日本再興ラストチャンス
生成AIの覇者は米国か?中国か?
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2025年5月2日

深まる米中対立の中で、生成AIはそのセンターピンだ。それぞれの国の強みはどこか? 日本が対立の中でとるべき立ち位置とは? PKSHA Technology代表の上野山勝也氏と、デジタルガレージ共同創業者の伊藤穰一氏に、生成AIが変える世界の展望を聞いた。 <ゲスト> 上野山勝也|経済同友会 企業の...
AI時代の日本の戦略とは?専門家が語る生成AIの可能性と日本企業の課題
生成AIが世界をどう変えるのか、そして日本はどのように対応すべきか。PKSHA Technology代表の上野山勝也氏とデジタルガレージ共同創業者の伊藤穰一氏が語る最先端の知見と示唆に富んだ対談を整理した。

Q: AI戦争の現状で、米国と中国はどちらが優位なのでしょうか?
現在、生成AIの活用という観点から見ると、中国の方が現実的な実装スピードが明らかに早い状況にある。中国は特に実装面で様々なことができる環境があり、これが強みになっている。
アメリカはインターネット上のデータが豊富にあるという強みを持つ一方、中国はプライバシーやデータ活用の規制が緩いため、自動運転などの実用化実験が比較的容易に進められる環境がある。
伊藤氏は「中国は効率よく、賢く技術を磨いている」と指摘し、特にディープシーク(DeepSeek)のようなオープンソースモデルが、アメリカに留学していない若い中国人研究者によって開発され注目を集めていることを挙げた。
基盤モデルのレイヤーについては、上野山氏は「まだ勝負は終わっておらず、どうなっていくか非常にエキサイティングな議論が続いている」と述べている。


Q: 日本はデータ活用の面で何が課題なのでしょうか?
日本は「自分の情報は自分のもの」という考え方が強く、公共のために個人データを活用することへの抵抗感が依然として大きい。一方、海外では「データは公共財」という認識が広がっている。
専門家はこの状況について「日本は社会のためにデータを使う文化が未発達で、医療データなどが学習に使えないなどの規制が多い」と指摘する。
また中村伊知哉氏(千葉工業大学学長)は、「個人が特定できるというレイヤーと、その情報を使って経済的損害を与えるレイヤーには大きな違いがあるが、多くの人がこれを同一視している問題がある」と分析している。
伊藤氏も「技術者と法律学者が一緒に法律を作る機会が少ない」点を課題として挙げ、技術的に解決可能な問題に対しても法的なハードルが残っている状況を指摘した。
Q: 日本企業の生成AI活用が進まない原因は何ですか?
日本企業の生成AI活用が進まない背景には、組織構造や意思決定プロセスの問題がある。上野山氏は、大企業には「ブレーキ」が埋め込まれていると表現する。
一つ目のブレーキは「クラウドのAIには個人情報が入るかもしれないから使ってはいけない」という考え方。二つ目は、会社の評価制度や人事制度などの「アルゴリズム」がAI活用を促進するようにデザインされていないことだ。
「このアルゴリズムは一個人がコントロールしているわけではなく、特定の個人の衰退で変更できないように作られているため非常に強固だが、時代に合わせて変えることが難しい」と上野山氏は指摘する。
伊藤氏も「日本は組織の変革が非常に難しい国。AIを使うためには、それによってやり方を変えないと難しい」と述べ、前例主義やビジネス作法が変革の障壁になっていると分析した。
Q: 日本が生成AI時代に勝つためには、どのような戦略が必要ですか?
専門家たちは、日本が生成AI時代に競争力を持つためには、教育改革とフィジカルAI(ロボットなど物理的な世界とAIの融合)の分野での強みを活かすことが重要だと指摘する。
「日本は車やゲームなど、後から来て整えるところが上手い。1周遅れのフロントランナーになる戦略が必要」と伊藤氏は述べる。
上野山氏は「フィジカルAIと科学技術分野は国単位で極めて重要な分野」と強調。中国の事例を見ると、日本のメーカーも技術力はあるが、「AIの分野と従来の家電を作る人たちがワンチームになって製品を作る体制が足りていない」と分析する。
また、教育面では「言われたことをきちんとこなす人材よりも、自分で考え、学習し、権威を常に疑うような人材の育成が必要」と伊藤氏は主張。日本では育ちにくいタイプの学生を意図的に育てる必要があると述べた。

Q: 生成AIは教育現場でどのように活用されていますか?
中村氏によると、学生のレポートや論文作成に生成AIが多用されており、中には「チャットGPTさん、ありがとう。中村先生、ありがとう。私の名前を先に書いてよ」といった使い方をする学生もいるという。
こうした状況に対応するため、教育機関ではどのように生成AIを使うべきか、倫理的な面や運用面での議論が活発になっている。テストでの使用は禁止されているが、それ以外の場面では推奨している授業もあり、場面に応じた使い分けがされている。
上野山氏は「学生がAIを使って質問をデザインし、それで人から聞くことで成長が加速する」という前向きな活用例も紹介している。
伊藤氏は「言われたことをきちんとこなすような、日本の組織に必要だった人材が最も危険」と指摘し、AIの台頭により、日本の教育が育ててきた従順な人材像の転換が必要だと述べた。
Q: 技術革新によって、どのような職業が影響を受けるでしょうか?
中村氏は「単純な労働をしている人の仕事ほどなくなるという予測があったが、実際にはそうなっていないという研究も多い」と指摘。むしろ「高付加価値の仕事をしている人たちの仕事が今後どうなるか」が重要な問いになると述べた。
法律家や翻訳家などの専門職がAIに置き換えられるのではないかという懸念に対して、伊藤氏は「最終的には弁護士が責任を取る必要があり、AIの間違いを見分けられる人材が必要」と反論。完全に置き換わるというよりは、最終的な判断や責任は人間が担うという見方を示した。
また日本の人口減少は「ジョブが減っているからマシンに入ってもらいたい社会」であり、これは他の国に比べて有利な面もあると指摘。リスキリングの重要性を強調し、消えゆく職種に若者を送り込まないよう教育を変える必要性を訴えた。