PIVOT TALK BUSINESS
静かに分断する組織 #2
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2025年5月18日

企業エンゲージメントを本当に高めるために何をすべきか?高橋克徳氏は対話を通じて帰属意識を高めることの重要さを語る。今こそ部下と話したい7つのテーマを徹底解説。 <ゲスト> 高橋克徳|ジェイフィール代表・コンサルタント 野村総合研究所などで、組織・人材開発に関するコンサルティングに一貫して従事。 ...
「責任って持たされるものじゃない」 職場の分断を解消する3つの革新とは?
職場の人間関係が希薄化し、コミュニケーションが減少している現代。「静かに分断する職場」が社会問題となっています。この問題に対して、ジェイフィール代表・コンサルタントの高橋克徳氏が提案するのは、対話を通じた職場環境の改善です。

Q: 「責任」とは本来どのようなものですか?
責任とは、持たなければならないものや追わされるものではありません。本当に誰かのために何かをしたい、良いものを作りたいと思った時に自然に湧いてくるものです。しかし現在の職場環境では、責任が負担として捉えられ、特に管理職になりたがらない若手が増えています。
これは組織の構造的な問題であり、管理職が一人で責任を背負い込む状況を変える必要があります。本来、仕事に思いを持ち、仲間と一緒に頑張る環境があれば、責任は自然に生まれてくるものなのです。
Q: 職場の「静かな分断」はなぜ起こるのでしょうか?
現代の職場では価値観の多様化により、これまでの「当たり前」が通用しなくなっています。様々な考え方が生まれる中で、お互いの本音をぶつけ合うことが逆に混乱を招いたり、相手を追い込んだりする危険性があります。
特に若い世代と上の世代では、仕事に対する考え方の違いが顕著です。例えば「仕事にやりがいを求めるか」という問いに対して、若い世代は「やりがいより働きやすさが大事」と答えることが多いのに対し、上の世代は自分の経験に基づいた価値観を押し付けがちです。
このような世代間の価値観の違いを理解せず、一方的な考えを押し付けることが分断を深めています。
Q: 職場の分断を解消するために必要な「3つの革新」とは?
高橋氏は職場の分断を解消するために「3つの革新」を提案しています:

1. 本音を言い合える関係革新
まず土台として、お互いを知り、本音で対話できる関係性を構築することが重要です。これには「取り扱い説明書」の作成が効果的です。自分自身の特徴、得意なこと、苦手なこと、機嫌が良くなるポイント、不機嫌になるポイントなどを書き出し、少人数でシェアします。
このような取り組みを通じて「苦手なことは苦手と言っていい」「助けてほしいと言っていい」という安心感が生まれ、特に新しく入ってきた人が発言しやすい環境を作ることができます。
2. みんなで変わる自己革新
自分自身の視野を広げるために、外への旅に出ることを推奨しています。これは物理的な旅行だけでなく、クライアント訪問や自然体験など様々な形があります。
高橋氏自身は、カンボジアでの交流や森の整備活動などを通じて、新たな気づきを得ています。このような体験を通じて「何かおかしい、何か変えなければ」という思いが自然と湧いてくることが、自己革新のきっかけになります。
多様な経験を通じて自分の中にあるものが繋がると、自然と行動が始まります。一人ではなく、みんなで体験を共有することで、お互いが応援し合える関係性も生まれます。
3. 一緒につくる組織革新
マネジメントの在り方を問い直し、全員が主体的に組織を作るという意識を持つことが重要です。リーダーが指示して動かす時代ではなく、かといって全員がバラバラに動くのでもなく、お互いのやっていることを可視化し、重要なことは議論しながら進めていく組織へと変革する必要があります。
高橋氏は自社でも「社長を辞める」と宣言し、みんなで対話しながら組織運営をする試みを行いました。これは時間がかかり大変なプロセスでしたが、諦めずに対話を重ねることで「この会社を一緒に作っている」という実感が生まれたと言います。
Q: 「取り扱い説明書」の作成はどのように行うのですか?
「取り扱い説明書」は、自分自身の特徴や働き方の傾向を共有するためのツールです。具体的には、20項目ほど「私は〜」という文から始まる自己紹介を書きます。出身地、経歴、好きなこと、苦手なことなどを含め、普段は聞きにくいような情報も含めて共有します。
特に新しいメンバーが入ってきた時に、お互いの「取り扱い説明書」を共有することで、相互理解が深まります。これにより「この人はこういう人だったのか」という気づきが生まれ、人に対する興味が改めて湧いてきます。
また、苦手なことや助けてほしいポイントを事前に共有しておくことで、誤解を減らし、適切なサポートが可能になります。この「取り扱い説明書」の共有が、本音の対話の土台となります。
Q: 管理職の在り方をどのように変えていくべきですか?
現在の管理職は負担が大きく、若手からは「なりたくない」と思われがちです。しかし部下からは「しっかりした管理職であってほしい」という期待もあり、この矛盾した状況を解決する必要があります。
管理職について対話を重ね、「管理職とはどうあるべきか」を組織全体で考えることが重要です。例えば女性管理職研修では、従来の「残業してでも業務を把握する」というスタイルではなく、「働く人たちの幸せを一緒に作る立場」「一人ひとりに寄り添い、サポートする役割」として再定義することで、なりたいと思える管理職像が見えてきます。
管理職が笑顔でいられ、部下もそれを見て「自分もなれる」と思えるような環境づくりが必要です。
Q: コミュニティシップとは何ですか?その重要性は?
コミュニティシップとは、「この場所が大事な場所だ」という感覚と、「この場所を参加して良くしたい、作っていきたい、育てていきたい」という気持ちです。職場に対する愛着や帰属意識と言い換えることもできます。
高橋氏は田舎暮らしの経験から、地域コミュニティの中で自然と生まれる繋がりや助け合いの精神が、職場でも必要だと考えています。お互いに声をかけ合い、困った時には手を差し伸べ、何かを変えようとする時には相談し合える場所。そのような環境が、職場でも実現できれば理想的です。

人口減少社会の中で、より良い社会を作るためには、知恵を集め、みんなが力を合わせることが必要です。その基盤となるのが、身近な人との繋がりを大切にし、「この場所を良くしたい」という思いが湧いてくるような場づくりなのです。コミュニティシップが生まれれば、自然とリーダーシップを取る人も現れてきます。
Q: 対話を通じた組織変革を実践する上での難しさは?
組織全体で対話を重ね、全員が参加して意思決定するプロセスは、時間がかかり大変です。高橋氏の会社では「社長を辞める」宣言をし、マネージャーの役割もなくして全員で対話しながら組織運営を試みましたが、対話だけでは決まらないこともあります。
しかし、諦めずに対話を続けることで、本当に大事なものが見えてきたり、全体の方向性が定まっていきます。このプロセスを経ることで、「みんなでこの会社を作っている」という実感が生まれ、組織へのエンゲージメント(繋がりの実感)が高まります。
これはすぐに結果が出るものではなく、継続的な取り組みが必要です。特に成長のスピードを重視する企業では難しい面もありますが、長期的な組織の健全性と創造性を考えれば、この対話のプロセスは不可欠です。
Q: 今日からできる職場の分断解消のためのアクションは?
職場の分断解消に向けて、まず「関係性から始める」ことが重要です。いきなり対話を始めるのではなく、なぜそれをするのかという目的を説明し、安心して対話できる環境を整えることから始めましょう。

具体的には:
1. 「取り扱い説明書」の作成と共有
2. チームでの定期的な対話の場の設定
3. 「仕事」「管理職」など、当たり前と思っていることを問い直す機会の創出
4. 組織外の経験を共有する場の設定
これらのアクションを通じて、徐々に本音で話せる関係性を構築し、職場の分断を解消していくことができます。大切なのは一人ひとりが「この場所を良くしたい」という思いを持ち、主体的に関わっていくことです。