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財務分析:BYD vs.テスラ。トヨタの最大のライバルは?
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2025年5月27日

EVのトップランナーであるBYDとテスラ。財務分析から見えてくる両社の違いとは何か?なぜBYDは躍進し、テスラは低迷しているのか?財務戦略アドバイザーの田中慎一氏に分析してもらった。 <ゲスト> 田中慎一|財務戦略アドバイザー・インテグリティ代表 1972年東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後...
BYDとテスラの財務分析から見えてくる電気自動車業界の勢力図と今後
世界のEV市場で急成長を遂げている中国のBYDとアメリカのテスラ。この2社の財務分析から、両社の戦略の違いや今後の展望が見えてくる。財務戦略アドバイザー・インテグリティ代表の田中慎一氏に、数字から読み解くBYDとテスラの実像について伺った。

Q. BYDとテスラの業績推移はどのようになっているのか?
BYDの売上高は近年急成長しており、特に過去3年間の伸びが顕著だ。直近5年の年間成長率は43%と強烈な数字を示している。これまでコツコツと積み上げてきた技術や事業が一気にブレイクした印象だ。
注目すべきは、BYDが上場以来一度も赤字になったことがないという点だ。特に直近3期は急激な増益を達成し、営業利益は約1兆円に達している。

一方テスラも上場来の年間成長率は70%を超え、圧倒的な成長を遂げてきた。ただし、最近は伸び悩みが見られる。2024年の売上高はBYDと同水準の約15兆円、営業利益も同様に約1兆円となっている。
興味深いことに、BYDとテスラは売上高、営業利益、ネットキャッシュなど多くの財務指標が似通っている。ただし、テスラは上場後長期間赤字が続いた後に黒字化したのに対し、BYDは常に堅実な経営を行ってきた違いがある。
Q. BYDとテスラでは営業利益率に違いはあるのか?
BYDの直近の営業利益率は6.5%程度で、日本の上場企業の平均並みだ。自動車メーカーとしても特に高くはない。これは中国メーカーに共通する特徴で、基本的に利益率は薄い。
一方テスラは、営業利益率が最高で16.8%に達したこともあり、自動車メーカーとしては異常な高さだった。ただし近年は低下傾向にあり、2025年第1四半期には大幅に落ち込んでいる。実際、排出権販売収入がなければ赤字になるほどだ。
Q. BYDの特徴的な戦略は何か?
BYDは徹底した自前主義を貫いている。特に注目すべきは垂直統合の徹底ぶりだ。
元々バッテリーメーカーとして創業したBYDは、自社でバッテリーを製造するだけでなく、バッテリーの原材料確保のために鉱山にまで投資している。これは自動車メーカーとしては極めて異例の取り組みだ。

また、BYDは幅広い価格帯の車種をラインナップし、特に庶民でも手が届く価格帯のEVを提供することで市場を拡大した。これはテスラが高級車から始めたのとは対照的なアプローチだ。
さらに、純粋なバッテリーEVだけでなくプラグインハイブリッド車も積極的に展開しており、顧客のニーズに応じて選択肢を提供している。2022年には内燃機関エンジン車の生産を完全に停止し、EV事業に全面的にシフトした。
Q. テスラとBYDでは車両のバッテリー技術に違いがあるのか?
両社のバッテリー技術には明確な違いがある。
BYDは「ブレードバッテリー」と呼ばれる技術を採用し、リチウム鉄リン酸塩(LFP)を使用している。この素材は安価で安全性が高く、熱暴走しにくいという利点がある。ただしエネルギー密度が低く、走行距離を確保するには多くのバッテリーを搭載する必要がある。BYDの技術力は、この欠点を克服して軽量かつ長距離走行を可能にした点にある。
一方テスラは「4680バッテリー」と呼ばれる円筒形のバッテリーを採用し、ニッケル、コバルト、マンガンなどの素材を使用している。エネルギー密度が高く走行距離を伸ばせる利点があるが、熱管理が難しく、コストも高い。また、これらの原材料には人権問題や環境汚染といった問題も指摘されている。
Q. 現在のEV販売台数の状況と今後の展望は?
2024年のEV販売台数では、BYDが約176.5万台、テスラが約179万台とほぼ拮抗している。ただし、BYDはプラグインハイブリッド車を含めると425万台に達し、EV全体では世界最大のメーカーとなっている。
2025年第1四半期にはBYDがテスラを上回り、逆転を果たした。今後もこの傾向は続く可能性が高い。特に一般消費者市場では、テスラが再逆転するのは難しいだろう。
テスラのCEOであるイーロン・マスクの政治的発言がブランドイメージに影響し、一部の消費者がテスラ離れを起こしているという背景もある。テスラは今後、ロボットタクシーやサイバートラックなど別の領域に勝負の場を移していく可能性がある。
Q. 株式市場での評価には違いがあるのか?
両社の株式市場での評価には大きな差がある。BYDの株価収益率(PER)は約24倍で、世界最大のEVメーカーとしては物足りない水準だ。
一方テスラのPERは約184倍と極めて高く、現在の業績だけでは説明できない水準にある。これはテスラの将来性やイーロン・マスクのビジョンに対する期待、また多くのファンによる支持が反映されている。
この違いには中国企業特有の事情も関係している。中国企業はガバナンス面での懸念から、市場での評価が抑えられる傾向にある。また、中国の上場企業は政府系機関が大株主であることが多く、株式の流動性も低い。BYDは民間企業ではあるものの、創業者である王氏が大量の株式を保有し、オーナー企業の性格が強い。
Q. トヨタにとって最大のライバルはどちらか?
トヨタにとっての最大のライバルはBYDと言える。BYDはトヨタのようにフルラインナップの自動車メーカーとして、エコノミークラスからラグジュアリークラスまで幅広い車種を展開している。一方テスラはまだ限られたモデルのみの展開だ。

BYDはEVにおいて「トヨタ版」のような位置づけで、総合自動車メーカーとしての戦略を取っている。今後グローバル市場でのBYDの拡大が続けば、トヨタとの競争は激化するだろう。