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世界標準の経験者採用。会社全体がヘッドハンター
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2025年5月16日

米国で1980年代から起きた採用革命が日本でも広がりつつある。昭和型採用と世界標準の採用とはどこが違うのか?日本企業はどう世界標準を導入していけばいいのか?グロービス・キャピタル・パートナーズの小野壮彦氏に聞いた。 <ゲスト> 小野壮彦|グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター アクセン...
「採用コスト削減よりも重要なのは組織全体のヘッドハンター化」最先端企業が取り入れるTAモデル経営の真髄
多くの日本企業が人材不足や採用の難しさに直面する中、世界標準の採用モデルである「TAモデル経営」に注目が集まっています。従来の採用手法とは一線を画すこのアプローチは、単なる採用改革にとどまらず、企業全体の変革を促す可能性を秘めています。グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター 小野壮彦氏に、TAモデル経営の本質と導入のポイントについて聞きました。
TAモデル経営とは何か?なぜ今必要とされているのか?
TAモデル経営とは、タレント・アクイジション(人材獲得)を企業戦略の中核に据えた経営モデルです。従来の日本企業における採用活動とは異なり、より積極的に優秀な人材を探し出し、引きつけるアプローチを特徴としています。
このモデルが必要とされる背景には、日本企業が直面する人材確保の課題があります。多くの企業が「人材は大事」と言いながらも、実際には人材獲得に対して十分な投資や戦略的アプローチが取られていませんでした。
TAモデル経営は単なる採用部門の改革ではなく、企業全体の変革を促す取り組みです。サプライチェーンマネジメントがかつて物流改革にとどまらず企業全体の改革運動となったように、TAモデル経営も会社全体を変えていくための取り組みと考えるべきです。
TAモデル経営の5つの要素とは?

TAモデル経営は次の5つの要素から構成されています:
1. TAシステム: 従来の採用とは異なる、ダイレクトリクルーティングなどの新しい採用手法を構築するシステム
2. 探索システム: ダイレクト、エージェント、リファーラル(社員紹介)の3つの手法を連動させて候補者を探すシステム
3. 面接官育成システム: 多くの企業が不十分な面接官の育成を改善するシステム。AIが面接官へのフィードバックを提供するなど新しい技術も活用可能
4. エンゲージシステム: 候補者を引きつけ関係を構築するシステム。日本企業は特にこの分野が弱いとされている
5. ホリスティックシステム: 取締役会レベルでタレントを管理する全社的な最適化システム。人的資本経営と連動して、タレント資産の獲得状況や組織文化の浸透度をチェックする
これらのシステムは同時に導入することが重要です。システム化することで一度導入すれば継続的に機能し、安定的に再現性を持って運用できるようになります。
TAはどの部署に位置づけるのが適切か?
TAを組織のどこに位置づけるかは、多くの企業が悩む点です。最も自然なのは人事部内に置くことですが、2つの課題があります:
1. 文化的な不一致: 人事部は法令遵守や保守的な側面が強い一方、TAはチャレンジ精神や挑戦が求められる活動で文化的に合わないことがある
2. 報酬体系の不一致: TA人材は市場価値が高く、特に採用エージェントから転身する人材は高い報酬を得ていることが多い。人事部の一般的な報酬体系では獲得が難しい
理想的には社長直轄のプロジェクトとすることで、各事業部との調整がしやすくなります。グローバル企業では初期段階で社長直下に置き、その後TA専門の部署として独立させる傾向があります。日本企業でもウーブン・シティ(トヨタ自動車関連会社)などの新規プロジェクトでは先進的なTAモデルが採用されています。
TAモデル経営を導入するメリットは?

TAモデル経営に移行することで、企業には次のようなメリットがあります:
1. 中期的な採用コスト削減: 初期段階ではコストが上がることもありますが、中期的には採用エージェントへの手数料(報酬の10〜40%)が削減できます。イギリスの例では候補者1人あたりのコストを報酬の約5%まで削減できたケースもあります。
2. パッシブ候補者へのリーチ: 現在転職活動をしていない優秀な人材(パッシブ候補者)にもアプローチできるようになります。採用エージェント経由では限界がある部分です。
3. タレント・プールの自社資産化: 候補者情報を自社の資産として蓄積できます。
4. 中期的視点での前倒し採用: 3年程度の中期計画に基づき、先を見越した人材採用が可能になります。
5. 組織的ハンター・スピリッツの獲得: 最も重要な副次的効果として、会社全体がヘッドハンターのマインドセットを持つようになります。サイバーエージェントやレイヤーXなど成功している企業では全社的に優秀な人材を探す文化が根付いています。
優秀な人材を獲得するための具体的なプロセスは?
世界標準の経験者採用では、候補者を引きつけるための5つの要素が重要です

オファーまでのプロセス:
1. フロー感: トントン拍子にプロセスが進む感覚を演出する。これにより候補者は「縁がある」と感じる
2. チャレンジ感: 面接で「脳に汗をかく」ような高い強度の体験を提供する。優秀な候補者ほど自分のことを深く理解してもらえると感じると応募先への好感度が高まる
3. ドラマ感: オファー面談時に記憶に残る体験を提供する。例えば外でのカフェや散歩などの特別な設定
意思決定までのプロセス:
4. オートノミー感: オファー後に候補者に選択の主導権を与える。「早く返事が欲しい」と畳みかけるのではなく、候補者の自律性を尊重する
5. フラット感: 会社の肩書きを外し、個人として候補者に向き合う姿勢を見せる
これらのプロセスは恋愛と似た心理が働きます。候補者を引きつけ、深い関係を構築するために、フラットな関係性と個人的なつながりを重視することが成功の鍵となります。
TAモデル経営の導入にはどのくらいの時間がかかる?
TAモデル経営を本気で導入しようと思えば、1年程度の期間が必要です。ただし逆に言えば、1年の覚悟を持って取り組めば実現可能であるとも言えます。
日本では特に採用プロセスの変革が遅れていた分野として「面接官の育成」があります。面接官のスキルを高めることは今後AIの活用も期待できる領域で、面接のフィードバックをAIが提供することで効果的な改善が可能になるでしょう。
どのような企業がTAモデル経営を導入すべき?
TAモデル経営は全ての企業に必要というわけではありません。地方の限られた市場で事業を展開している企業などには必ずしも適さない場合もあります。
しかし、グローバル企業や急成長を目指す企業にとっては不可欠なアプローチです。既に外資系コンサルティングファームなどでは標準的な取り組みとなっています。

これから就職や転職を考える人にとっても、企業のTAモデルへの取り組み姿勢は、その企業の先進性や成長志向を見極める良い指標となります。TAモデル経営を導入している企業は、本気で人材を大切にする姿勢があると言えるでしょう。
日本企業が世界で競争力を高めるためには、TAモデル経営のような世界標準の採用アプローチを取り入れていくことが不可欠です。人材獲得競争に勝ち抜くためには、会社全体が変わる覚悟が必要なのです。