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ユダヤ人の歴史。なぜ金融・芸術に強いのか?
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2025年4月16日

3000年のユダヤ史から見えてくるユダヤ人の原点や特徴とは何か?なぜ金融や芸術に長けているのか?世界での影響力が強いのか?『ユダヤ人の歴史』の著者で、東京大学教授の鶴見太郎氏に聞いた。 <ゲスト> 鶴見 太郎|東京大学准教授 東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、エル...
ユダヤ人の歴史に隠されたユニークな構造—中間マイノリティとして生き抜いた知恵
「金融業や芸術の才能に優れた人々」「歴史の中で迫害された哀れな人々」—ユダヤ人に対するこのようなステレオタイプはどのように形成されたのか。『ユダヤ人の歴史』の著者で東京大学准教授の鶴見太郎氏が、これまであまり語られてこなかったユダヤ人の歴史的位置づけと社会構造について解説する。

Q: なぜユダヤ人は歴史的に迫害の対象になりやすかったのですか?
ユダヤ人が「中間マイノリティ」という特殊な立場に置かれていたことが大きな理由です。多くの社会において、上層に支配者階級、下層に農民が存在するなかで、ユダヤ人はその中間に位置していました。税金の徴収や商業活動など、支配層と農民をつなぐ役割を担っていたのです。
経済が安定している時期はこの構造が維持されますが、社会が不安定になると、もともと少数派で「丸腰」であるユダヤ人は格好の攻撃対象になりました。支配者が弱体化すると守ってくれる存在がいなくなり、さらに弱い立場に追い込まれたのです。

Q: 「マージナルマン」という概念はユダヤ人の特徴をどう説明していますか?
マージナルマンとは、2つの世界をまたがるような存在を指します。ユダヤ人は様々な社会で、ユダヤ共同体とホスト社会の間を行き来する生活を送っていました。
この立場は、両方の世界を見ることで豊かな知識を得られる一方、どちらの世界にも完全には属さない曖昧さも持ちます。この「どっちつかず」の状態が、逆説的に普遍的な視点を持つことを可能にし、文明社会の発展に貢献してきました。
Q: なぜユダヤ人は金融業に多く携わるようになったのですか?
金融業において最も重要なのは「信頼」です。ユダヤ人社会では読み書き能力が重視され、誰が信頼できるか、約束を破った人は誰かを記録する習慣がありました。かつて識字率が低かった時代では、これは大きなアドバンテージでした。
また、ユダヤ人は各地に分散して住んでいたため、そのネットワークを活かして情報交換や資金融通がしやすい環境がありました。さらに、当時の社会的制約から他の職業に就けないこともあり、必然的に金融業に活路を見出していったのです。

Q: ユダヤ教とキリスト教の最大の違いは何ですか?
ユダヤ教は「実践」を重視し、キリスト教は「信仰」「内面」を重視します。これが最大の違いです。
ユダヤ教では聖書で神が命じていることを実践することが重要で、内面の思いよりも行動が求められます。一方、キリスト教は実践だけを重視することを「形式主義」と批判し、内面の信仰こそが重要だと考えます。
また、ユダヤ教はメンバーシップが限定的で、ユダヤ人の母親から生まれるか、厳しい勉強を経て改宗するかでしかユダヤ人になれません。対してキリスト教は信仰告白だけで誰でも入信できる開放性を持っています。
Q: アメリカのユダヤ人とイスラエルのユダヤ人はどのように異なりますか?
近年、両者の間には感覚の乖離が生じています。アメリカのユダヤ人は民主党支持者が多く、リベラルな価値観を持つ傾向があります。最近の大統領選でも8割以上がハリスに投票したといわれています。
一方、イスラエルでは保守的な価値観を持つ人々が増えています。建国当初は社会主義的な思想が強かったものの、1970年代以降は自由主義的な政党が勢力を伸ばし、伝統的なユダヤ教の価値観を重視する傾向が強まっています。
特に現在のガザ紛争について、アメリカのユダヤ人はネタニヤフ政権のやり方に疑問を持つ人が増えている一方、イスラエルでは安全保障を最優先する考え方が強まっています。
Q: 読み書き能力の重視はユダヤ人の特徴ですか?
歴史的に見て、ユダヤ人は読み書きを特に重視してきました。これはユダヤ教が聖書やタルムードといった経典を読んで理解することを重視する宗教だったことに由来します。
中世頃まで、多くの社会では読み書きはあまり重視されておらず、特に農業中心の生活では不要と考えられていました。しかしユダヤ人にとって、経典を読むことは宗教的義務であり、そのため読み書き能力が発達したのです。
また、子どもの頃から経典に触れる習慣があるため、「机に向かって勉強する」という行為自体が習慣化されており、これが後の学問的成功にもつながったと考えられます。
Q: ユダヤ人の教育方法の特徴は何ですか?
ユダヤ人の教育では「議論すること」が重視されます。東アジア的な教育が知識の詰め込みや暗記に重点を置くのに対し、ユダヤ的な教育は常に議論し、考え方をぶつけ合うことを奨励します。
単に「こういう解釈だから覚えろ」と押し付けるのではなく、様々な解釈について議論し、考えを深めていくプロセスが大切にされています。この議論重視の姿勢が、創造的思考や問題解決能力の育成につながっていると考えられます。
Q: ユダヤ教の実践主義の具体例はありますか?
例えば、イスラエルのマクドナルドではチーズバーガーが提供されていません。これはユダヤ教の食物規定(カシュルート)で「乳製品と肉を一緒に食べてはならない」という戒律があるためです。
イスラエルの人々の中には、宗教的な戒律をそこまで厳密に守らない人も増えていますが、飲食店は規定を守る人に合わせる傾向があります。このように日常生活の細部にまで及ぶ実践的な戒律を守ることが、ユダヤ教の特徴の一つです。
Q: イスラエル建国時の思想的背景は何ですか?
イスラエルの建国を主導したのは「社会主義シオニズム」という思想でした。これは社会主義の影響を強く受け、男女平等や宗教からの距離を重視する考え方でした。
建国当初から1970年代頃までは、社会主義系の政党が強い影響力を持っていましたが、その後は自由主義的な政党が力を伸ばしてきました。現在は伝統的なユダヤ教の価値観を重視する傾向が強まり、世俗的な層と宗教的な層の間に分断が生じつつあります。
特に極端な例として「キブツ」という共同体がありました。これは家族という概念も解体し、子どもは集団で育てるという革命的な試みでしたが、現在では伝統回帰の流れの中でその数は減少しています。
