
脱「学校」のための5つの提案
教育の未来は「学校」の外にある?白井智子が語る5つの教育改革案
不登校児童・生徒が34万人を超える中、教育改革は待ったなしの課題となっている。こども政策シンクタンク代表の白井智子氏は、フリースクールで25年の実績を持ち、子どもたち一人ひとりに合った教育のあり方を模索してきた。今回は白井氏が提案する5つの教育改革案について深掘りする。


Q: AIを活用した教育は本当に機能するのでしょうか?子どもたちは集中して学べるのか心配です
すべての子どもに同じ教材を与えるのではなく、個々に合った学びのスタイルを提供することが重要です。子どもたちの学び方は多様で、目から学ぶ子、耳から学ぶ子、書くことで覚える子など様々なタイプがあります。AIはそれぞれの子どもが苦手とする部分を見つけ出し、それに合わせた問題を提供できる利点があります。
人間が同じことをしようとすると膨大なコストがかかりますが、AIに任せることで、先生たちは浮いた時間を使って子どもたちに社会を見せたり、人間関係を構築するサポートに集中できるようになります。
ただし、AIだけに頼るのではなく、紙の教材が合っている子どももいるため、子どもに合った学び方を大人がしっかり見極めて選んでいくことが大切です。現状では「理数主義」に偏りがちで、小学校を卒業したから基礎学力がついているという考えはフィクションになりつつあります。様々な学び方を提供し、確実に基礎学力を身につけられるようにすることが求められています。

Q: 学年制度をなくすことについてどう考えますか?混乱しないでしょうか?
日本では学年へのこだわりが非常に強いですが、特に個性や能力にでこぼこがある子たちにとって、学年で区切った教育は無意味です。私は25年間フリースクールを運営してきましたが、一度も学年という概念を作ったことがありません。
学年区分をなくすと、昭和時代の「ガキ大将システム」のように、上の子が下の子の面倒を見て、下の子は上の子に憧れて育つという相互作用が生まれます。上の子は下の子たちの前では悪いことができなくなり、支え合うコミュニティが自然と形成されます。
全員を一緒にした授業では、先生は誰もが理解できる内容を工夫して提供します。そこでより深く学びたい子は、個別学習の時間に研究を深めることができます。25年間の経験から、学年で分ける意味はほとんど感じられません。
もちろん、受験を目指す子には学年制が合っているかもしれませんが、全員がそれに合わせる必要はありません。選択肢を増やし、それぞれの子どもに合った教育環境を提供することが大切です。

Q: 放課後の時間をどのように活用すべきだと考えていますか?
放課後は子どもたちに多様な体験をさせる貴重な時間です。私が取り組んできたプロジェクトでは、経済的に困難な家庭の子どもたちを預かり、家庭ではできない体験を提供し、手作りの夕食を一緒に食べて過ごしました。このような取り組みにより、余裕がなく虐待していた親が落ち着き、虐待が減少したケースもあります。
公教育の中で個別最適な学びを十分に確保できていない分、放課後の時間を活用して補完できる可能性があります。また部活動についても、少子化で1チームも組めないケースが増えていることから、学校単位や学年単位ではなく、地域で集まって活動するなど選択肢を広げる必要があります。
選択肢の少なさが苦しみの連鎖を生んでいる現状から、子どもたちを解放していくことが重要です。

Q: 大人も含めた学びのコミュニティづくりはなぜ必要なのでしょうか?
日本人は大学までの「最終学歴」で学ぶことをやめてしまう傾向があります。職業訓練は受けても、一般教養を学び続けることはあまりありません。教師の世界でも同じで、30年前の知識のまま子どもたちを指導しているケースも少なくありません。
例えば「この学年で習った漢字以外は書いてはいけない」といった制限は、子どもたちの学びを閉じ込めてしまいます。教師だけでなく親も含めて、現代の変化に合わせて知識やマインドをアップデートし続けなければ、子どもたちも適切に学ぶことができません。
大人も子どもも共に学び合い、教え合うコミュニティを作ることで、社会全体の教育の質が向上します。
Q: 企業と教育の連携についてどう考えますか?資本主義の論理をどこまで教育に持ち込むべきでしょうか?
現在の公教育は格差を広げる装置になっています。学力を伸ばすためには塾などの学校外の学びに頼らざるを得ず、そこにはお金がかかります。そのため、経済的に余裕のない家庭の子どもとの格差が広がっています。
この状況は社会の不安定要素となり得ます。生まれた家庭や地域によって受けられる教育や支援が限られ、貧困の連鎖が当たり前になっている現状は社会にとって良くありません。
資本主義企業が教育に関わる際には、資本主義によって広がった格差を埋めることを考える必要があります。それは社会の安定や国際社会での生存にとって重要です。
企業にとっても、就職できない若者があふれる一方で求める人材が見つからないというミスマッチを解消するメリットがあります。民間の余剰資金や技術を教育に投入することで、現代の教育と資本主義社会の乖離を埋めることができるでしょう。
Q: 移民の子どもたちの教育についてはどのように考えていますか?
増加する移民の子どもたちに対しても、その子に合った教育を提供することが必要です。移民を排除することは、かえって反社会化や犯罪の悪循環を生み出すだけです。
来日している子どもたちには、一人ひとりに合った方法で日本語を習得できるよう、適切なリソースを提供することが急務です。現状では、教員のリソース不足や知識不足により、対応に苦労している状況です。
移民の子どもたちを放置することは社会の不安定要素を増やすことになります。学校だけでなく社会全体で温かく見守り支援していくことが、社会の安定のために重要です。
Q: 現在の親たちは教育の問題に気づいていないのでしょうか?
この本を出して分かったのは、多くの親が今の教育が貧しく古いということに気づいていないという現実です。そのため、古い教育システムに合わない子どもを一生懸命はめ込もうとしています。
まずは今の教育が自分の子どもに本当に合っているのかを問い直すことから始める必要があります。実は著名な企業家や各界の有名人の中にも「子どもが不登校でした」と打ち明けるケースが増えています。彼らのような社会の枠からはみ出している人の子どもが、従来の教育にはまらないのは当然のことです。
教育は子どもたちが幸せに生きていくための基盤を作るためにあります。今の時代に合った教育を考え直す流れは、まだ目立たないかもしれませんが、確実に広がり始めています。
