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日銀利上げなしで再び円安へ?【唐鎌大輔】
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2025年3月17日

EXIT・りんたろー。と国山ハセンが株・保険・住宅など資産運用にまつわるスキルセットを学ぶ。3月18日&19日に開催されるFOMCや日銀金融政策会合の争点は?過熱する円買いリスクについて唐鎌大輔氏が解説 <ゲスト> 唐鎌大輔(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト) 著書「弱い円の正体 仮面の...
円高加速中だけど警戒すべきリスクとは?唐鎌大輔が解説する「為替・金利・経済の最新動向」
最近の円高傾向に注目が集まっている中、「本当にこの円高は続くのか」「日銀の利上げはどう影響するのか」という疑問が浮上している。経済アナリストの唐鎌大輔氏が、現在の経済状況と為替相場の動向について解説する。

Q: 米FRBの金利政策の現状はどうなっているのでしょうか?
アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は、昨年9月に利下げに着手しましたが、それ以降も経済は好調を維持しています。アトランタ連銀が公開しているGDP NOWというデータを見ると、実質GDP成長率は2.5%を下回っていません。
このデータはリアルタイムで米国の経済成長率を示す指標として市場関係者の間で注目されています。実は、米国の潜在成長率は1%程度と見られていましたが、実際の成長率はそれを大きく上回っています。議会予算局の推計では潜在成長率は2.2%とされていますが、それをも上回る成長を続けているのです。
これだけ強い経済成長が続いていると、「もう利下げしなくてもいいのでは」という雰囲気が市場に広がっています。2025年は年内で最大2回程度の利下げが予想されていますが、以前は6回程度の利下げが見込まれていたことを考えると、見通しが大きく変わったことが分かります。

Q: トランプ政権は為替政策にどのような影響を与えるのでしょうか?
トランプ政権の政策はインフレを促進する方向に働く可能性が高いです。具体的には、減税による財政拡大、追加関税の導入、移民規制の強化などが挙げられます。特に労働力が不足している状況で移民を制限すると、人手不足が深刻化して賃金上昇圧力が強まります。これらはすべてインフレ要因となります。
トランプ前大統領は「ドル安」と「低金利」を好む発言を繰り返していますが、自らの政策がインフレを促進してFRBに高金利政策を維持させる要因になっているというジレンマがあります。パウエルFRB議長は「新政権の政策の意味を理解し、適切な対応を取る」と述べており、政治的な圧力に屈せず、経済データに基づいた金融政策を続ける姿勢を示しています。
第一次トランプ政権時代も、大統領はドル安を望む発言を繰り返しましたが、実際には4年間でドル高になったという事実があります。大統領が為替相場を直接コントロールできるわけではなく、FRBの金融政策の独立性が保たれていることを示しています。

Q: 今後の円相場はどうなると予想されますか?特に円高リスクについて教えてください。
現在、円高相場が進行していますが、これには注意が必要です。市場では「FRBが当面利下げしなさそうなのに対し、日銀はどんどん利上げしそうだから円を買おう」という動きが広がっています。
JPYポジション(Non-Commercial)のデータを見ると、現在、投機的な円買いのポジションが積み上がっています。しかし歴史的に見ると、円のネットロングが50億ドル程度に達すると長続きしないという傾向があります。現在はその水準近くまで来ているにもかかわらず、為替レートは150円前後で推移しています。
この状況で懸念されるのは、3月の日銀会合で「そんなに無理して利上げしません」といった発言が出た場合、投機的な円買いポジションが崩れて、再び円安に向かう可能性です。
投機的なポジションは必ず反対売買されるものであり、円買いが積み上がっているということは、将来的に円売りが実行されるという見方もできます。為替市場と金利市場の予想にねじれがあり、金利市場では2025年は1回程度の利上げしか織り込まれていないのに、為替市場では積極的な円買いが進んでいるという矛盾があります。

Q: 日銀の金融政策はこの状況をどう見ているのでしょうか?
日銀は今年1月に利上げを実施しましたが、3月には利上げを見送るという見方が多数です。しかし、これはあくまで現状の為替水準を前提とした予想であり、例えば3月の政策決定会合直前にドル円相場が170円になるような状況であれば、日銀の判断も変わるかもしれません。
日銀が利上げできる余地は限られています。日本の苦境の原因の一つは物価上昇ですが、それを抑制するために金利を上げると別の問題が生じます。日本は「円安を我慢するか、金利上昇を我慢するか」という二者択一を迫られていますが、結局のところ両方を我慢する状況が続いています。
金利は現在0.5%で、スイスと同水準です。将来的にはユーロ圏の金利と接近してくる可能性もあります。わずか1年前にマイナス金利だったことを考えると、大きな変化です。
Q: 金利上昇は住宅ローンなどにどう影響しますか?
金利上昇による住宅ローンの支払い増加について心配する声がありますが、見落としがちな点として、金利収入の増加も考慮すべきです。長年の低金利で金利収入という発想自体が失われていましたが、今後政策金利が1%や1.5%になれば、預金からの利息収入も無視できない額になります。
住宅ローンの支払い増加と金利収入の増加を相殺して考えることが重要です。アメリカなどの金利が高い国では、利息収入についての意識がより強いといえます。
Q: 今後予想されるリスクや投資の注意点はありますか?
大きなショックとしては、政治的な合意による大きな為替変動が考えられます。ドル高が10年以上続いている中、トランプ政権がプラザ合意のような国際協調によるドル切り下げを目指す可能性も無視できません。ドル高が急激に修正されると円高が進み、日本株式市場にショックを与える可能性があります。
また、長期間の高金利政策によって米国の地方金融機関に問題が生じるリスクも考えられます。数年前のシリコンバレー銀行の破綻のように、突然問題が表面化することもあります。
欧州経済、特にドイツについても注視が必要です。ドイツはエネルギーコストの高騰や中国市場の変化など、従来のビジネスモデルが機能しなくなる課題に直面しており、ユーロ安の要因となっています。
投資については、目先の相場予想に振り回されるのではなく、現在何が起きているかを正確に理解することが重要です。経済分析の目的は儲け話を提供することではなく、現状を正確に把握することにあります。分散投資と長期保有という基本原則は今も変わりません。
Q: それでは最後に、投資家はどのようなマインドセットを持つべきでしょうか?
市場は常に「利下げが始まるか」「利上げが始まるか」といった極端なシナリオを織り込む傾向があります。「今年後半には2026年は利上げの年かもしれない」といった議論も出てくるかもしれません。特にトランプ政権の政策がインフレを促進する方向に働けば、利上げに転じるリスクも考えられます。
当期的な相場観や「当期筋」の動向に一喜一憂するのではなく、実体経済の動向を注視することが大切です。特にドル円相場については、円高が進んでも投機的な要素が大きいことを認識しておくべきでしょう。
経済アナリストの役割は「儲かる方法」を教えることではなく、「今起きていることを正しく分析すること」です。投資家は地道な分散投資と長期保有を基本としながら、正確な情報に基づいて冷静に判断することが重要です。