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地方創生の要は大学だ。カレッジタウンを創れ
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2025年4月1日

「地方創生、これが答えだ」で東京一極集中の異常さを指摘した雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏。その主張に共鳴した東京科学大学の柳瀬博一教授が、地方創生が失敗する理由と、あるべき地方創生のあり方を語る。 <ゲスト> 柳瀬博一|東京科学大学教授 1964年生まれ。慶應義塾大学卒業後、日経マグロウヒル社(...
「活性化のカギは大学の"参勤交代"にあり?」地方創生の新アイデア
地方創生や大学を中心とした街づくりという課題に、ユニークな視点から切り込む対談が行われた。東京科学大学教授の柳瀬博一氏と雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏が、日本の大学と街の関係性について熱く語り合った。「大学自体がプラットフォームで、そこにいる学生たちのコンテンツで温泉街にして世界中の言葉が全部通じるっていう」という発想から始まった議論は、大学を核にした地域活性化の可能性へと広がっていく。

Q: 日本の大学と街の関係性にはどんな問題がある?
日本の大学、特に地方の国立大学は多くが町の中心から郊外に移転している。九州大学、広島大学、静岡大学などはいずれも駅から離れた場所にある。九州大学の場合、最寄り駅から6キロほど離れており、バスで20〜30分かかる。アメ
リカの大学なら周囲に必ずキャンパスタウンができて、大学生と町が一体となった魅力的なマーケットが形成されるが、日本ではそうした有機的な繋がりができていない。
優秀な学生や世界的な教授が集まる場所なのに、地元のカルチャーや経済に寄与できない環境になってしまっている。移動手段が物理的にバスしかなく、「点から点の移動だけで間が街にならない」という課題がある。
Q: 慶応SFCはどのような立地状況だった?
佐々木氏が卒業した慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)は「立地最悪」だった。湘南と言われながら、海からは遠く、駅からバスで20分ほどかかる場所にある。キャンパスに行くまでで疲れてしまうほどで、文化があまり育たなかった。面白い人は多いのに、もっと可能性があったはずだという。駅前にはお店があったが、駅とキャンパスの間にはほとんど店がない状況だった。
Q: なぜ日本にはキャンパスタウンの概念が根付かないのか?
日本では大学誘致までは熱心に行うが、その後の活用については考えが及ばない。大学に通う学生や教員を「いい意味で使おう」という発想になりにくい。
成功例としては早稲田大学が挙げられるが、それは大学の取り組みというより、立地的な条件で結果としてキャンパスと街が混ざっているだけだ。同じ早稲田大学でも狭山キャンパスはそうなっていない。
柳瀬教授は自身が関わる東京大学鈴鹿キャンパス(田園都市線にあり、南町田グランベリーモールの一つ手前)の例も挙げた。駅には「ローソンが一軒あるだけ」で、飲み屋も一軒もないという。地元の人は自動車で隣のグランベリーモールに行くため、街としての機能が育っていない。

Q: 大学を核にした街づくりの成功例はある?
立命館アジア太平洋大学(APU)の例が挙げられた。別府の郊外、330メートルの山の頂上という一見不便な場所にありながら、成功している。約6000人の学生のうち半分の3000人が留学生で、常時90カ国からの留学生がいる。
APUの成功の鍵は「学生たちが街に溶け込もうとした」ことにある。学生たちが積極的に温泉街でアルバイトをし、各国のサッカーリーグ戦を模した「ワールドカップ」を開催したり、毎月異なる国の文化をフィーチャーしたイベントを地元の人と一緒に行うなど、様々な取り組みを行っている。
「大学自体がプラットフォームで、そこにいる学生たちがコンテンツとなり、自分たちもメディアコンテンツとしてアウトプットして、それを地元の人たちが受け入れる」というモデルが機能した結果、別府は「世界中の言葉が通じるインバウンド最強の都市」になった。

Q: 大学生の移動手段について、どのような提案がある?
地方の大学で「バスで20分以上かかる時は原則自動車通学あり」にするべきだという提案がなされた。ただし、条件として「必ず学生は自動車で来る時は最低でも2人ないし3人相乗りをする」というルールを設ける。これにより必要な駐車場の数を減らせるだけでなく、学生同士が友達になるきっかけも生まれる。
「車で案外近いね」という学生同士の繋がりができ、学生たちがそのエリアでアルバイトをしたり、ボランティアをしたり、起業するチャンスも生まれる。地元にとっては、学生たちが地域で働いたり教育的・ボランティア的に貢献してくれれば、新しい文化と産業が生まれる可能性がある。
何より重要なのは、学生が街を楽しいと感じ、その場所に愛着が生まれることだ。SFCの例では「学校に愛着があるが、場所には全く愛着がない」という状況が生じており、これはもったいない。大学は「バーチャルなものではなく」実際の場所にあるからこそ、その場所に愛着を持てることが重要だ。

Q: 街づくりの成功モデルになりそうな例はある?
三井不動産が面で開発した「柏の葉」が面白い例として挙げられた。柏の葉は「鉄道と自動車のハイブリッドタウン」になっており、つくばエクスプレスの駅があり、駅の下に商店街を作り、ららぽーとが直結している。ららぽーとは巨大な自動車駐車場を設けているが、駅前からTSUTAYAのあるエリアまでは完全歩行者専用スペースで、車が入れないため安心して子供を遊ばせることができる。
その奥には東大、千葉大があり、三井不動産がラグビー校も誘致している。「商業施設と文化施設と駅と自動車と大学や病院が一つの面になっている」このパターンは、地方なら土地はいくらでも確保できるはずだ。
Q: 地方創生の新しいアイデアとして「介護のパートタイムUターン」とは?
現在50代、60代の世代は「2人に1人以上は親が何らかの形で軽く介護しないといけない」状況にある。東京在住の柳瀬教授も月に1回は浜松に帰り、買い物の手伝いなどをしている。こうした「介護のパートタイムUターン」は現実には非常に多い。
この現象をポジティブに捉え、地方にいる親を介護するために月に1回戻る際に、地元で働いた場合に税額控除になるような制度を提案。「ワークするふるさと納税」という発想だ。
東京や大阪で働いている人が地元に戻った際、単に買い物や介護をするだけでなく、その地域のために仕事をして、自身も収入を得られるようにする。都会で培った人脈やノウハウを地方に還元する「人間のふるさと納税」とも言える取り組みだ。
100人に1人、1000人に1人でも「こっちの方が面白い」と思って本当のUターンで戻ってくる人が出てくれば、地域に新たな風が吹く。食材の良さに魅せられて地方に素晴らしいレストランを開くケースのように、様々な分野で可能性がある。
地元の小中学校時代の友人が集まる拠点になれば、中高年になった時の交流の場にもなる。自分の街を何とかしたいという自発的な思いと、ふるさとでの人間関係が結びついて、新たな地域活性化の形が生まれる可能性がある。