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トランプ関税は最終的に円安を加速させる
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2025年4月4日

トランプ関税発表後、急速に進行する円高。このトレンドは今後も続くのか?中長期的に、トランプ関税は為替にどのような影響を与えるのか?為替ストラテジストの佐々木融氏に聞いた。
トランプ関税により円高が加速、しかし長期的には円安トレンド継続か
世界を驚かせたトランプ前大統領の全面的な関税発表。ドル円相場は急激に円高方向へと振れたが、これは一時的な現象なのか、それとも新たなトレンドの始まりなのか。福岡フィナンシャルグループのチーフストラテジスト佐々木徹氏にトランプ関税と為替の影響について話を聞いた。

トランプ関税発表後の円高は「ドル売り」の側面が強い
Q: トランプ関税が発表されてから一気に円高が進み、146〜147円くらいになっていますが、これは何が起きているのでしょうか?
トランプ前大統領が総合関税の税率を発表し、それが予想よりも高かったことから、リスクオフの動きで円が買われる流れが続いています。ただし、147円台あたりからは円買いというよりむしろドル売りの性質が強くなっており、ドルが対ユーロや対ポンドなど主要通貨全般に対して安くなっているのが現状です。
驚きの関税率設定—日本への46%に根拠はあるのか?
Q: トランプ前大統領が発表した関税率はマーケットの予想からしても非常に大きかったということですが、その詳細は?
トランプ前大統領が発表した関税率によると、日本に対しては46%という高い数字が示されています。この数字の根拠として「為替操作や貿易障壁を含む」と説明されていますが、実際には明確な根拠はないようです。報道によると、アメリカの赤字額÷輸入額で算出されているのではないかという分析もありますが、あまり合理的な計算方法とは言えません。
これに対してトランプ前大統領は24%の関税を課すとしており、これでも市場予想をはるかに上回る高い水準となります。通常、総合関税は輸入品に対する既存の関税と同程度のものが想定されるため、この数字はかなり高いと言わざるを得ません。

日本の対米貿易黒字の実態と交渉の方向性
Q: 日本はアメリカに対してどのような貿易関係にあるのでしょうか?
日本は2024年の貿易収支で全体としては5.5兆円の赤字でしたが、対米貿易では8.6兆円の黒字を出しています。しかもこの黒字の大部分は自動車と自動車部品で、自動車の輸出が6兆円、自動車部品の輸出が1.2兆円であるのに対し、アメリカからの自動車・部品の輸入は2000億円程度しかありません。つまり、8.6兆円の対米貿易黒字のうち約7兆円が自動車関連なのです。
このため、交渉の焦点はまずこの自動車分野に当たることが予想されます。アメリカにとって最も気になる分野だからです。関税率を下げてもらうための交渉では、日本がアメリカでの自動車生産を増やすなどの対応が考えられますが、それは日本の貿易赤字を膨らませることになり、円安要因となります。

対米直接投資の増加約束も円安要因に
Q: 石破大臣がトランプ氏と会談した際の対外直接投資の話はどうなっているのでしょうか?
最近、石破茂氏がトランプ氏と会談した際に、対外直接投資を大きくすることを約束したとされています。実はすでに日本のアメリカへの対外直接投資は増加傾向にあり、2023年末の時点で7800億ドルほどありますが、これを1兆ドルに増やすという約束をしています。
これを今後約5年間で達成するとなると、毎年約6兆円の投資が必要になります。その一部としてアラスカの液化天然ガスプロジェクト(総額約6兆円)への投資などが考えられますが、いずれにしてもこうした投資は円売りを伴うことになるため、これも円安要因となります。
金融政策の方向性にも影響—日銀の利上げは困難に
Q: このトランプ関税によって日銀の金融政策にも影響がありそうですか?
トランプ関税による混乱は日銀の金利引き上げをさらに難しくします。マーケットはこれまで年末までにもう1回の0.25%の利上げを織り込んでいましたが、現時点ではその見込みも薄れつつあります。7月に参議院選挙もある中で、その前後の利上げは難しいでしょう。
一方、アメリカではトランプ関税によってインフレが高まる可能性があり、これが利下げを難しくする要因となります。現在マーケットは来年3月までに4回ほどの利下げを織り込んでいますが、トランプ関税により消費者物価指数(CPI)が2%ほど押し上げられるとの見方もあります。現在でも2〜3%台のインフレ率が5%近くまで上がる可能性があれば、簡単には利下げできなくなります。
結果として日米の金利差が拡大することになり、これも円安要因となります。
投機筋の「円ロング」ポジションは大きな転換点に
Q: 当期的(投機的)ポジションはどうなっていますか?
現在、投機筋は過去最高水準に近い円の買い持ち(ロングポジション)を保有しています。これは円高を期待してのポジションですが、これだけの規模のポジションはいずれ巻き戻される可能性が高いです。
特に注目すべきは、円ロングポジションを持つためには日米の金利差を毎日支払う必要があるということです。つまり、維持コストが高く、長期間持ち続けるのが難しいポジションなのです。仮に円高がある程度で止まってしまうと、投機筋は利益確定の売りに出る可能性が高くなります。

Q: 今後のトレンドを時系列で考えるとどうなりますか?
短期的には、トランプ前大統領がこれだけ大きな関税率を提示した以上、すぐに撤回するとは考えづらく、ドル安円高の余地がまだ少しあるでしょう。140円程度まで円高が進む可能性も考えておくべきです。
しかし、その後に反転した場合の円安方向への動きも早いと予想されます。年末までに170円に達するかどうかは不透明ですが、反発すれば再び150円台、160円台へと向かう可能性が高いでしょう。
長期的には、トランプ関税問題を解決するために日本が提案する対策(アメリカでの生産増加、対米投資増加など)はどれも円売りを伴うものになるため、構造的な円安要因はむしろ強まる可能性があります。日本のファンダメンタルズ自体が悪化していく中で、一度落ち着いた後の円安トレンドは過去よりも強まる可能性すらあります。
個人投資家へのアドバイス—不透明な局面でも時間分散投資を
Q: 個人投資家へのアドバイスはありますか?
現状は非常に不透明な状況ですが、投資は時間を分散して少しずつ行うことが重要です。下落したところで少しずつ投資していき、相場が戻るタイミングに備えるのが賢明です。
トランプ前大統領も自分で述べているように、これはアメリカ経済を損なうためではなく、最終的にはアメリカ経済を良くするために行っている政策です。そのため、どこかのタイミングで反発してくるでしょう。トランプ政権の態度が変わったあたりから相場は戻る可能性が高いので、その機会を逃さないように徐々に投資していくことを推奨します。
そして、トランプ関税が中長期的に円安を加速させる方向に働くことはほぼ間違いないため、長期的な視点では円安を前提とした投資戦略も検討する必要があるでしょう。