PIVOT TALK BUSINESS
インデックス至上主義の終焉。実質資産、バリュー投資の時代に
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2025年5月15日

海外投資家が日本に投資し続ける条件は何か?トランプ関税は「日本買い」にいどんな影響を与えるのか?41年間ウォール街で活躍し、現在ホライゾン・キネティックス社でアジア戦略担当ディレクターを務める、ワイズマン廣田綾子氏に展望してもらった。 <ゲスト> ワイズマン廣田綾子|ホライゾン・キネティックス社 ...
トランプ政権2期目が投資界に与える衝撃と実質資産の重要性
第2次トランプ政権が誕生したことで、世界の投資環境は大きく変わりつつある。特に関税政策が世界経済と投資市場に与える影響は計り知れない。「何も恐れるものがない」トランプ大統領の政策が資産運用にどう影響するのか、またそのような時代にどのような投資戦略が有効なのか。国際投資のプロフェッショナルであるワイズマン廣田綾子氏に聞いた。

Q: トランプ大統領は自分のパフォーマンスをどう測るのでしょうか?
トランプ政権誕生前に地政学者のイアン・ブレイマー氏の講演会で質問する機会がありました。「トランプ氏は2期目の自分のパフォーマンスを何で測るのか」と尋ねたところ、「何もない」という答えが返ってきました。2回目の当選を果たした彼には、もはや恐れるものは何もない。株価やビットコインの上下も気にしないとのことで、これを聞いた時は本当にぞっとしました。
Q: トランプ関税政策は日本への投資環境にどのような影響を与えるのでしょうか?
私が日本株に興味を持った理由の一つは、米中間の冷戦状態です。これは2-3年前から始まっていて、中国への投資が難しくなるだろうと予測していました。アジアファンドを持つ多くの投資会社は、中国に投資できなくなると、アジア市場で投資先を探す必要があります。その時、大きな市場として残るのは日本とインドです。この状況が2022-2023年頃から影響していたと思います。
しかし、トランプが再登場して状況はまた変わりました。彼の関税政策により、日本にとって良い状況が作られると思っていましたが、この関税問題が解決するまでは様子見かもしれません。特に意外だったのは、同盟国も同様に厳しい対応をされていることです。カナダとアメリカの関係も悪化しています。

Q: トランプ大統領は支持率を気にしないのでしょうか?
彼は世論調査をあまり信じていないようです。しかし最も気にするのは、ウォール街でお金を提供してくれた支持者たちです。すでに多くの人が怒って電話しているようです。例えば、ホームデポの経営者やケン・グリフィン氏(大手ヘッジファンドStadelの創業者)は批判の手紙を出しています。こういった献金者からの直接的な批判には、さすがのトランプも耳を傾けるようで、先週少し方針を変えました。
また財務長官は緩和派なので、彼がバランスを取っている感じです。債券市場については気にしているでしょう。
Q: 今後の市場展望はどうなるでしょうか?
短期的には、輸入を控えている企業が多くあります。コロナ禍のように店舗に商品がなくなる状況は避けたいはずなので、中国に対する100%以上の関税は現実的ではないでしょう。ただし、来年の中間選挙までのタイミングが鍵となります。ある段階で方針を変えると思いますが、そこが駆け引きです。
最近のGDPはマイナス成長でリセッション入りの確率が高まっていますが、トランプ支持者(MAGA)の支持率はほとんど変わっていません。わずか1%程度の低下にとどまっています。彼らはエリート層がより大きな痛手を負っていると考えているのです。
Q: アメリカ社会の分断をどう見ていますか?
もはや対話ができない状況です。まるで二つの国があるかのようです。ただし、トランプ支持者の中にも金融業界で働く人々も多く含まれており、複雑な状況です。この分断の根本には、貧富の差が極端に広がり、ごく一部の人だけが恩恵を受ける社会になったことが問題です。日本はこのような状態にならないことを願います。
Q: インフレ時代の実質資産投資戦略とは?
今後はAIの台頭もあり、雇用状況が不安定になる可能性があります。そうなると中央銀行は通貨供給量を増やす「マネープリンティング」に走りやすくなります。このシナリオでは、購買力を守るために実質資産を持つことが必要です。
具体的には金(ゴールド)が挙げられますが、現物で保有すると保管コストがかかります。そこでETFという選択肢があります。さらに、カナダ、アメリカ、オーストラリアで展開されている「ロイヤルティカンパニー」も検討の価値があります。これは金を発掘する企業に資金を提供し、金が見つかった場合に売上の一定割合を受け取る契約を結ぶビジネスモデルです。

不動産については、特に「土地」自体が重要です。また、土地の下にある資源を持つ企業への投資も有効でしょう。もう一つは、発行数が上限のある仮想通貨です。ビットコインのような「デジタルゴールド」は、その構造が実質資産として優れています。
Q: インデックス投資の時代は終わりを迎えるのでしょうか?
過去10年はインデックスバブルだったと言えます。アメリカでは投資資産の半分近くがインデックス投資になっており、日本でもインデックス中心の運用が主流です。株式市場が上昇している時はインデックス投資でも良いのですが、現在のような局面ではそれほど単純にはいきません。
バリュー投資は長らく主流から外れていましたが、今後は重要性が増すでしょう。日本市場には割安株がまだ多く存在し、全体の約4割が簿価割れしています。先進国市場でこれほど割安な市場はほとんどなく、大きな投資機会があると言えます。
Q: バリュー投資をどのように実践すればよいでしょうか?
バリュー投資には大きく分けて二つのアプローチがあります。一つ目は「ディープバリュー型」で、長期的に安い株を買い、誰かが何らかの行動を起こすか、いずれバリューが戻ることを期待するものです。これはベンジャミン・グレアム(バフェットの師)が世界大恐慌の教訓から始めた方法で、とにかく最も安いものを買ってリスクを限定しようという発想です。ただし、きっかけがなければずっと安いままの「バリュートラップ」に陥る危険性もあります。
二つ目は「相対的割安株」を見つける方法です。さまざまな指標を見ながら、相対的に安い株を探します。ただし、安いだけでなく、何らかのきっかけで本来の価値に戻る可能性があるかどうかも見極めます。
Q: 投資家を目指す若い世代へのアドバイスを教えてください
まず自分で小額でも株に投資してみることが大切です。失敗することも重要な経験です。また、自分の投資スタイルを探すことも必要です。他人の真似だけでは成功できません。
私自身、キャリアの初期に300億円の運用を任されたときは非常に緊張しました。そのとき恩師から「お金を運用すると自分自身のことが分かるようになる」と言われました。つまり、自分が受け入れられるリスクのレベルを知ることが重要なのです。グロース投資が得意な人もいれば、バリュー投資が合う人もいます。投資スタイルは話を聞いているだけでは分からず、実際にやってみないと自分に合うものは見つけられません。
投資はおなかが痛くなるような場面もありますが、そういった感覚も含めて、自分を客観的に見られるようになります。投資家として成功するためには、大きな賭けをする場面もあります。その賭けのサイズ感についても多くの勉強をしました。
投資業界は性別も体力も関係なく、実力で勝負できる世界です。20時間働いても成果が出ない場合もあれば、1時間で大きな成果を出せることもあります。特に独立心が強く自分で判断したい方に向いている職業です。お金を管理するのは人を管理するのとは全く異なり、気に入らなければ売ればいいだけなのです。
投資家は日々何百もの判断をしています。これが好きな人には本当に楽しい仕事です。最初の3年ほどはあまり好きではなかったのですが、自分で運用してみて初めてその面白さに気づきました。
投資において一番重要なのはお金そのものではなく、勝負なのです。自分の判断が正しいか間違っているかがすぐに数字で示されます。知的な頭の体操もでき、経済的自由も得られる、好きな人にとっては一生やめられない職業です。
