
子どもが勉強する問い 「どうありたい?」or「何になりたい?」
6,325回視聴
2025年3月29日
東大生を数多く輩出する奈良県の超進学校『西大和学園』。名物国語教師の辻孝宗先生から自発的に学ぶ子どもへの接し方を高松智史が聞いた。 (エグゼクティブサマリーのリンクは最下部記載) <ゲスト> 辻孝宗|西大和学園中学校 高等学校教諭 岐阜県出身。東大古文講座を長年担し、多数の東大合格者を輩出。 10...
インタビューガイドはこちら(エグゼクティブサマリーのリンクは最下部記載)
西大和学園はなぜ東大合格者数で躍進できたのか?教育現場の戦略を解説
西大和学園の躍進の理由は偶然ではない。長年にわたる教育戦略の結果だ。「何になりたいか」ではなく「どう社会と関わりたいか」を生徒に問いかけ、挑戦する文化を醸成してきた西大和学園。そこには明確な戦略と柔軟な教育方針があった。

Q. 西大和学園の躍進は偶然ですか?
西大和学園の東大合格者数の増加は明らかに偶然ではない。以前は「東京大学と滑り止めの西山」という進路選択が多かったが、現在では「東京大学と三協、四協、西山」というパターンに変化した。これは自然と起こる変化ではなく、戦略的な取り組みの結果だ。
西大和学園では教員たちが常に変革を追求する文化があり、トップマネジメントが「変えよう、変えよう」という姿勢を持っている。さらに「東の早慶、西の大和を目指す」といった大胆な目標を掲げて挑戦し続けている。

Q. 西大和学園の進路指導はどのように行われていますか?
西大和学園の進路指導では「何になりたいか」という質問は絶対にしない。これは現代の教育において時代遅れだと考えているからだ。代わりに「どうありたいか」「どう社会と関わっていきたいか」を高校1年生、2年生のうちから問いかけ続ける。
生徒が自分の望む姿を追求した結果、その実現に最適な選択肢として東京大学が浮かび上がってくれば、学校は全力でサポートする。学校の方針として「東大の力を全員につけてやる。その中で行きたいところを選ぶのは君たち」というアプローチをとっている。

Q. 生徒一人ひとりの挑戦をどのようにサポートしていますか?
西大和学園では、生徒の挑戦を促すために教員自身も挑戦している。例えば、英語教員の高崎先生は海外大学進学プロジェクトを立ち上げた。学校からの資金援助がなくても「勝手にやる」と言い、やりたい教員を集めてプロジェクトを発足させた。
興味深いのは、このプロジェクトへの参加は審査制で、校長でさえも審査を通らなければ参加できないという点だ。教科の枠を超えて、様々な教員が自分の専門知識を活かして生徒の挑戦をサポートしている。
Q. 西大和学園の教育アプローチはどのような特徴がありますか?
西大和学園の教育は「ゲーム化」されていると表現できる。東大合格というゴールに向かって、明確な戦略を提供している。これはRPGゲームのように、経験を積んでレベルアップしていく構造に似ている。
しかし重要なのは、東大合格自体が目的ではないということだ。この「ゲーム」を通じて生徒たちは「環境と戦略が整えば勝てる」という体験を得る。これは将来、別の課題に直面した時に活かせる貴重な経験となる。
Q. 西大和学園は東大合格者数以外に何を重視していますか?
西大和学園が最も重視しているのは「挑戦」だ。単に東京大学の合格者数を増やすことが目的ではなく、生徒たちが高い目標に挑戦する姿勢を身につけることを重視している。
東大合格という目標を達成した今、次の挑戦として海外大学進学を視野に入れている。これは単に「より難しいゴール」を設定するだけでなく、「あなたは何者か」「あなたがクラスに貢献できることは何か」といった、より深い問いを生徒に投げかけることになる。
Q. 生徒たちはどのようにして挑戦する姿勢を身につけていますか?
生徒たちは「努力量保存の法則」のような考え方を身につけている。これは、勉強を頑張った後にサボりたくなり、サボりすぎると勉強したくなるという、行ったり来たりする振り子のような状態を表している。
重要なのは、この振り子の中心線がどこにあるかだ。西大和学園の環境は、この中心線を高いレベルに設定している。生徒たちはこの環境の中で互いに刺激し合い、高め合いながら挑戦する姿勢を身につけていく。
Q. 西大和学園の教育で最も大切にしていることは何ですか?
西大和学園が最も大切にしているのは、生徒一人ひとりの価値観に寄り添うことだ。「こちらが正しい」「世間一般にはこちらの方が正しい」といった押し付けは価値がないと考えている。
生徒たちには様々な選択肢(ゲーム)を提示し、自分が選んだゲームで全力を尽くすことを奨励している。東大合格という「ゲーム」を選ぶ生徒もいれば、別の「ゲーム」を選ぶ生徒もいる。大切なのは、自分が選んだ「ゲーム」の中で明確な戦略を持って挑戦することだ。
Q. 国語の観点から、どのように思考力を育てていますか?
国語の授業では「事実があって、解釈があって、心情が動いて、行動になる」という枠組みで思考力を育てている。事実と解釈を分離して考えることの重要性を教えている。
例えば、子どもたちの喧嘩では同じ事実(叩いた)でも解釈が異なる(「バカにされたと思って」vs「遊ぼうと思って」)ことで争いが生じる。事実は変えられなくても、解釈を変えることで心情や行動を変えられることを学ぶ。
これはビジネスパーソンにも役立つ考え方だ。マイナスな出来事も、解釈を変えることでワクワクに変わる可能性がある。「これは何か大きなことを成し遂げるための足がかりになっているはず」と捉えれば、世界の見え方が変わる。

Q. 読書や文章理解についてどのようなアドバイスがありますか?
現代文の読解では、文章をどのような切り口で切るかという「考え方」を身につけることが重要だ。哲学的、科学的など様々な方向から書かれた文章に触れることで、新しい文章を読む際の「武器」が増えていく。
古文漢文などは、全体を通して読むより、内容を理解した上で特定の部分を深く読み込むアプローチが効果的だ。これはミュージカルを見る時と似ている。内容を知った上で表現を味わうことで、より深い理解と感動が得られる。
東大生の読書法では、まず目次で全体像を把握し、推測しながら読み進め、特に関心のある部分を詳しく読むという効率的な方法が実践されている。これは中学高校で学んでいたはずの読み方を、実生活で活かす例だ。
