PIVOT TALK BUSINESS
ユニコーンを創れるのは誰か?連続起業家とトップ専門家起業
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2025年3月18日

日本でスタートアップの裾野は広がりつつあるが、大型上場、ユニコーンの数は増えていない。スタートアップが伸び悩みを脱して、次のフェーズに進むために何が必要なのか?スタートアップ支援を行う、デロイトトーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬社長に聞いた。 <ゲスト> 斎藤祐馬(デロイト トーマツ ベンチャー...
日本のスタートアップ業界が直面する転換期、"踊り場"を超えて飛躍するために必要なこと
日本のスタートアップ業界は今、大きな転換点を迎えている。過去10年間で一定の成長を遂げてきた業界だが、さらなる飛躍のために乗り越えるべき「踊り場」がある。デロイトトーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬社長に、日本のスタートアップエコシステムの現状と未来について聞いた。

M&Aを増やすためのカギとは?
Q: M&Aをもっと増やすためには、何が鍵になるのでしょうか?どうやったらもっと増えますか?
現場を見ていると、シンプルに売上が立って利益が出ている会社は買い手が非常に現れやすいです。まずはそこが大前提となります。利益が出ている会社が増えれば、仲介する会社やプラットフォームも数多く存在しますので、そこは確実に増えていくでしょう。
一方で、大企業側の視点からM&Aを増やすという課題もあります。大企業の経営者が株価対策を考える際、「配当や自社株買いなどの資本政策」と「事業の成長戦略」という2つの要素があります。前者は実施した分だけ株価に反映されやすいのですが、成長戦略の方は経営者の本気度など様々な要素で評価され、効果が100%出るとは限りません。
このため、経営者が成長戦略をどう具体化していくかが課題です。スタートアップ買収も含めた明確な成長戦略を打ち出せれば、CEOレベルがそこにコミットする可能性が高まります。例えばKDDIが「SORACOM」を買収したように、社長が関与するM&Aは重要案件です。複数のスタートアップを買収することで中長期的に株価にも影響してくるでしょう。

ファンドの役割とIPOとM&Aの選択肢
Q: 大企業が直接買収するのではなく、一度ファンドを挟むモデルも今後増えていくのでしょうか?
それもあり得るでしょう。例えばユーザーベースがカーライルに買われ、カウンテラもカーライルが買収するなど、ファンドが一度買収してバリューアップした後に大企業に売却するというワンクッションのモデルはコミュニケーションがしやすいという利点があります。

Q: IPOの方が高い価格がつくので、M&Aがなかなか増えなかった背景があると思いますが、利益をきちんと出していけばIPOと同じくらいの評価で売れるようになるのでしょうか?
構造的にはギャップが出るかもしれません。M&Aの場合は基本的に買い手が1社なのに対し、IPOは多数の投資家が評価する構造になっているため、イコールにはならないでしょう。しかし、世界を本当に目指すサービスであれば、赤字でも高い評価を得ることがあります。YouTubeのように世界中の人が使うサービスは、買収においても高く評価されます。
日本以外の国、特にアメリカではM&Aの方が主流になっていますが、これは上場するためのハードルやコストが非常に高いことも一因です。さらに、グローバルに展開するサービスであれば、ユーザー数の圧倒的な増加を重視する評価軸もあります。

企業家人材の再活用と専門人材の重要性
Q: 企業まで持っていく経営者は、IPOした後にも同じ会社で経営を続けるとポテンシャルが活かしきれないのではないでしょうか?
まさにその通りです。連続起業家が増えると、開業率も上がります。上場後もずっと経営者を続けるパターンもありますが、途中で売却して一定の資産を得た後、より大きなことに挑戦する人も増えています。
例えば、大学の技術などを事業化する際に経営者が足りないという課題がありますが、一度成功した起業家がそこで力を発揮できます。連続起業家のプールを作ることは非常に重要なポイントです。
Q: 今後新たに入ってくる起業家として、どういう人材層が増えると業界がさらに強くなると思いますか?
テーマとしては、日本が強みを持つ技術や産業分野が重要です。一般的なスタートアップ支援はすでに充実してきましたが、専門分野に特化したサポートが今後さらに必要になります。ヘルスケアや宇宙など、大きなテーマとして集中投資される分野が増えてきています。
専門分野のトッププレイヤーがその専門性を活かして起業するケースが増えることが重要です。「何か起業したい、アイデアを探している」という発想ではなく、自分の専門分野で世界に通用するものを生み出そうという志を持った人材が増えれば、業界はさらに強くなるでしょう。
グロース市場の課題と今後のスタートアップエコシステム
Q: グロース市場が伸びずに、投資したら損してしまうような状況では国民的な支持も得られないと思います。グロース市場は復活できるのでしょうか?
上場する企業の規模感が徐々に大きくなり、成長しやすい企業がより上場するような流れになってくると期待できます。次々と良い企業が市場に入ってくれば、全体として盛り上がるでしょう。例えば宇宙ベンチャーのispace(タイムスナップ)のように上場時に1000億円を超えるような企業が毎年次々と出てくれば、市場自体も活性化します。
Q: 2025年頃は業界にとって試練の時期といえるのでしょうか?ここを乗り越えるとさらに明るい未来が見えてくるのでしょうか?
時価総額の大きめな会社が上場してくるというコンセンサスが取れてくると、それを目指す企業が増えるでしょう。人は目標設定によって行動が変わります。売上10億円を目指すのと100億円を目指すのでは、最初の構想から異なるはずです。目指すところが高くなること自体が非常に良いことだと思います。
これまでのスモールIPO(小規模上場)は必要なプロセスだったかもしれません。業界全体を盛り上げる役割を果たしてきました。2008年〜2010年頃はスタートアップが社会に注目されていませんでしたが、上場企業が増えたことで社会的認知も高まり、起業という選択肢が市民権を得てきました。
この先に向けては、ビジョンや理念で求心力を持っていた企業がさらにプロフェッショナル化し、洗練されていく数年間になるでしょう。そこを乗り越えれば、連続起業家も増え、大きなメガベンチャーも増えていく時代が来ると思います。
2030年に向けてのアドバイス
Q: 2030年にはユニコーン企業も増えていきそうですね。どれくらいの数が期待できるでしょうか?
日本のGDPの1%の売上をスタートアップが担うとしたら、ユニコーン企業が100社程度生まれる計算になります。日本株式会社全体から見れば、その潜在力は十分にあります。
大企業からスタートアップへの発注、行政からの発注など、様々な取り組みが進んでいます。ここがブレイクスルーして、次の5年につながることを期待しています。今の踊り場を乗り越えられた企業は大きく飛躍するでしょう。
Q: 起業家や起業予備軍に対して、アドバイスをお願いします。
当社もかつて100人の壁を超える時に赤字から黒字への転換に苦労し、多くの人が退職するなど厳しい時期がありました。その時に大企業出身者から言われたのは「ロンゴ(理念)とソロバン(収益)が大事で、ロンゴを追いかけるのは素晴らしいが、数年間はソロバンに本気で向き合う時期を作ると会社も大きくなり、社会的インパクトも出せる」ということでした。
業界全体としても同じタイミングだと思います。ビジョンで引っ張ってきたものを、きちんと結果につなげることが重要です。経営者として、メンバーを引っ張る部分と厳しいことを言う部分、ビジョンを語る部分のバランスが求められています。嫌われることを恐れず、ビジョンのために必要な決断をする勇気が大切です。