PIVOT TALK BUSINESS
メンタル不調なりやすい人・なりにくい人
(367)
2.4万回視聴
2025年5月22日

100人に3人がなってもおかしくないというメンタル不調 自分は大丈夫か?どう対処すべきか?仲間がメンタル不調になった時はどう接したらよいのか? 産業医を15年間以上つとめる武神健之氏に、基本から話を聞いた。 <ゲスト> 武神健之|產業医 神戸大学医学部卒業。東京大学大学院医学部在籍中に有限会社ジ...
メンタル不調は誰にでも起こりうる - 産業医が教える「休職」という選択肢
職場でのストレスによるメンタル不調は珍しいものではない。産業医の武神健之氏によれば、30人に1人が人生のうちに1回はメンタル不調を経験するという。この記事では、メンタル不調の基礎知識から自分や同僚を守るための「休職」という選択肢まで、Q&A形式でわかりやすく解説する。

Q. メンタル不調はどのくらいの頻度で起こるものなのでしょうか?
メンタル不調は30人に1人が人生のうち1回は経験するという統計がある。これは高尿酸血症や痛風を持つ人と同じくらいの割合だ。糖尿病や高血圧は6人に1人、12人に1人と言われているので、それらよりは少ないが、決して珍しいものではない。
実感としては、100人の社員がいれば、1人がメンタル不調で休職中、1人がメンタル不調で通院しながら働いていて会社も知っている、1人がメンタル不調で通院しながら働いているが会社には隠している、という状況が一般的だ。100人中3人がメンタル不調になっていても驚くことではない。
Q. メンタル不調になりやすい人の特徴はありますか?
責任感が強すぎる人、真面目すぎる人、いわゆる「クソ真面目」な人たちはメンタル不調になる要素を持っている。ストレスの原因についてのアンケートでは、必ずトップ3に入るのが「職場の人間関係」だ。産業医の肌感覚では、職場の人間関係の問題の半分以上は上司との関係だという。
また、身近な人から「最近大丈夫?」と声をかけられることが増えたら、自分の状態を見直す必要がある。特に、親しい人2人くらいから心配されたら、「自分はやばいのかな」と思って一歩立ち止まることが大切だ。
Q. メンタル不調のサインや症状にはどのようなものがありますか?
メンタル不調になってくると、最初に現れる頻度が高いのが睡眠障害だ。睡眠障害には、寝付けない「入眠障害」、夜中に途中で起きてしまう「中途覚醒」、アラームより早くに目が覚めてしまう「早朝覚醒」、熟睡感がないという4つのパターンがある。
感覚的には、4〜5時間も眠れない状態が2週間続くと、メンタル不調になる可能性が高い。ただし、土日などでである程度睡眠を挽回できる人も多いが、それでも十分に症状として注意すべきだ。
その他、何の理由もなく涙が止まらなくなる、仕事中に感情をコントロールできなくなる、頭痛やめまいが続くなどの症状も要注意だ。
Q. 自分のメンタル状態をチェックする簡単な方法はありますか?
簡単なセルフチェックとして、以下の質問に答えてみるとよい:
1. あなたのストレス状態(いっぱいいっぱいな状態)は今あるとしたら、いつから続いていて、いつまで続くと見込まれますか?
- 特にそういう状態にない:0点
- ストレスはあるが、いつからいつまでか分かっている:1点
- いつからかもいつまで続くかも分からない:2点
2. そのストレス状況について、誰かに話せる人がいますか?実際に話しましたか?
- ストレス状況にない:0点
- ストレス状況にはあるが、誰かに相談できている:1点
- 誰にも話せていない、または話せる人がいても話していない:2点
3. 心や体で何らかのおかしな症状や、普段の元気な自分であればないような症状がありますか?
- ない:0点
- ある:1点
4. この1ヶ月間の間に楽しく過ごしたこと、思いっきり笑ったこと、嬉しかったことはありましたか?
- すぐに思い出せる:マイナス1点
- 思い出せない:0点
4点以上の人は注意が必要だ。自分がメンタル的に不安定な状況であることを理解し、専門家に相談するか、産業医との面談を検討するとよい。
Q. メンタル不調を感じたとき、どのような対応をすべきですか?
まずは職場の産業医に面談を申し込むことをおすすめする。産業医がいない場合は、従業員支援プログラム(EAP)などのカウンセリングサービスに相談するとよい。そこで話を30分から1時間聞いてもらい、必要に応じて次のステップを提案してもらえる。

メンタル不調への対応として、一般的には以下のステップがある:
1. 通院を開始する
2. 薬物療法を始める
3. カウンセリングを開始する
4. 上司に調子が悪いことを伝え、業務時間短縮や仕事量削減などの配慮をしてもらう
5. 薬を変えてみる
これら5つの対策をすべて試しても調子が悪い状態が続くようであれば、休職を検討すべきだ。特に適応障害のケースでは、会社がストレス源になっていることが多いため、休職することが治療として効果的な場合がある。
Q. 休職を勧められても、なかなか決断できない場合はどうすればよいですか?
休職を勧められても、「みんなに迷惑をかけたくない」「私はまだできる」「どうしていいかわからない」といった理由で休職を拒む人は少なくない。特に真面目で責任感の強い人に多い傾向がある。

しかし、早めに休職した方が結果的に復帰までの期間が短くなることが多い。例えば、今すぐ休職せずに1〜2ヶ月無理をして働き続けると、その後の休職期間が倍以上に伸びるケースもある。早期治療の開始が非常に重要だ。
また、「周囲に迷惑がかかる」という心配についても、組織は通常2週間程度で適応し、業務の調整ができるようになる。それができない場合は、個人の問題ではなく組織の事業継続計画に問題があると言える。誰でも交通事故などで突然休むことがあり得るため、そうした事態に対応できる組織づくりが必要だ。
Q. メンタル不調で休職する場合、期間はどれくらいが一般的ですか?
適応障害の場合、平均的な休職期間は5〜6ヶ月程度だ。多くの場合、最初の1ヶ月はゆっくり休養し、次の1ヶ月で計画を立て、その後の数ヶ月で復職準備をするというスケジュールを立てることが多い。

ただし、休職中は「食べて寝る」ことを最優先し、計画を立てることや復職の準備を急ぐことは避けるべきだ。特に休職初期は自分を責めず、ゆっくりと過ごすことが大切だ。
Q. 周囲の人がメンタル不調になった場合、どのようにサポートすればよいですか?
周囲の人がメンタル不調になった場合、最も良いサポートは「そっとしておく」「ほっておく」ことだ。ただし、「何かあったらいつでも連絡してね」という心構えを持ち、戻ってきた時に温かく迎えることが大切だ。
メンタル不調になる人が弱いとは全く思わない。たまたまなってしまっただけだ。糖尿病や高血圧、がんなどの病気と同じように、一定の割合で誰にでも起こりうるものであり、特別に何かをしたからなるわけではない。そのため、自分自身を責める必要はないし、キャリアが終わるわけでもない。
大切なのは、メンタル不調に対する偏見をなくし、病気の一つとして理解することだ。自分自身が偏見を持っていることに気づき、それを手放すことが回復への第一歩となる。