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中年の人生戦略。40代半ばが転換点だ
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2025年3月23日

経営戦略の知恵を個人の人生・キャリアにどう活かせるのか?『人生の経営戦略』の著書である独立研究家の山口周氏に「ウェルビービーイングを最大化するための戦略」について聞いた。 <ゲスト> 山口周| 著作家・独立研究家 電通、BCG 等で企業戦略策定・文化政菓立案・組織開発・風土改革等に従事。中川政七商...
人生のゲームを制するために20代で試し、30代で集中する
人生は長いゲームなのに、多くの人が目先のマイイニングごとの成果しか考えていない。特に20代と40代では「試すこと」のコストが全く異なる。どのように長期的な視点を持ち、自分の強みを活かし、キャリアを構築していけばいいのか?『人生の経営戦略』の著書である独立研究家の山口周氏に語ってもらった。
Q: 人生のゲームを理解するためのポイントは?
ゲームを理解するためには3つのポイントがある。1つ目は勝利条件を明らかにすること。F1レースなら最後のラップで1位になった人が勝者だ。2つ目はどんなリソースが使えるのか。将棋ならば駒、トランプならばカードになる。そして3つ目が時間軸だ。
例えば野球は9回で終わるゲームだと理解していれば、6回までは先発投手に投げさせて、7回からリリーフを投入するなどの戦略が立てられる。しかし、人生という長いゲームにおいて、多くの人はマイイニングごとのことしか考えていない。
特にキャリアについて考えると、多くの人は60歳から70歳ぐらいまで働くことになるが、そのような長期的な視点を持っていない人が多い。人生全体を見通した上での戦略的な動き方を考えることが重要だ。

Q: 良い経営戦略とは何か?
良い経営戦略の特徴は、短期的に見ると不合理に見えるのに、長期的には合理的であることだ。この特徴が優れている理由は、短期的に不合理に見えるため、競合他社が真似しないからだ。
世の中には、短期的に見ると合理的だが長期的には非合理的な戦略が多い。部分的に見ると合理的だが、全体として見ると非合理的な戦略も多く存在する。
良い戦略は、短期では一見不合理に見えても、長期的に考えると実は合理的なものだ。部分では非合理に見えても、全体として見ると合理的になる。これは楠木建先生の「ストーリーとしての競争戦略」にも書かれていることだ。
Q: 20代はどのように過ごすべきか?
20代はとにかく試すことに集中すべきだ。さまざまなことを試して、自分がパフォーマンスの高い領域を見つけ、30代以降の仕事の領域として設定する。20代で2年に1回ぐらい転職したり、世界旅行に出かけたりして、周りから見ると「腰が据わらない」ように見えるかもしれない。
しかし、本人の中に「今は試す時期」という整理ができていて、30代に入る時に「この領域でやる」と決めて全力投球すれば、迷いがなくなる。そうすると30代、40代でレーザーのように時間資本を投入し、人的資本と社会資本を築くことができる。
最悪なのは、40代や50代になって「自分がやりたかったのはこれじゃない」と言い始め、そこから試し始める人だ。試すことのコストは20代と40代では全く違う。20代は時給が安いので、1年間留学したり、2年間別のことをやってみたりしても大したコストにはならない。
しかし40代、50代でこれをしようとすると途方もないコストがかかる。さらに家族がいて固定費を抱え、それを下げられないというロックイン状態になっている場合も多い。経営学的に言えば、高い固定費はオプション価値を下げてしまうので、戦略的には最悪の状態だ。この状態を避けるためには、長期のプロジェクトロジックを作った方がいい。

Q: 人とは違う選択をするために大事なことは?
周りが短期の最適化を追求する中で、逆張りをして長期的な視点を持つために大事なことは、戦略的な合理性が自分に見えているかどうかだ。人と違う動きをする時に、「胆力」や「度胸」の問題として整理する人がいるが、それでは必ず失敗する。
戦略にも胆力も必要ない。問題はロジックが見えているかどうかだ。ロジックが自分には見えていて他者には見えていない状況は、詰め将棋のようなものだ。ある意味で他者を利用できる。
みんなと逆の動きができるのは、思考の累積量の問題だ。もし自分にそれができないのであれば、論理的に考え抜いていないということになる。勇気でも努力でもなく、自分の居場所について戦略的に考え抜くかという思考の累積量が重要だ。

Q: 40代の危機とはどういうものか?
ユングは中年の危機について、精神疾患の発症の大きな要因になると突き止め、40代を人生の「正午」という美しいメタファーで表現した。正午とは太陽が一番高いところに登る眩しく輝く瞬間だが、同時に登ってきた太陽と下っていく太陽の境目でもある。そこに転換期の危機が生まれる。
カリフォルニア大学の心理学者キース・サイモントンの研究によると、キャリアのピークは20年目あたりに訪れる。例えば25歳でキャリアを始めたとすると、45歳でピークが来ることになる。ここからは別の戦い方が必要になる。
経営戦略論のライフサイクルカーブでは、導入期と成長期と成熟期ではそれぞれ戦い方が変わり、戦略のフォーカスも変わってくる。組織のリーダーに求められるスタイルも変化する。
導入期は自ら率先して手を突っ込んで人頭式に取り組まなければ会社は立ち上がらないが、会社が大きくなると優秀な人たちが入ってきて、彼らのモチベーションを引き出すためには、リーダーは成長ビジョンを掲げて、現場の実行は彼らに任せた方がいい。
ステージが変わるとリーダーシップのあり方も変わる。40代半ばは人生のライフサイクルカーブにおいて大きな転換点だが、自分がうまくいっていたやり方を変えるのは非常に怖い。そこで多くの人が戸惑い、新しいステージへの移行がうまくいかず失敗する。
Q: 美味しい立地の賞味期限と強みについて教えてください
ある産業が非常に儲かる状態でいるのは、大体10年くらいと見ておくといい。継続的なポジショニングはないので、一度美味しいポジションを取ったとしても、そこに居続けられないと考えた方がいい。10年いると人的資本も社会資本も眠ってしまい、停滞して淀んでしまう。そうなると難しい状況になるので、あえて場所を変えることが重要だ。
例えばトヨタでは、エースと言われる人を本当に振り回すように移動させる。人事が見ているのは、コンフォートゾーンに入ってきた人を動かすことだ。BCGやマッキンゼーなどの戦略コンサルティングファームもコンフォートゾーンにいられる期間が非常に短く、「アップオアアウト」の文化がある。ステイはコンフォートゾーンにいることで、アップは常に新しいチャレンジをしていくことを意味する。
また、自分の強みについて考えるよりも、自分が長く関わってきて、他の人には簡単に模倣できない領域は何かを考えるべきだ。強みは何かと考えるのではなく、まず他の人に真似できないユニークな能力や知識、自分についての人的資本は何かを考え、それをどこに置いたら強みになるかというポジショニングを後から考える順序がいい。

Q: 優れたアウトプットを出すために大事なことは?
統計学者キース・サイモントンの研究によれば、イノベーターの特徴は才能ではなく、試行回数の多さだ。イノベーターは平均的な能力が優れているわけではなく、単に取り組みの数が多いのだ。
例えば300回の取り組みをするAさんと100回の取り組みをするBさんでは、標準偏差で2以上の極めて優れたアウトプットの量がAさんの方が圧倒的に多くなる。重要なのは、極めて失敗したアウトプットもAさんの方が多いということだ。エジソンのように、試行回数が多く、失敗の数も多い人が結果的に優れた成果を生み出す。
失敗は忘れられるが、成功はリターンをもたらす。特に若い時は失敗のコストが低いので、多くの「打席」に立ってたくさん振ることが重要だ。いいところ取りはできない。慎重に見極めようとすると結局はアウトプットの数を減らしてしまい、イノベーションが停滞する。
日本の組織は失敗にペナルティを与える傾向があるが、Googleなどではチャレンジして失敗した人の方が、チャレンジしなかった人よりも高く評価される。チャレンジしなかった人が最も評価が低い。こうした人事評価のあり方も見直していく必要がある。

Q: 人生に最も良い投資は何ですか?
エコノミストの視点から自分の人生を分析すると、ネットプレゼントバリュー(NPV)の長い投資をした方がいい。時間軸の長いものが大事で、それは廃れない学問、廃れない知恵、つまりリベラルアーツだ。
流行の学問はNPVが低い。エコノミストの視点から自分の時間資源の配分を考えるなら、絶対に廃れない学問に投資することは間違いのない選択だ。不確実性が高まっている世の中であればあるほど、確実なものに投資することのインセンティブが上がっている。