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徹底分析:米国自動車マーケット
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2025年5月11日

トランプ関税に揺れる世界の自動車メーカー。関税により米国マーケットはどう変化するのか?テスラやトヨタや他の日系メーカーにどんな影響があるのか?フォーインの安藤久史アナリストに話を聞いた。
トランプ関税、米国自動車マーケットはどう変わる?日産・マツダに厳しい現実
安藤久史アナリストによると、トランプ関税によってアメリカの自動車販売台数は2026年までに大きく落ち込み、2020年のコロナ禍と同レベルの約1400万台まで減少する見通しだという。そこから2030年にかけて2024年の水準である1650万台に回復すると予測している。

トランプ関税は単なる増税ではなく、予算確保の戦略?
Q: トランプ関税がアメリカの自動車市場にどのような影響を与えるのでしょうか?
トランプ関税による影響は大きく、アメリカの自動車販売台数は2026年にかけて大きく落ち込む見通しだ。現在、アメリカのメーカーはほぼ生産能力の上限で稼働しており、生産を増やすのは難しい状況。一方で関税の影響により輸入は減少すると予測される。特にヨーロッパメーカーは、小型モデルのアメリカでの販売を中止すると発表しており、利益が出ないので売っても意味がないという判断だ。
2026年には販売台数が約1400万台程度まで落ち込み、これはコロナ禍で落ち込んだ時と同じくらいの規模になる。その後2030年にかけて、2024年の水準である1650万台まで回復していくと考えられる。

Q: トランプ大統領はなぜこのような政策を推し進めるのでしょうか?
一見すると、物価上昇を招き、世界から批判を浴びる関税政策だが、これには戦略的な意図がある。アメリカでは議会で法案を通すためには、事前に予算を確保しておく必要がある。関税はその予算確保の手段だと考えられる。
アメリカの2024年の輸入総額は約3兆ドルで、このうちカナダとメキシコからの輸入が約1兆ドル。残りの約2兆ドルに10%の関税をかけると、年間で2000億ドルの収入になる。これはバイデン政権が気候変動対策として10年間で4000億ドルを投じたIRA(インフレ抑制法)と比較しても、単年で半分の規模となる大きな財源だ。
この予算を使って、減税や産業支援、自動車購入の補助金などのプラスの政策を実施する可能性がある。2026年の中間選挙までに国民の生活が良くなったという実感を与えることが重要で、そのために最初にマイナス面を出し切り、予算を確保してから良い政策を打ち出す戦略と見られる。
SUV人気が継続、日産とマツダに厳しい現実
Q: アメリカ市場ではどのような車種が人気なのでしょうか?
アメリカ市場ではSUVの人気が続いている。2019年にはSUVの構成比は48.9%だったが、2024年には58.7%まで上昇した。特にコンパクトSUVは2019年比で20%増、ラージSUVは18%増と、市場全体が縮小する中でSUV市場は成長している。

この理由として、アメリカの広い高速道路では運転席が高い位置にあるSUVの方が見通しが良く、周囲の車も大型車が多いため、小さな車に乗っていると事故のリスクを感じる点が挙げられる。このトレンドは当分変わらないと予測される。
Q: 関税によって最も影響を受けるメーカーはどこですか?
日産とマツダが最も厳しい状況に置かれると予測される。特に日産は製品の全面改良や市場投入のタイミングが他社より遅れ、売上が落ち込んでいる。この状況が改善する見込みは少なく、関税によってさらに厳しい状況になる。
メーカー別の製造国比率を見ると、GMやフォード、ステランティスはアメリカでの生産比率が高く、カナダやメキシコの生産拠点も含めると北米生産比率は非常に高い。一方、日系メーカーは北米以外からの輸入比率が高く、なかでも三菱は全て日本からの輸入に頼っている。
スバルもエンジンと変速機が全て日本からの輸入であり、これらは車両コストの3〜4割を占めるため、部品に25%の関税がかかると収益構造が大きく変わる。初年度は部品輸入に対して3.75%の補填があるが、それでも厳しい状況だ。

Q: 関税がかかっても利益が出るメーカーはありますか?
各メーカーの収益予測を見ると、日産とマツダは関税がかかることで赤字に転落する恐れがある。特に、アメリカでの収益が全社の黒字を支えていたメーカーにとっては、アメリカでの利益減少は全社的な赤字につながる可能性があり、関税を自社で補填する体力もない。
一方、トヨタは関税分を自社で補填すると表明しているが、収益予測を見ても利益を確保できる見込みで、補填は難しくないと考えられる。フォルクスワーゲンも輸入比率は高いが、利益の規模が大きいため、関税がかかっても一定の利益を確保できる見通しだ。
北米生産の懸念点 - カナダの反米感情とメキシコの現状
Q: メキシコとカナダでの生産体制はどうなっていますか?
北米自動車産業は1994年のNAFTA(北米自由貿易協定)開始以降、三カ国での生産体制を構築してきた。メキシコには日産が早くから進出していたが、日系メーカーの本格的な進出は2010年以降で、マツダを皮切りにホンダやトヨタが進出した。
実際にメキシコのティファナを訪れた印象では、トランプ政権の影響は不法移民が米国から戻されたくらいで、市民レベルではあまり変化を感じていない様子だった。メキシコはアメリカの経済力が非常に大きいため、基本的にはアメリカからの要求を受け入れ、その中で自国の経済発展を図るスタンスだ。そのため、反米感情もあまり感じられなかった。
一方、カナダでは反米感情が高まっている。カナダでの自動車生産はトヨタが40%、ホンダが32%と日系メーカーのシェアが非常に高い。元々カナダは生産コストが高く、自動車メーカーは撤退したい思いがあったが、雇用問題で簡単には撤退できなかった。
最近はEV(電気自動車)トレンドに合わせ、カナダ政府が補助金を出してEV生産を促進していた。特にケベック州は電力の9割が水力発電であり、環境に優しいバッテリー生産に適している。ホンダもバッテリーと完成車工場を2028年に稼働させる計画だった。
Q: トランプ関税はカナダとの関係にどう影響していますか?
これまでカナダとアメリカは「一つの市場」という認識が強く、USMCAへの移行時も基本的にカナダとアメリカは同列に扱われていた。しかし、トランプ関税によってカナダからの輸入にも関税がかかることになり、カナダ国民は「裏切られた」と感じている。

カナダでは反米感情が高まり、カナダ製品を積極的に購入する動きも見られる。ハンバーガーチェーン「A&W」は「カナダ企業による所有運営」と明示し、スーパーマーケットでは「カナダ製造に誇りを持っています」とアピールしている。以前はなかったことだが、今はカナダ製品にはっきりとマークをつけるようになった。
カナダのアナリストによると、あるミーティングで「家族でディズニーランドに旅行に行った」と発言した人が大ブーイングを浴びたという。また、アメリカへの観光客が7割減少するという予測もあり、アメリカへ行くことを控える雰囲気が広がっている。
カナダでは4月28日に総選挙があり、トルドー首相が辞任した時点では与党の自由党は野党の保守党に20ポイント以上の差をつけられていた。しかし、3月にマーク・カーニー元カナダ銀行総裁が首相に就任し、トランプに対して毅然とした態度をとりながらもヨーロッパとの関係を強化する姿勢を示したことで支持率が急回復。選挙では自由党が第一党となり、カーニー首相の続投が決まりそうだ。