PIVOT TALK BUSINESS
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2025年5月6日

国民に蔓延する政治不信。無くならない裏金。「政治家の習性は絶対に変わらない」と語る政治ジャーナリストの鮫島浩氏に『クリーンな政治を実現する方法』について聞いた。 <ゲスト> 鮫島浩|政治ジャーナリスト 1994年朝日新聞に入社。政治記者として菅直人や竹中平蔵らを担当し、政治部や特別報道部でデスクを...
政治の世界では、政治家は常に選挙に勝ち、権力を得るために奔走している。そんな彼らの「性悪説」を前提とした制度設計がなぜ必要なのか。政治ジャーナリストの鮫島浩氏が「政治と金」問題の核心に迫る。

政治家は権力闘争の中で必死に戦っています。敵に勝つためには少しでもお金が欲しいし、少しでも有利になりたい。この政治家の習性は絶対に変わりません。
政治家のモラルや倫理が足りないという声がよくありますが、全ての法律やルールは特に政治家相手には「性悪説」で立てるべきです。性善説に立つと、真面目にやっている人が損をして、悪いことをする人だけが強くなってしまう。権力者は必ず間違うという前提で、法律やルールで縛るべきなのです。
政治家の善意や誠実さ、モラルにはあまり期待しない方がいい。彼らは必死で権力闘争をしているから、敵に勝つためには少しでもお金が欲しいし、少しでも有利になりたい。この政治家の習性は絶対に変わりません。
お金を全部透明にしてしまうと、例えば10人の部下がいる時に全員に均等に100万円ずつ配るとは限りません。選挙が激戦のところには手厚くお金を配りたいとか、特定の人物には多くのお金を渡したいという事情があります。全部公開されてしまうと「あいつには200万円渡すのに俺には100万円しかくれないのか」となり、親分からすると組織が崩壊してしまう。
そのため、お金の配分時に隠したいという要素がどうしても出てきます。これを認めてしまうと裏金が増えることになりますが、政治家はそうしたくなる、隠したいという習性を持つ動物だと考えるべきです。だからこそ我々が許さずに、ルールで縛っていく必要があります。

企業側からすると当然のことで、税金は自分の分野だけは安くしてほしい。例えば日米交渉になった時に「お米だけは許してください」「豚肉だけは許してください」と頼むのは本音です。
みんなが自民党の政治理念を尊敬して「頑張ってください」などと言うのは建前で、実際には何か見返りを期待しています。見返りを期待してお金を出すこと自体は問題ないですが、そこにはルールが必要です。
個人献金は「この政治家を応援したい」という個人の思いでするもので、個人の場合はそれほど大きなお金は出せないので問題は少ない。しかし業界団体や大企業はお金を持っているので「我々の業界だけは税金を安くしてください」「我々の業界だけは補助金を増やしてください」と要求することができます。
アメリカは自由を重視する国なので政治献金はほぼ自由です。お金をたくさん集める人は人気があるからお金を集められるという考え方です。民主党も共和党も、まず「予備選」で誰が一番お金を集められるかを競い、大量にお金を集めた人がコマーシャルをたくさん打って人気を得る仕組みになっています。
アメリカではお金の量を規制しようという発想はなく、いくら集めてもいいけれど全部公開しようという考え方です。例えばトランプがイーロン・マスクから巨額の献金を受けていたら、それが公開されます。「トランプはマスクからこれだけお金をもらっているから影響を受けるだろう」ということを公開することで、有権者はそれを踏まえて投票するかどうか判断できます。
アメリカでは政治家が嘘をついたり隠したりすることに対して非常に厳しい態度を取ります。一方、ヨーロッパはこれと逆で、公開だけでは強い者、お金持ちが勝ってしまい、結果として歪んだ政治になるため、献金そのものを規制すべきだという考え方です。

現在、企業・団体献金の扱いについて大きく分けて3つの案があります。自民党は禁止より公開、小泉進次郎氏が「何か問題があったら改めていけばいい」と主張しています。これはアメリカ型に近い考え方です。
一方、立憲民主党や日本維新の会は「企業団体献金の全面禁止法案」を出していますが、これも実際には抜け道があります。法案をよく読むと「政治団体は除く」と書いてあるのです。つまり企業が直接献金することは禁止されても、企業が政治団体を作って、そこに一旦お金を集め、そこから寄付すれば良いことになってしまう。
これではむしろ今より分かりにくくなります。企業名や労働組合の名前が出なくなり、「明日の車社会を考える会」のような名前の政治団体を作られれば、どの企業がお金を出しているのか分からなくなってしまう。これは全面禁止法案ではなく「抜け道法案」「見えづらくなる法案」と言えます。
国民民主党案は当初、支部への献金を禁止し、本部と都道府県連だけに絞るという案を作っていました。自民党は7,800もの支部があって実態が見えにくいので、東京本部と47の都道府県連だけに限定すれば48箇所だけをチェックすればよく、透明度が増す案でした。しかし協議が始まるとすぐに「オンラインで政治資金収支報告書を提出する場合は特別に許す」という抜け道を作りました。
結局、3つの案はどれも国民をバカにしているようなもので、制度が複雑で騙されやすいのですが、もっと怒って声を上げるべきです。参議院選挙を前に、各党にもう一度考えを改めてもらい、意味のある内容を出し直させることが必要です。
クリーンな政治は可能です。政治家をよく知る必要がありますが、ルールを明確にするだけでは抜け道が用意されてしまいます。しかし、私が政治家を「性悪説」と言いながらも1つだけ信用していることがあります。それは彼らが政治をやっている理由です。
彼らは皆、選挙に勝ちたい人たちで、誰もがいずれは「総理大臣になりたい」と内心思っています。彼らは勝って総理大臣になりたいという欲求が強く、そのためには何でもするのです。
クリーンな政治をした方が総理大臣になれるのならば、政治はクリーンになります。現状では、クリーンでは勝てないからお金をばらまいて仲間を増やし、選挙に強くなろうとしています。しかし、お金を配ったら負けるとなれば、配らなくなります。つまり「勝つためなら何でもする」という彼らの習性を逆利用して、クリーンな政治をしている方が総理大臣になれるという実績を積み上げていけば、政治は変わるでしょう。

裏金議員を選挙で落とすことが大切です。彼らが勝ちたいだけだということを前提に、「こういうことをやったら選挙に落ちる」ということを見せつければ、政治家は行動を変えるでしょう。これは他の政治家たちも見ていて「ああいうことをすると落ちるんだ」と学ぶので、政治を変えていくことができます。
誰かを応援して当選させることも大事ですが、許せないことをした人を落選させることも政治家を評価する一種の方法です。有権者は強いのです。選挙の洗礼を与えることで政治をクリーンにできると思います。
確かに30年前と比べれば、政治はマシになっています。札束が飛び交うようなことはさすがになくなっています。ここで甘やかさずに、クリーンな人の方が総理大臣になれるという有権者の意思が選挙で示されれば、政治は綺麗になっていくでしょう。
完全に綺麗になるには時間がかかるかもしれませんが、前よりはマシになっていくことが一歩前進です。諦めずに少しずつでも良くしていくために、一つ一つの選挙を大事にして投票に行くことが私たちにできる最も重要なことです。
また選挙だけでなく日頃からSNSなどで声を上げることも有効です。クリーンな政治が大事だという声が広がれば広がるほど、政治家はそれを意識します。彼らは選挙で勝ちたいので、有権者の声は必ず政治家の耳に届きます。諦めずに自分の思いを発信してほしいと思います。