PIVOT TALK MONEY
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2025年4月4日

世界に激震をもたらしたトランプ関税。その狙いは何か?24%の関税が発表された日本はどう対応すべきか?交渉で関税を下げることは可能なのか?経済アナリストのジョセフ・クラフト氏に聞いた。 <ゲスト> ジョセフ・クラフト|経済アナリスト 1986年カリフォルニア大学バークレイ校卒業後、モルガン・スタンレ...
イーロンマスクのトランプ政権内での役割に変化の兆しが見えてきた。大胆な政府削減策を推し進めてきたマスクだが、支持率低下と選挙での敗北を受け、政権から距離を置く可能性が高まっている。トランプ政権とマスクの関係は今後どうなるのか、経済アナリストのジョセフ・クラフト氏に聞いた。

政府効率化の取り組み自体には異論はないものの、そのやり方があまりにも乱暴だった。トランプ政権になってから2025年に入った3ヶ月間で連邦政府の解雇人数が4万5000人に達し、自主退職や引退も含めると10万人近くになると言われている。このような急激な人員削減によって政府機関の機能が大きく低下するのではないかという懸念が広がっている。

可能だ。イーロンマスクがTwitter(現X)を買収した際の例がある。Twitterの従業員を8割削減したが、企業価値は下がらなかった。買収金額が440億ドル(約6.5兆円)で、後に自身の会社XAIに売却した価値が450億ドルだった。つまり、8割の人員削減を成し遂げても、企業価値は維持された大成功と言える。
このモデルをそのまま政府の無駄削減に適用しているが、マスクの右腕となるスティーブ・デイビス氏が重要な役割を果たしている。Twitterの人員削減を任され、今回は政府側に入って同じことをやっている。民間企業で成功したからといって、政府機関でも成功するとは限らないが、これは大きな実験であり、成功するかどうかで今後のイーロンの評価が決まる。

マスクの行動原理となっているのは「第一原理思考」だ。複雑な問題を最も基本的な要素に分解して物事を見直し、核となる原理や真実を特定する。そして新しいソリューションをゼロから考え直し、先入観や既存の枠組みを捨てて新たな視点と革新的な対処法を創出する方法論だ。
具体例としてSpaceXのロケットエンジン「ラプター」の進化が挙げられる。初期のラプター1は非常に複雑だったが、ラプター2、ラプター3と進化するにつれてシンプルになった。複雑なものほど故障しやすく、コストもかかる。シンプル化することで効率も成功率も上がり、コストも下がる。マスクはロケットで成し遂げたこの成功モデルをTwitterや政府機関に適用しようとしている。

実はこの第一原理思考はAppleのスティーブ・ジョブズも推奨していて、NetflixやAmazonのジェフ・ベゾスも賛同している。マスク独自のものではない。
まず政治的に見ると、解雇された4万5000人、あるいは10万人とも言われる政府職員は有権者でもある。こうした人たちやその家族、友人の票が離れるリスクがある。また、国民からすると大量の人員削減によって政府機関のサービスや機能が低下することへの不安もある。
特に衝撃的だったのは教育省の廃止案だ。これは法廷で争われて一時的に止められているが、トランプ政権は教育省を廃止して州レベルに権限を移そうとしている。日本で言えば文部科学省を無くすようなもので、教育レベルが下がるのではないかという不安が広がっている。
本来なら綿密な分析をして無駄があることを示し、段階的なコスト削減計画を立てれば慌てることもないが、いきなり機関を廃止したり大量解雇したりするやり方があまりにも乱暴だと批判されている。
転機となったのはウィスコンシン州の最高裁判事選挙だ。通常は注目されない州レベルの裁判官選挙だが、ウィスコンシン州が重要な激戦州であることから全米が注目した。州の最高裁判事が左派優勢(4対3)だったところを保守派にひっくり返すチャンスだったのだ。
そこにイーロンマスクが自ら35億円もの資金を投じて参戦した。これにより選挙の構図が「左派対保守」から「左派対イーロンマスク」に変わった。彼は有権者に100万ドル(約1.5億円)の献金をばらまくなどの策を取ったが、結果は大接戦の予想を覆し、左派候補が10%の差をつけて勝利した。
この敗北を受けて、トランプ政権内ではイーロンマスクが選挙の足を引っ張っているのではないかという雰囲気が高まっている。テスラ株も下落し、批判も増える中で、政府特別職員としての期限も迫っていることから、近いうちに政権を離れる可能性が高い。
決裂したわけではない。形としては本人が辞めるのが一番綺麗な形だろう。トランプ政権としては、これ以上イーロンマスクを抱えてもプラスにならないと判断していると思われる。
ただし、政権内の役割を離れても、共和党議員やトランプ自身はマスクの献金力を必要としている。そのため「政権内」には入らなくても「政権外」から協力を求めていくことになるだろう。
私はトランプがイーロンマスクをうまく使ったと思う。これまでこれほど大胆な政府削減策は前例がなかった。マスクが早い段階でそれを実行し、多額の献金もしてくれた。従来の政治の常識を壊す役割を果たしてくれた。
ただ、中間選挙が近づくにつれて、このやり方をこのまま続けるのは難しいと判断したのだろう。トランプが最終的に目指しているのは中間選挙での勝利だ。関税政策も含めて、夏を過ぎてから秋から年末にかけて、より現実的な政策に修正していくと思われる。
特に国民が恐れているのは年金基金や医療保険に手がつけられることだ。アメリカの財政赤字の大半は医療保険関連なので、本格的なコスト削減をするなら医療保険や年金を削減せざるを得ない。そこに踏み込む恐れがある。
また、民間企業のCEOがこれほど政府に影響力を持つことへのアレルギー反応も強い。トランプが主導してマスクが助言するだけなら良かったが、マスクが閣僚会議にも出席するなど、「イーロンマスク大統領にトランプがついている」というイメージがついてしまい、反感が高まった。
選挙で選ばれていない人があまりに前に出すぎたという印象があり、一歩引いて政権外から協力する形の方が良いのかもしれない。
関税自体が直接支持率を下げるわけではないが、関税によってインフレが進めば支持率に影響する。車や食品の価格が上がれば「トランプ関税のせい」という批判が強まる。
実際、アメリカでは卵の価格が倍になるなど、すでに物価上昇が問題になっている。そのためウィスコンシン州選挙の結果を受けて、トランプ政権内でも「関税政策はやりすぎると危ない」という雰囲気が漂っている。どこかの段階で関税という「振りかざした刀」を下げないとまずいという認識が閣僚内にはすでに出ている。
長期的には日本株は上昇すると思う。特にNISAなどで積立投資をしている人にとっては、今は安く買える良い状況だ。短期的にはまだ乱高下や下落の可能性もあるが、年末までに関税が軽減されれば来年の見通しは改善するだろう。
特に日本株は関税の影響で大きく下げているため、改善余地は大きい。バリュエーションで見ても日本株の方がアメリカ株より割安だ。ただし、これは来年アメリカ経済が不景気に陥らないという前提での見方だ。
プラザ合意のような長期的影響を持つかどうかは、関税がどれだけ続くかによる。3ヶ月から半年で大部分の関税が引き下げられるなら、プラザ合意ほどの影響にはならないだろう。悪材料はほぼ出尽くした感があり、現状からさらに大きな下落には至らないと思う。
しかし、戦後続いてきた自由貿易体制は「終わった」と言える。20世紀の自由貿易概念はもう終わりであり、今後は一定程度の制裁や介入、管理のもとで貿易が行われることになる。WTOの役割も終わったと言えるだろう。