い時代になるだろう。その後は、今の若い世代が成功体験を持つようになり、また変化を恐れる時代が来るかもしれないが、それはまだ先の話だ。