PIVOT TALK BUSINESS
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2025年3月27日

“戦略”と聞くと経営などを思い浮かべがちである。しかしマーケティングのプロ、音部大輔氏は人生における戦略の重要性を語る。戦略とはどのように立てるのか?そのスキルを聞いた。
戦略の実行段階で新しいアイデアに気づくことは珍しくない。しかし、組織はすでに動き始めており、資源も消費されている。このタイミングでの方向転換は何をもたらすのか。また、戦略を成功させる企業の秘訣とは何か。マーケティングのプロ、音部大輔氏の解説から、戦略実行の罠と成功要因を探る。

戦略を作り、合意し、各メンバーが自分ごと化して走り始めた後に、より良いアイデアに気づくことがあります。この時点では、新商品の投入まで時間があると感じても、実際には組織が動き始め、準備が進み、資源の消費がすでに始まっています。
戦略を立てていた時点と比べて、資源状況が変わっていることを理解する必要があります。たとえ新商品の導入まで1年あるとしても、1年3ヶ月前とは状況が異なるのです。
新しいアイデアが出てくるということは、3ヶ月前の状況と比較すると、おそらく新しい方向性の方が正しいといえます。しかし、決断する前に考慮すべき点があります。
まず、資源量が減っていること、そして組織に戦略を展開した後に方向転換すると、メンバーの意識が下がる可能性があります。「右に進む」と言っていたのに途中から「左に進む」と変更することで、組織の士気が低下するのです。
人間の意識が下がると、使える資源量も減少します。さらに、すでに投下した資源も失われています。

1. 目減りした資源の状態
2. 組織の意識低下による影響
3. 新方向の成功確率
これらの要素を考慮した上で、新方向の方が高い確率で成功しそうなら、方向転換は選択肢となります。つまり、「資源×有効確率」で判断するのです。
実際の例として、PIVOTというメディアの方向転換があります。当初は動画と記事のメディアとして計画されていましたが、途中で「動画に特化すべき」と判断し、記事部門を整理しました。
このケースでは、資源の優先確率を正確に計算し、方向転換が成功につながったと考えられます。しかし、この判断が間違っていた場合、PIVOTの士気も下がり、資源の移行もうまくいかなかった可能性があります。
戦略面で強い企業は、目的が明確で、その目的に基づいて行動できています。さらに、目的を再解釈する能力もあり、戦略を作成し実行できます。
しかし、特に重要なのは「振り返り」です。多くの企業では振り返りが不十分です。単に「売上目標はいくらだったのに対していくらでした」「シェアはこうでした」「利益はこうでした」という結果報告だけで終わってしまいます。
真の振り返りは、「2年前に戻れたら何をどう変えるか」を考えることです。同じことをするということはないはずなので、より良い成果を得るために、何をどう変えるべきかを明確にできる能力が強いチームの特徴です。

戦略がうまくいかない時、目的が悪かったとは認めたくないものです。その場合、問題は再解釈か重要資源のいずれかを読み間違えていることにあります。
壁に当たったときは、この2つのポイント—目的の再解釈と重要資源の見極め—に立ち返ることが重要です。どちらかが間違っているということであり、それを正すことで戦略の修正が可能になります。
選択と集中の重要性については多くの人が認識していますが、なぜ必要なのかという説明はあまり聞かれません。
この概念を理解するために、「ダブルパンチ症候群」という例が参考になります。右のパンチが70kg、左手が30kgの力を出せるとします。両手で打てば100kgの力になるかというと、そうはなりません。ボクシング経験がなくても、直感的にそれは無理だとわかるでしょう。
ビジネスでも同様です。新商品Aを出せば70億円、新商品Bを出せば30億円の売上が見込めるとします。しかし、「両方打てば100億円になるはず」と考えるマネジメントは少なくありません。「無理ではないか」と指摘すると、「やる気が足りない」と返されることもあります。
これは戦略的観点から見ると、目的が曖昧な状態であるか、資源の限界が見通せていないことが原因です。重要なのは、複数のプロジェクトで重複して使用される資源(工場や人材など)を認識することです。
この重複資源を明確にすることで、「両方のプロジェクトは無理です」ではなく、「この重複している資源を追加してくれれば両方可能です」という建設的な提案ができるようになります。そうすれば、マネジメントも「追加するならどちらか一方でいい」と判断するかもしれませんし、「追加して両方やろう」と決断するかもしれません。いずれにしても、非現実的な要求ではなく、具体的な判断基準に基づいた議論が可能になります。
最近話題になるセブンイレブンのMBO(経営陣による買収)の話は、戦略の選択と集中に関する重要な示唆を含んでいます。セブンイレブンはコンビニだけでなく、銀行業やスーパー事業など多様な事業を展開していますが、一部はあまり成功していないにも関わらず投資が続いています。
アクティビストたちは「コンビニ事業に集中すべき」と主張しています。このような外部からの指摘を受ける前に、社内で適切な戦略を立て、選択と集中を実践できるかどうかが、日本企業の将来を左右する重要な課題です。
選択と集中ができない理由の一つは、成功の描写があいまいなことかもしれません。2030年の売上目標が設定されていても、それがどういう意味を持つのか、2040年や2050年にどうありたいのかという長期的視点が欠けていることがあります。
また、現状の延長線上では達成したい売上規模に到達できないと感じるため、様々な事業に手を出してしまう傾向があります。好意的に解釈すれば、これは「探索」の過程であり、将来の可能性を探るためのデータポイントを増やしているとも考えられます。
この探索プロセスを戦略的に行い、一定期間後には拡張エリアを絞り込むという明確な方針があれば、それは適切な戦略といえるでしょう。
人生やキャリアにおいて達成したいことがあっても、達成が難しいと感じる時、それは目的に対して認識できている資源量が足りていないからです。
ワクワクした気持ちに変えるには、資源量を増やすか、目的の再解釈を変えるという選択肢があります。何を達成したいのか、そのために今投下できる資源は何か、そして探索することでどのような可能性が見つかるかを考えることが重要です。
「しんどい」と感じる時、それは単に頑張るだけでは達成できないと直感的に理解しているからかもしれません。そんな時こそ、戦略を考え直すべき良いタイミングなのです。
