
【ゲームの世界を経済分析】エコノミスト×ファイナルファンタジーVII リメイク
エコノミスト・エミン氏が解説!ゲームの街で見る「経済格差」の現実
自他ともに認めるゲーマーでもあるエコノミスト・エミン・ユルマズ氏。PSVitaを7台、PSPを6台所有するほどのコレクターだ。そんな彼がファイナルファンタジー7リメイクの世界を舞台に、スラム街の経済状況やインフレ現象を分析。ゲームの街から現実の経済問題を読み解く。

「上下で分断された街」から見る経済格差

Q: ファイナルファンタジー7の街・ミッドガルについて教えてください
ミッドガルはシンラカンパニーという大企業の本拠地で、この世界最大の商業都市です。特徴的なのは街がプレートと呼ばれる層で上層と下層に分かれていること。上と下で貧富の差が激しく、下層には7番街スラムなどの貧困地域があります。
下層の7番街スラムでは地面も舗装されておらず、資材が置きっぱなしになっていたりと生活しづらい環境です。上層プレートの影響で太陽光も届かず、空も見えません。インフラ整備も行き届いていない状態です。
Q: スラム街の経済はどのように成り立っているのでしょうか?
スラム街では飲食店や屋台が多く見られますが、これは発展途上の経済の特徴です。しかし、サービス業だけでは経済は成り立ちません。
街を観察すると、スーツを着た人々がいます。彼らは上層にあるシンラカンパニーで働き、下層のスラム街に住んでいる人たちです。彼らが上で稼いだお金をスラム街で使うことで、この地域の経済が回っています。これは現実世界で言えば、「港区の会社に勤めていても港区に住めない」状況と似ています。

「ゲーム内の物価」から読み解くインフレ現象
Q: ゲーム内の通貨「ギル」の価値はどのくらいですか?
ゲーム内では回復薬「ポーション」が50ギル、より効果の高い「ハイポーション」が300ギル、MPを回復する「エーテル」が500ギルで販売されています。主人公がゲームをクリアするまでに40時間かけて獲得したギルは約5万ギル。平均すると1時間あたり1,000ギル程度稼ぐ計算になります。
一般の市民が1時間で稼げるのは100〜200ギル程度と考えると、ハイポーションを購入するには3時間分の稼ぎが必要になります。これを日本円に換算すると、時給1,500〜2,000円として、ハイポーションが約6,000円、エーテルが約1万円に相当します。
このような高価格は明らかにインフレが発生している証拠です。物の供給が足りていないか、流通しているお金の量が多すぎて、お金自体の価値が下落している状況と考えられます。これは現実世界でもトルコなどで見られる高インフレ状態に似ています。
スラム街には飲食店が多い
「産業発展の階段」からみる都市の成長可能性
Q: このような街はどうすれば発展できるのでしょうか?
日本の発展過程を例にすると、最初は鉱山事業などの地下資源を売り、そこで得た資本で近代的な製造設備を作ります。まずは繊維産業(アパレル)に進出し、輸出で稼いだお金で電気産業へ、そして自動車産業へと発展していきました。
ミッドガルでも魔晄エネルギーという資源を扱うシンラカンパニーが存在しますが、次の産業へのシフトができていません。資源から得た利益を次の産業に投資し、スラム街の人々に雇用を提供できれば、税収が増え、インフラ整備も進められるはずです。
Q: なぜそのような発展ができないのでしょうか?
現実世界でも同様の問題があります。資源があるのに発展しない国には、汚職や組織の機能不全などの構造的な問題があります。既得権益が強すぎて、新興勢力が潰されてしまうのです。
ゲーム内でもシンラカンパニーがメディアを支配しており、下からの改革(下剋上)が難しい社会構造になっています。一部の人々が利益を得ている状況では、彼らにとって現状を変える必要がないのです。
「層の間の格差」から考える現代社会
Q: シンラカンパニーの社宅地区はどのような場所ですか?
7番街スラムの真上に位置する社宅地区は、シンラカンパニーの上層部社員が住む場所です。スラム街と比べると一目瞭然で、道路が舗装され、空が見え、カラフルな子供のおもちゃが盗まれる心配もなく置かれています。
住宅も現代的で立派なカーペットが敷かれ、家族写真なども飾られています。自動車も一家に一台あり、中流階級の暮らしぶりが垣間見えます。
Q: このような極端な格差は現実世界にもありますか?
GDPが1万ドル程度になると国としてもこのような明確な差が出てきます。例えばトルコでは、大企業が集まる「プラザ」と呼ばれる地区で働く「プラザ人間」と、工場労働者や職のない人々の居住区域との間に大きな格差があります。
日本はこれほど激しい格差はなく、高級住宅街と一般住宅地の差も比較的緩やかです。「スラム」という概念もありません。国際的に見ると、日本は比較的格差の少ない良い国だと言えるでしょう。
Q: シンラカンパニーはどのような企業ですか?
ミッドガルに本社を置く超巨大企業で、星から抽出された魔晄エネルギーを実用化して成長しました。本社は70階建てで、都市基盤整備やマテリア開発、宇宙開発にも手を出しています。正式名称はシンラ電気動力株式会社です。
規模感としては現実世界のサムスンに近いかもしれません。株式会社であれば、投資家として部門ごとの売上や利益率、来期予想、国内外のビジネス比率などをチェックすべき企業でしょう。

ゲームの世界から経済を学ぶと、私たちの社会が抱える格差や発展の障壁について、新たな視点で考えるきっかけになります。
