PIVOT TALK BUSINESS
AIを使い倒してわかった不都合な真実と希望
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2025年5月21日

生成AIの進化とツールの普及が進む一方、組織への浸透はなかなか進まない。生成AI活用の壁と、それを突破するカギは何か?自ら生成AIを使い倒してわかった不都合な真実と希望を、Kaizen Platformの須藤憲司CEOに聞いた <ゲスト> 須藤憲司|Kaizen Platform 代表 2003年...
AIドリブン経営を実践して分かった不都合な真実
AIを業務に導入することで人員を増やさなくても売上や利益を増加させられることは重要なポイントだ。しかし、適切なAIツールを選択して使いこなすのは意外と難しい。種類が多すぎてめんどくさい上に、心理的ハードルが大きいために使われないことが多い。AIを使わないとアイデアが出ず、使うと発想が広がっていく。フィードバックを受けて改善していくことも大切だ。

Q: なぜAIツールは社内でなかなか活用されないのでしょうか?
多くの企業でAIツールの利用率が上がらない理由は、適切なツール選びとその使い方が難しいからです。現在は様々な種類のAIツールが存在していて、ユーザーにとって選択肢が多すぎる状態です。また、AIツールを効果的に使うにはプロンプト(指示)の書き方を工夫する必要がありますが、それが心理的ハードルになっています。
現状では特定の領域に特化した「ナローAI」が多く存在しています。例えば、絵を描くのが得意なAI、テキストを生成するAI、画像を動画に変換するAIなど、それぞれ得意分野が異なります。いわば「商店街」のような状態で、目的に応じて異なる「お店」に行かなければならないのです。将来的には総合的な「モール」のようなAIが出てくるかもしれませんが、今はまだその段階ではありません。
Q: AIツールの活用を広めるためにはどうすればいいですか?
AIツールの活用を広めるカギは、ユーザー体験(UX)の設計にあります。私たちの会社では「議事録エージェント」をSlackに導入したところ、爆発的に利用が増えました。これは会議の録画データのリンクを貼るだけで自動的に議事録を作成してくれるシステムです。

重要なのは、日常的に使っているツール(SlackやTeamsなど)の中でAIを簡単に呼び出せるようにすることです。これは「蛇口をひねったらAIが使える」くらい簡単な体験設計が効果的です。現場の人たちと一緒にワークショップを開き、どの業務をAI化すると楽になるかアイデアを出し合い、インパクトの大きいものからプロトタイプを作成していくアプローチも有効です。
このようにAIの活用を進めるためには「マーケットイン」の発想が重要で、現場のニーズに合わせたAIツールを提供することが成功の鍵となります。
Q: AIの導入による業務変革はどのように進むべきですか?
AIの導入は3つのフェーズで進んでいくと考えています:
1. フェーズ1: 特定の業務の一部にAIを活用する段階。人が業務を行う中で、AIがサポートする形です。
2. フェーズ2: 基本的な業務オペレーションはAIが行い、人がチェックしてフィードバックする「セミオートメーション」の段階。
3. フェーズ3: 営業やマーケティングからバックオフィス業務まで、すべてのプロセスがAIで自動化される段階。いわゆる「1人ユニコーン」が実現する段階です。
現在多くの企業はフェーズ1からフェーズ2への移行を目指しています。この変革を効果的に進めるためには、既存の業務をAI化する試みと並行して、AIを中心とした全く新しい業務ラインを構築する「2ライン戦略」が有効です。

実際に私たちは動画制作業務でこのアプローチを試しました。既存のディレクターにAIツールを使ってもらう一方で、未経験者にAIの指示通りに作業してもらったところ、未経験者の方がリードタイムが短く、コストも低かったのです。クオリティはほぼ同等でした。これは経験者が自分の知識でAIの指示に疑問を持ち修正するのに対し、未経験者はそのまま従ったためです。
Q: AIの導入によって生じる「不都合な真実」とは何ですか?
AIの導入によって明らかになった2つの不都合な真実があります:
1. SaaSビジネスモデルの変革:AIによって従来のソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)のビジネスモデルが変わってきています。従来のSaaSは人のワークフローを助けるためのインターフェースとデータベースを提供し、ユーザー数で課金するモデルでした。しかしAIが人の業務を代行するようになると、ユーザー数が減少する可能性があります。これに対応して、バリューベース(成果に応じた課金)へのビジネスモデル転換が必要になっています。例えば、面接代行AIは一面接あたりいくらという課金形態になっています。
2. 組織内の格差拡大:AIの導入によって組織内で格差が生じます。経験の浅い「ジュニア層」はAIの指示通りに作業することで短期的には高いパフォーマンスを発揮できますが、スキルの熟達が難しいという問題があります。一方、「トップ層」、特に言語化能力の高い人材のみが残る可能性があります。中間層の人材をどう活かすかが重要な課題となります。
Q: AIの時代を生き抜くためには何が重要になりますか?
AIの時代を生き抜くためには、「言語化能力」が非常に重要になります。野球選手でいえば、感覚で打てる長嶋茂雄タイプよりも、プロセスを言語化できる大谷翔平タイプの方が有利になります。これは特にホワイトカラーの仕事において顕著です。
AIとのコミュニケーションを通じて、自分の考えを明確に伝える力が磨かれていきます。「これうまく伝わらないな」「背景が分かっていないからこういう結果になるのだな」という学習を重ねることで、コミュニケーション能力が向上します。

また、問いを立てる力も重要です。AIは答えを出すことは得意ですが、「何を問うべきか」自体は人間が考える必要があります。問いを立て、その答えの品質を評価するスキルが求められるでしょう。
さらに、好奇心や向上心を持ち続けることも不可欠です。AIに依存して思考を停止すると「AIの奴隷」になってしまう危険性があります。AIを武器として使いこなすためには、常に学び続ける姿勢が必要です。
Q: AIの活用の面白い事例はありますか?
AIの活用は業務効率化だけではなく、クリエイティブな表現にも使えます。私たちの会社では「作曲する営業」が登場しました。お客様が会社のオフィスに来訪される際に、行き方を説明する曲をAIで作曲し提供したところ、非常に好評でした。
このように、AIを単に仕事のためだけではなく、表現手段として活用する発想が生まれています。AIは敵ではなく、私たちの創造性を広げるツールとして活用できるのです。
AIとの共存に向けて、従来の「スキルの熟達」とは異なる新しい成長の形が生まれつつあります。AIによって得られる大量のフィードバックを活かして成長する方法は、既存の成長プロセスより早く、質も高くなる可能性があります。