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日本人の移籍金はなぜ安いのか?
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2025年4月19日

一大ビジネスへと成長した世界のサッカー移籍マーケット。ただ、日本人選手の海外移籍の移籍金はまだ安い。どうすれば日本人選手の移籍金を引き上げられるのか?日本サッカー協会で国際部部長を長年務めた松永隆氏に分析してもらった。 <ゲスト> 松永 隆|広島経済大学スポーツ経営学科教授 1983年住友商事入社...
「日本人選手の移籍金が低すぎる問題」~元JFA国際部長が語る驚きの実態
日本サッカー界には大きな課題がある。世界と比べて日本人選手の移籍金が著しく低いという事実だ。なぜこの問題が起きているのか?どう解決すべきか?元JFA国際部長の松永隆氏の洞察を基に解説する。

Q: 日本人選手の移籍金は本当に低いのでしょうか?
日本はFIFAランキングでアメリカとほぼ同等の位置にあるにもかかわらず、過去10年の移籍金を比較すると、アメリカ選手の平均は約20億円、日本人選手は3.4億円と大きな開きがある。さらに驚くことに、日本で最も高額で移籍した古橋選手より、アメリカで最も安く移籍した選手の方が高い金額で取引されている。
また、FIFAランキングが日本より下のポーランドと比較しても、ポーランド選手は平均8億円程度の移籍金であり、日本の倍以上の収益を得ている。
Q: なぜ日本人選手の移籍金が低いのでしょうか?
最大の原因は日本独自の代理人システムにある。ヨーロッパでは一般的に、クラブ間で直接交渉するか、移籍元クラブが代理人を立てて移籍金を最大化するという方法を取る。
一方、日本では選手代理人が主導で移籍を進めるケースが多い。選手代理人は選手の夢を叶えるためにヨーロッパ行きを推進し、現地の代理人と手を組む。この結果、「移籍先クラブ」「ヨーロッパの代理人」「日本の代理人」の三者連合が形成され、移籍金が予め決められてしまう。Jクラブには交渉の余地がほとんどなく、「イエス」か「ノー」かの選択しかできない状況になっている。

Q: 欧州クラブは日本人選手の価値をどう見ているのでしょうか?
以前は「日本人選手は技術が高く、よく走るが、サイズが小さく当たりに弱い」という認識だった。しかし最近では、ワールドカップでのスペイン戦、ドイツ戦の活躍を見て認識が変化している。「速い選手がいる」「身長190cmの選手もいる」「1対1が強い選手がいる」と評価が上がっている。
日本人選手は実力に見合った価格で取引されておらず、それがむしろ欧州クラブにとっては「安く獲得できる」という魅力になっている側面もある。
Q: 「セルオン条項」とは何ですか?その重要性は?
セルオン条項とは、選手が2回目の移籍をする際に、元のクラブが差額の一部(約10〜20%)を受け取れる条項のこと。例えば、Jクラブからドイツのクラブに2.8ミリオンユーロで移籍した選手が、その後10.7ミリオンユーロでイングランドのクラブに移籍した場合、その差額の20%をJクラブが受け取れる仕組みだ。
この条項はヨーロッパでは一般的だが、日本では代理人に断られるケースが多い。しかし効果は絶大で、例えば糸井洋樹選手の2回目の移籍(37億円)にセルオン条項があれば、元クラブは約7億円を得られていた可能性がある。
「セルオンは故郷クラブへの最高の恩返しになる」と松永氏は強調する。選手の成長に応じてキャピタルゲインを得られる仕組みで、株式を保有し続けるのに似ている。
Q: 日本のクラブはどう対策すべきでしょうか?
1. クラブの内部体制整備: 国際交渉ができる人材を雇い、GMや強化部長を補佐する交渉人を育成する。日本には国際交渉のできる人材が多くいる。メーカーの海外工場設立経験者や、55歳を超えた商社マンなどの経験を活用すべきだ。
2. 各国の信頼できる代理人の起用: クラブが直接、各国に信頼できる代理人を1人ずつ起用する。最近はヨーロッパのクラブと提携するJクラブも増えており、そこから紹介してもらうことも一つの方法だ。
3. トランスファールームの活用: 世界中のクラブが参加する「トランスファールーム」というプラットフォームを活用する。これはクラブ間の「出会い系サイト」のような役割を果たし、代理人を介さない取引が可能になる。
4. セルオン条項の導入: クラブ側が強く主張し、セルオン条項を標準とする交渉を行う。元クラブへの「恩返し」という文化的側面もアピールできる。

Q: 日本サッカーの将来展望は?
日本の育成力は非常に優秀で、アジアでは断トツ、世界レベルでも高い評価を受けている。この30年間で蓄積された育成ノウハウは貴重な財産だ。
今後の課題は、この育成力をいかにマネタイズするかという点。クラブ経営者の意識改革が重要で、特に新しく参入したメルカリやサイバーエージェントなどのオーナーは理解が早い。またレッドブルの参入も業界に変化をもたらす可能性がある。
松永氏は「育てるために稼ぐ」というコンセプトを持つべきだと主張する。育成には資金が必要であり、その資金を移籍金収入で確保することが、日本サッカーの持続的発展につながる。

Q: まとめるとどうなりますか?
日本の優れた育成力を正当に評価され、適切な移籍金を得るためには、クラブ主導の交渉体制構築、セルオン条項の導入、国際的なネットワーク形成が重要だ。これにより選手のキャリアパスが整い、クラブは安定した収益を得て育成にさらに投資できるサイクルが生まれる。
日本サッカーは素晴らしい財産を持っており、それを活かすビジネス戦略が今、求められている。