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昭和型採用にけりをつける、世界標準の採用
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2025年5月15日

米国で1980年代から起きた採用革命が日本でも広がりつつある。昭和型採用と世界標準の採用とはどこが違うのか?日本企業はどう世界標準を導入していけばいいのか?グロービス・キャピタル・パートナーズの小野壮彦氏に聞いた。 <ゲスト> 小野壮彦|グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター アクセン...
日本企業はまだ「昭和型採用」にとどまっている?企業の競争力を高める「採用革命」に必要な視点とは
多くの日本企業が人材確保に苦労する中、採用の方法論そのものが根本から変わる「採用革命」が世界では既に起きているという。日本企業はこの変化にどう対応すべきか。「人を選ぶ技術」に続き「世界標準の採用」を上梓した小野壮彦氏に、日本の採用の現状と課題、そして解決策を聞いた。

Q: 「世界標準の採用」はどのような内容の本ですか?
前著「人を選ぶ技術」を出版した後、全国でお話をする機会が増え、日本企業の採用に関する様々な課題が見えてきました。以前の本では「見立て」や「人の見方」について書きましたが、その前の段階、つまり「そもそもいい人が来てくれない」「採用の仕組みに問題がある」といった声をたくさん聞きました。
この本では、特に「経験者採用」と「エグゼクティブ採用」に焦点を当てています。日本企業は新卒採用は得意ですが、経験者採用の分野で多くの企業が苦労しています。日本では新卒採用担当者が9割で中途採用担当者は1割程度という企業も多く、予算配分もそれに準じていることが少なくありません。
Q: 日本企業の経験者採用にはどのような問題がありますか?
現在の日本企業における経験者採用の問題点を「あるある」としていくつか挙げられます。
まず「ご祈祷型採用」。求人表を作ったり、エージェントに依頼を出したりして、「いい人が来てくれますように」と祈るような姿勢です。これは無策で、新卒採用時代からの流れが続いているように思います。
次に「殿様採用」。面接で候補者1人に対して企業側が3人(部長、課長、平社員など)で対応し、「雇ってやる」という態度で臨む姿勢です。これは企業が強く個人が弱いという時代の名残りで、ある人事の方によると新卒人気ランキング上位企業では「3対1」の面接が標準だという話もあります。優秀な人ほどこういった状況ではリラックスできず、素の姿が出にくくなります。

3つ目は「やる気試し採用」。最初の面接から「志望動機は?」と聞くこと。転職のプロセスでは、徐々に意欲が高まっていくことを見るのは大切ですが、最初から志望動機を問うのは新卒採用の流れが強いからでしょう。特に優秀な経験者は忙しく、エージェントに勧められて会った段階で志望動機を問われると困ってしまいます。
4つ目は「横滑り採用」。経験者採用では即戦力を求めがちで、同じ業界・職種で同じような仕事をした人を探します。しかし、同じことを転職して繰り返したい人は本当に優秀でしょうか?好奇心やチャレンジ精神のある人は、2周目、3周目の仕事を望まないかもしれません。
最後に「出る杭不要採用」。「すごい人が欲しいけれど、うちの会社の人とうまくやってほしい」というジレンマです。結果的に「手頃な人」を採用する方向に流れてしまいがちです。これは「総論賛成、各論反対」の典型で、上層部は優秀な人材を採用したいと言いながら、現場では「そんな人が来たら困る」と考えています。
Q: 採用革命とは何ですか?
実は世界では既に「採用革命」が起きています。この革命はアメリカから始まりました。
1980年代以前のアメリカは今の日本と似ており、9割が社内での昇進で、社外採用は1割程度でした。80年代に景気が悪化し、「大転職時代」に突入します。90年代にはグローバル化が加速し、海外進出する企業が「スカウト型採用」を展開。例えばインドに進出するとき、現地タタの工場部門で働く工場長に直接電話をかけるなど、ヘッドハンティング・スカウト型の採用が一般化しました。
2000年代前半にはインターネットの普及で「Eリクルーティング」が始まり、募集要項がネット上に掲載されるようになります。2002~2003年頃にはLinkedInが登場し、2008年にLinkedInの企業向けプロダクト「コーポレートリクルーター」がローンチされました。これにより企業が組織的に直接リクルーティングできるようになり、「採用革命」の転換点となりました。

この革命の出発点はGoogleです。Googleは2004年頃からリクルーターを使うことをやめ、企業が直接候補者にアプローチする方法を組織的に実践し始めました。これがシリコンバレーのスタートアップに広がり、2010年頃には「Googleモデル」の採用が当たり前になりました。さらにグローバル企業にも波及し、最終的にはアメリカのローカル企業にも広がっています。
日本は今、この流れが「ぐちゃぐちゃ」に混ざっている状態です。LinkedInを使ってダイレクトアプローチする企業もあれば、昭和型採用を続ける企業もあります。日本も世界の流れに合わせてモードを変えるべき時期に来ています。
Q: 新しい採用パラダイムとは具体的にどのようなものですか?
古いパラダイムの「リクルーティング(採用)」は、「受動的」「フロー型」「ボトムアップ」が特徴です。求人を出して応募が来るのを待ち、来た応募をさばくという受け身のスタンスで、人事の現場から事業部、経営層へと情報が上がっていくボトムアップ型です。
新しいパラダイムは「タレントアクイジション(TA:人材調達)」と呼ばれ、「能動的」「アセット型」「トップダウン」が特徴です。ハンターのように能動的に人を探しに行き、将来欲しくなりそうな人材のリストを会社の財産として蓄積します。そして経営者がトップダウンで「この人材が必要だ」と指示し、組織全体でその獲得に取り組みます。

メルカリなど一部の日本企業も既にこのモデルを実践しています。この新パラダイムでは「パワーシフト」が起きており、企業は「殿様」ではなく、個人の方に力が移っています。特に「パワータレント」と呼ばれる、一人で会社の企業価値を変えるような存在感のある人材を企業が求めるようになっています。
ソフトウェアエンジニアの場合、最も優秀な人と普通のエンジニアでは生産性に8倍の差があるとも言われており、ビジネスパーソンにもそういった差があります。様々な業種で「パワータレント」が現れ、企業がそれを求めて競争する状況が世界では起きています。
Q: 日本企業はこの採用革命にどう対応すべきですか?
採用革命の根幹は「TA(タレントアクイジション)を中核に据えた経営」です。これは単なる人事の話ではなく、会社の経営全体の話です。経営者が「TAについて勉強させよう」と人事に丸投げするのではなく、経営のあり方自体を変える必要があります。
従来の採用は「社内アウトソーサー」のように、各部署の要請に応じてサービスを提供する機能でしたが、これではうまくいきません。採用にはタイムラグがあり、候補者が入社するまで1年程度かかることもあります。そのため、社長と話し、2年後のビジョンから逆算して、1年後の姿、各事業部の役割を明確にし、経営全体と連動する必要があります。
日本企業で悩まれているのが、TA組織をどこに位置付けるかという問題です。人事部内に置くのが自然ですが、TAはチャレンジ精神が求められるアクティビティで、文化的に人事と合わないこともあります。
新パラダイムの副次的効果として大きいのは「会社全体がヘッドハンターになる」ことです。これが広がれば日本企業の競争力は大きく向上するでしょう。
日本企業は「人材が大事だ」と言いながら、実際には大事にしてこなかったのではないでしょうか。まさに今、その価値観と行動を変える時が来ています。