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韓国・超競走社会のリアル。結婚・出産を優先したら生き残れない
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2025年4月30日

日本以上のスピードで少子化が進む韓国。なぜ少子化が止まらないのか?少子化対策のため国や企業はどんな施策を打ち出しているのか?韓国・超少子化のリアルを、ニッセイ基礎研究所・上席研究員で亜細亜大学特任准教授の金 明中氏に解説してもらった。 <ゲスト> 金 明中|ニッセイ基礎研究所 1970年韓国仁川生...
韓国の出生率は0.72、日本より深刻な理由と対策のヒント
日本よりも深刻な少子化に直面する韓国。出生率は0.72と日本の1.2を大きく下回っている。この差はなぜ生まれるのか?韓国社会の競争の激しさや家庭観、働き方の特徴から日本が学べることはあるのか?日韓の少子化事情を専門家が解説する。
「結婚と出産を優先しては生き残れない。まず昇進すべき」という韓国社会の現実
Q: 韓国の出生率は日本と比べてどのような状況ですか?
現在の出生率を見ると日本が1.20で韓国が0.72です。この差を次世代で考えると、現在100人の男性と100人の女性がいて子供を産んだ場合、次の世代に生まれる子供の数は日本が72人、韓国は26人となり、2.8倍の差になります。その次の世代ではさらに差が広がり、日本が43人、韓国が9.3人で4.7倍の差になります。

韓国の状況は非常に深刻で、2023年のデータでは出生率が1.0を超える地域が国内に一つもありません。このままの出生率が続けば、韓国は2750年頃には消滅するという予測も国の機関から発表されています。実際には現在の出生率はさらに低いので、消滅時期はもっと早まる可能性があります。
ソウル一極集中と昇進優先の文化が少子化を加速
Q: なぜ韓国の出生率が日本よりも低いのでしょうか?
重要な要因の一つがソウルへの一極集中です。韓国ではソウルとその周辺に人口の半分以上が集中していますが、日本の東京圏の集中率は約30%程度です。地方出身の若者はいい大学やいい企業を目指してソウルに集まります。そこで生き残るために、結婚や出産よりもまず昇進を優先する意識が強くなります。
もう一つの要因は、初婚年齢の高さです。韓国の平均初婚年齢は男性が34歳、女性が31.5歳と日本より高くなっています。男性は約2年間の兵役があるため、大学卒業後すぐに就職せず、26〜27歳になってから就職するケースが多いです。
また女性も男性同様、就職のためのスペックを上げるために留学や研修に時間を費やすため、結婚年齢が上がっています。年齢が上がると子供を産む能力も低下するため、全体的な出生率低下につながっています。

韓国の「52時間勤務制」導入の予想外の結果
Q: 韓国では労働環境の改善は進んでいるのですか?
韓国では2018年にムン・ジェイン前大統領が「52時間勤務制」を導入しました。これは週の労働時間を最大52時間に制限し、年間の残業も400時間以上してはならないという制度です。それまでは週68時間だった労働時間を急激に減らしたため、様々な影響が出ています。
特に中小企業で働く人々にとっては、残業代が減ったことで収入が大幅に減少しました。子供の教育費や生活費を確保するために、退社後に副業やアルバイトをする人が増えました。皮肉なことに、家族との時間を増やすための労働時間短縮政策が、実際には夕方の生活の質を低下させる結果となりました。
大企業では労働時間の短縮に合わせて給料を上げたケースもあり、早く帰宅して家族と過ごす時間が増えた人もいます。しかし中小企業ではそのような余裕がなく、所得格差が広がる結果となりました。
男性育休1年は効果的?韓国の育児支援策
Q: 韓国ではどのような少子化対策が実施されていますか?
韓国政府は2014年頃から「パパ育児休業ボーナス制度」を導入しています。この制度では、同じ子供に対して2回目に育児休業を取得する親(通常は父親)に対して、最初の3ヶ月間は賃金の100%を保障します。最近ではこれが6ヶ月間に拡大され、多くの男性が育児休業を取得するようになりました。
データによると、2002年には育児休業を取得した男性は70人程度でしたが、現在では年間で4万1000人ほどの男性が育児休業を取得しています。重要なのは、韓国の男性は1年間の育児休業を取得するという点です。日本の男性の育休取得は平均で1週間から10日程度、最近でも20〜30日程度ですが、韓国ではずっと長期間取得しています。
こうした政策により、男性の育児参加が増え、将来的に出生率にプラスの影響を与える可能性があります。両親が協力して子育てをすることで、育児の負担が軽減され、次の子供を持とうという意識が高まるかもしれません。
企業も子育て支援に本腰、出産で1000万円支給も
Q: 企業による少子化対策の取り組みはありますか?
韓国では企業によるユニークな取り組みも見られます。例えばプヨングループという建設会社では、子供を産んだ社員に子供1人あたり1億ウォン(約1000万円)を支給しています。こうした大きな支援金を提供する背景には、少子化が進む中で将来の優秀な人材を確保することが難しくなるという懸念があります。

また、サムスン電子では第3子を出産した女性社員に対して、条件なしで昇進させる制度を導入しています。このような企業が増えていることが韓国の特徴であり、今後こうした企業風土が一般化する可能性もあります。
一方で、結婚や出産を選択しない従業員からは「差別されている」という不満の声も上がっています。そのため、最近では独身社員に対しても育児休業と同等の休暇を提供したり、支援金を支給したりする企業も増えています。
日韓共通の課題「親の過保護」から脱却を
Q: 東アジア全体の少子化の共通点はありますか?
東アジアの少子化問題には共通する背景があり、その一つが「子供の世話をしすぎる」親の姿勢です。親が大人になった子供に対しても様々な支援をし続け、結婚時には住居費用を負担するなど、子供に対する経済的・精神的負担が大きくなっています。
韓国では特に親が子供の結婚や住宅購入まで責任を持とうとする意識が強いです。そのため若者は「親が自分にしてくれたように、自分も子供にしてあげなければならない」と考え、その負担の大きさから結婚や出産を躊躇するケースが増えています。
こうした状況を改善するには、「大人になったら自己責任で歩んでいく」という考え方を広めることが重要です。親は大学まで教育するが、その後は自分で生きていくという文化に変えていくことで、若者の結婚や出産に対するハードルを下げることができるかもしれません。
住宅支援で出生率アップの事例も
Q: 具体的に効果を上げている対策はありますか?
韓国のインチョン市では、若者向けに1日の家賃がわずか1000ウォン(約100円)という超低額で住宅を提供する政策を実施しています。これにより、同市の出生率が上昇したという実績があります。
住宅費用の負担を軽減することは、若いカップルの経済的不安を減らし、結婚や出産を考えるきっかけになります。ただし、住居だけでなく安定した仕事の提供も合わせて行うことが重要です。
日本でも今後空き家が増えていく中で、新婚カップルに対して大幅な家賃割引や無償提供を行うことで、少子化対策の一助となるかもしれません。