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キーエンス流「性弱説経営」の実践法
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2025年5月14日

経営は性善説でも性悪説でもなく、“性弱説”で行うべきだ-―キーエンス出身のコンサルタント、高杉康成氏はそう唱える。キーエンス流の「性弱説経営」とは何か?どうすれば実践できるのか?高杉氏に聞いた。 <ゲスト> 高杉康成|コンセプト・シナジー代表 神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA)。中小企業診断...
キーエンス流 性弱説経営とは?高い生産性を支える考え方の本質
日本の製造業界で圧倒的な利益率を誇るキーエンス。その経営手法の核心にある「性弱説経営」とは何か?高杉康成氏に話を聞いた。

Q: 性弱説経営とは具体的にどのような考え方ですか?
性弱説経営とは、「人間は弱い存在であり、自然と頑張れるわけではない」という前提に立った経営手法のこと。対義語は「性善説」で、「人間は放っておいても頑張る」という考え方だ。
具体的には、単に「頑張れ」と言うだけでなく、「どうすれば頑張れるか」の仕組みを作る。例えば、会議でも単なる実績報告ではなく、「なぜその結果になったのか」というメカニズムを追求する。
キーエンスでは「1分単位」で時間管理をするなど徹底した仕組み化を行い、高い生産性を実現している。
Q: 性弱説と性善説の違いを会議運営の例で説明すると?
性善説の会議は「やればできるだろう」という前提で進む。朝礼で指示を出して「はい、やっておいてね」と終わらせ、結果が出なければ「すみませんでした」と謝罪して次に進む。

一方、性弱説の会議では妥当性を重視する。単なる数字の確認ではなく、「なぜうまくいかなかったのか」を掘り下げる。月の途中で進捗確認の会議を入れ、「時間がなかった」という言い訳があれば「なぜ時間がなかったのか」と深掘りする。
これにより1ヶ月経ってから「動けていませんでした」という事態を防ぎ、早期の軌道修正が可能になる。
Q: 経営理念の浸透について、性弱説はどう考えるのか?
多くの企業でクレド(行動指針)制作が流行っているが、作ることが目的化し現場での実践方法がないケースが多い。
性善説では「口酸っぱく言えば浸透する」と考えるが、性弱説では「言うだけでは浸透しない」と考える。例えば「時間を大切にする」という理念を掲げるなら、1時間の価値を見える化したり、1分単位で記録させたりする仕組みが必要だ。
クレド制作自体が間違いではなく、それをどう使うかが重要。抽象的な言葉ではなく、具体的な行動に落とし込む仕組みが必要となる。
Q: 仕事の密度を向上させるには?
時間の価値を意識させる仕組みが必要だ。キーエンスでは1分単位で時間管理を行っている。
ただし、単に「1分単位で記録しろ」と言うだけでは不十分。記録した内容をチェックする人がいて初めて機能する。仕組み化しなければ続かない。

「管理されている感じが嫌」と感じる人もいるが、これは文化の問題。スタートアップなど小さいうちから「うちは1分単位でやっています」と当たり前にしていれば抵抗感は少ない。
Q: ソリューション提案において性弱説はどう活かせるか?
多くの企業がCRMやSFAなどのツールを導入しても失敗するケースがある。これは典型的な性善説の失敗例だ。
性弱説的アプローチでは、ツールは目的ではなく手段と考える。まずヒアリング力を上げ、顧客が何を求めているかを正確に聞き出す能力を高める。その情報をどう共有し、活用するかという目的があって初めてツールが生きてくる。
ツールを導入すれば自動的に成果が上がるわけではない。レベル感に応じた導入が必要で、基本的な営業活動の形ができていない状態でツールを入れても効果は薄い。
Q: 性弱説経営が日本に適している理由は?
日本人は同質化しやすい国民性を持っている。誰かが右を向くと自分も右を向く傾向があり、自ら「私は左だ」と主張する人は少ない。
一方、デンマークなど個人主義の強い国では、管理が緩くても高い生産性を上げられる。これは国民性の違いだ。日本では集団的な文化があるため、ある程度マネジメントで管理する必要がある。
性弱説は日本人の弱さを補完し、仕組みで整えることで高い成果に導く方法論と言える。
Q: 日本の公教育や行政と性弱説の関係は?
学校や行政機関などの公共機関はほぼ性善説で運営されている。マニュアルを作って配布すれば読むだろう、通達すれば理解するだろうという前提だ。
このような環境で育った人々に性弱説的思考を導入するのは難しい面がある。公共機関が性善説で成り立っている社会で、家庭や企業だけが性弱説を取り入れるのはハードルが高い。

ただし、教育環境についても考えれば、子どもが学校に行きたがらなくても、行かせないと勉強しないのは明らかだ。これも性弱説的な考え方が背景にある。
Q: 個人レベルで性弱説をどう取り入れるべきか?
人に仕事を頼む際、「この人に任せたらできるか」という視点を持つことが重要だ。これは相手を信じないということではなく、仕事が成功するかどうかという観点で考えること。
人に接する際の接し方を変えるだけでも自分の成果は変わる。重要な仕事が入った時は「どうしたらうまくいくか」という視点で先手を打つこと。うまくいかないかもしれないリスクを想定し、対策を練ることが大切だ。
Q: キーエンスはなぜ性弱説で高い成果を上げられるのか?
キーエンスは性弱説経営により「成功する確率を高める」ことに注力している。
性善説では難しい仕事に挑戦した際に失敗する確率が高まる。一方、性弱説では仕組みを整えることで難しい仕事でも成功確率を上げる。そのため同じ時間内でより大きな成果(アウトプット)を生み出せる。
また、キーエンスの文化が定着していることも大きい。入社した時から性弱説的な環境が当たり前となり、それが高い成果につながっている。
Q: 企業が性弱説経営を導入するにはどうすればいいか?
経営者が考え方を変え、会議の進め方など小さなことから変えていくことが第一歩だ。例えば「私の根性が足りませんでした」という言い訳を受け入れず、「何がどうダメだったのか」というメカニズムで説明してもらうような会議にする。
性弱説的経営を導入する際は、トップダウンでの推進が重要。ただし、導入には反対する人も出てくるため、誰を納得させれば仕組みが入れられるかを考える必要がある。
また、上長のトレーニングも重要だ。部下だけにトレーニングしても上司が変わらなければ元に戻ってしまう。仕組みとその運用方法を同時に教育することで、戻りにくくなる。
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性弱説経営は文化の問題でもある。日本企業が競争環境の変化に適応するには、成功体験に頼るのではなく、経営方法を変える必要がある。性弱説的アプローチはその有効な選択肢の一つといえるだろう。