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アンペア1兆円買収を発表。ソフトバンク、半導体への危ない賭け
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2025年3月24日

ソフトバンクが、半導体設計を行うアンペア・コンピューティングの買収を発表。この買収の狙いは何か?なぜ傘下のアームはこれまでのビジネスモデルを変えるのか?ソフトバンクの半導体戦略のリスクを、グロスバーグの大山聡代表が解説する。 <ゲスト> 大山聡|グロスバーグ代表 1985年東京エレクトロン入社。産...
ソフトバンクの半導体戦略に大転換?アームの独自半導体参入が意味するもの
ソフトバンクグループによるアンペアコンピューティング買収(約65億ドル/1兆円弱)という大型ニュースの裏側には、アーム社の戦略的な大転換がある。グロスバーグの大山聡代表に、ソフトバンクの半導体・AI戦略の展望について聞いた。


なぜメタはアームに半導体設計を委託したのか?
Q: ソフトバンクグループによるアンペアコンピューティング買収のニュースについて、どう評価していますか?
ソフトバンクがAIやデータセンターに注力しているのは以前から知られていました。孫正義氏はトランプ大統領との会談でもその話をしていたので、それ自体は想定内です。
しかし予想外だったのは、ソフトバンク傘下のアーム社の動きです。アームは半導体設計図(IP)を半導体メーカーにライセンスするビジネスモデルを持っていますが、この会社が戦略を大きく変えようとしています。アンペアコンピューティング買収も、このアームの戦略転換が表面化した動きだと見ています。
Q: メタがアームに設計を委託したことは驚きだったのでしょうか?
非常に驚きました。メタのようなデータセンターを持つIT企業は、通常はブロードコム社やマーベル社などのファブレスメーカーに集積回路(IC)の設計を委託します。一方、アームは自社製半導体製品を持たないIPベンダーです。これまでアームがメタのような企業に直接半導体を供給することはなかったので、通常では考えられない動きです。
おそらくアームがメタに対して「我々もこういうサービスを始めるから一緒にやりませんか」とアプローチしたのではないでしょうか。この動きが驚きなのは、アームが自社の顧客である半導体メーカーと競合するビジネスを始めることを意味するからです。
Q: なぜアームは、顧客と競合してまで独自半導体ビジネスに参入するのでしょうか?
アームの従来の強みは、様々なアプリケーションでの実績があることと、半導体メーカーと競合しないように自社製品を持たないことでした。しかし、現在のビジネスモデルではまずいという危機感、焦りに似た感情が高まっているようです。
推測ですが、アームが最も警戒しているのはRISC-Vというオープンソースのプロセッサコアです。これはバークレー大学が開発したもので、ライセンス料なしで自由に使えます。アメリカや中国でRISC-Vを採用する半導体メーカーが増えてきており、これまでアームに高額のライセンス料を支払っていた企業がRISC-Vに切り替える動きが出始めています。これがアームにとって大きな懸念事項になっているのでしょう。
Q: それはオープンソースによる脅威ということですか?
まさにその通りです。これはOpenAIに対するMeta(ディープシーク)のようなオープンソースの脅威に似た構図といえます。アームはスマートフォン市場ではほぼ独占的な地位を築いてきましたが、無料で使えるRISC-Vが台頭してくると、現在のビジネスモデルが立ち行かなくなる恐れがあります。
アームのビジネスモデルはどう変わるのか?
Q: アームのビジネスモデルはどのように変わっていくのでしょうか?
アームの最大の顧客には、クアルコム、ブロードコム、NVIDIA、インテル、AMD、日本のルネサス、ロームなどがあります。世界中でSoC(System-on-Chip)を手掛ける半導体メーカーでアームの顧客でない会社はほとんどありません。
しかし今回、アームがメタのビジネスを獲得したことは、従来のパートナーであったブロードコムなどからビジネスを奪うことになります。これはパートナーではなく競合相手になることを意味します。現在はデータセンター向けの話ですが、将来的にパソコンやスマートフォン市場にも独自半導体を提供する可能性があり、その守備範囲がどこまで広がるのか不透明な状況です。多くの半導体メーカーが警戒しているでしょう。
Q: メーカー分野に進出することは容易なのでしょうか?
ハードルは高いと思います。設計図は提供できますが、実際に半導体を設計するには多くのエンジニアが必要です。また、データセンターというシステムのノウハウをアームがどの程度持っているかも疑問です。このようなノウハウを持つ人材を取り込む必要があるでしょう。
アームの参入で影響を受ける企業は?
Q: アームの半導体ビジネス参入によって、どのような企業が影響を受けますか?
データセンター向けという点では、現在そのマーケットに製品を提供しているブロードコム(ASICカスタム品)、GPUを提供するNVIDIA、マイクロプロセッサを提供するインテルやAMDといった企業と競合することになります。
Q: これらの企業は今後もアームの顧客として残りますか?
非常に難しい問題です。これらの企業は「アームがこのような戦略を取るなら、ライセンス料を払うのをやめてRISC-Vにシフトしよう」と考える可能性があります。一斉にそうした動きが起こるかはわかりませんが、そのリスクは非常に高いと思います。

Q: アンペアコンピューティングとはどのような会社ですか?
アンペアコンピューティングは、2018年にインテルの幹部社員がスピンアウトして設立した会社です。インテルのデータセンター向けビジネスとは異なるアプローチが必要だと考えた人たちが立ち上げました。当初からデータセンター向けのMPU(マイクロプロセッサユニット)やソリューションを提供する会社として活動しています。
2020〜21年頃にIPO(新規株式公開)の計画があったものの、NVIDIAのような競合他社が急成長する中で注目度が下がり、負債が増加しました。その結果、企業価値は以前ソフトバンクが出資を検討していた時点(約80億ドル)から下がり、今回は65億ドルでの買収となりました。
Q: この買収は救済的な側面もあるのでしょうか?
結果的には救済になる面もありますが、アームにとっては「天下り的」な印象も受けます。これまでアームからライセンスを受けていた半導体メーカーがこの動きをどう受け止めるかが非常に気になるところです。
孫正義氏はなぜこの賭けに出たのか?
Q: データセンター向け半導体市場は魅力的なのでしょうか?
非常に成長している市場です。昨年、世界の半導体市場でロジックASIC市場が約20%成長しました。他の分野が10%程度の成長だったのに対し、データセンター向けは非常に高い伸びを示しています。MicrosoftやMetaといった企業が投資を大幅に増やしている状況です。
これはAIブームが引き起こしたデータセンター投資の活性化によるもので、去年始まったばかりでこれからも続くと見られています。アームがメタ向けにこのような戦略を取ったのは、最も成長の見込める市場だという判断があったのでしょう。
Q: この買収はソフトバンクのAI大型投資の一環ですか?
方向性としては、孫氏がAIやデータセンターに投資するという方針と合致しています。しかし、アームがこれまでのビジネスモデルを根本から変えるというリスクを抱えていることは無視できません。
Q: この戦略の成功確率はどのくらいだと思いますか?
個人的には非常に低いと考えています。おそらく10%にも満たないでしょう。業界関係者の多くも同様の見方をしており、「当然成功する」「成功確率が高い」という意見には出会ったことがありません。
Q: 仮に成功した場合、半導体業界はどう変わりますか?
アームが単なるIP提供会社ではなく、ブロードコムやNVIDIAとも競争する半導体メーカーとして定着することになります。アームがデータセンターやAI関連のあらゆる分野に半導体を提供できる企業となり、ソフトバンクグループのAI技術への投資戦略と合わせて整合性の取れた戦略になる可能性はあります。ただし、その成功確率は低いと言わざるを得ません。