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パナソニック、復活の条件。40年前から課題は同じ
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2025年3月11日

2月初旬にグループ経営改革を発表したパナソニック。テレビ事業の売却も選択肢に入れるなど、改革への意欲を示した。なぜ過去30年、パナソニックは衰退し続けたのか?ソニーとの勝負の分かれ目はどこにあったのか?日本経済新聞デスクの藤本秀文氏に聞いた。 <ゲスト> 藤本秀文|日本経済新聞デスク 1968年生...
パナソニックは「ソリューション戦略」で復活できるのか - 日経デスクが解説
パナソニックはこれまでこだわり続けてきたテレビ事業を非中核化することを発表し、大きな話題となっている。エネルギーやサプライチェーンに注力する新戦略に舵を切る中、パナソニックはどういう存在価値を打ち出していくのか。日本経済新聞デスクの藤本秀文氏に聞いた。
パナソニックが発表した新戦略とは何か
パナソニックは2月4日に新戦略を発表し、2028年度のROE10%を目標に掲げた。注力するのはソリューション領域で、売上規模は約3.5兆円ある大きな事業だ。一方で、これまでこだわり続けてきたテレビ事業については売却という選択肢も検討するとし、従来のB2C(消費者向け)事業からの転換を鮮明にした。
特に注力するのはエネルギーとサプライチェーンマネジメント(SCM)分野だ。しかし、これらの分野は競争も激しい。コールドチェーン(低温物流)などで強みがあるとされるが、アクセンチュアや日立製作所、さらには商社なども参入している激戦区域だ。


パナソニックの課題は「わかりやすさ」の欠如
パナソニックの最大の課題は、「一言でパナソニックとは何か」と問われた時に、明確なイメージが浮かばないことだ。「ソリューション領域」といわれても具体的なイメージがわかない。競合他社が多い中で、パナソニックならではの差別化ポイントが明確でない。
パナソニックは現在67の事業部に分かれており、それらがバラバラになっている状態だ。中村改革の時に形式的には統合したものの、実際には分断されたままで、ワンパナソニックとしての統合的な価値提供ができていない。
例えばソニーは「感動」というテーマの下、映画やゲーム、音楽といった事業を横断的に展開している。「鬼滅の刃」のようなコンテンツで音楽も映画もゲームも楽しめるような一気通貫の体験を提供している。パナソニックがどのような一貫したビジョンを持っているのかが見えにくい。

「危機感」は十分か
日立製作所はリーマンショック後に経営危機に陥り、川村改革、中西改革、東原改革という一連の変革で復活した。ソニーも平井一夫氏の時代に4期連続赤字に陥り、「この会社は潰れるぞ」という強い危機感を全社で共有することで反転攻勢につなげた。
一方、パナソニックでは本当の意味での危機感が共有されていない可能性がある。赤字は出しているものの、「潰れるかもしれない」という実感が全社に浸透していないように見える。楠見社長は「まだキャッシュがあるうちに変革をしなければならない」と述べているが、具体的に何に向かって変革するのかが見えない。
楠見社長の発言からは、組織の生産性に対する苛立ちも伝わってくる。「本当は2人でできることを5人でしている状態があれば、社会からお預かりした人を活かしていることにはならない」「そのような状況では社員の成長にも繋がらない」と述べており、生産性向上の必要性を強調している。
パナソニックは若者に認知されているか
最近の調査では、20代の半数がパナソニックを知らないという結果が出ている。これは深刻な課題だ。
過去には「ヤング計画作戦」という若者向けの取り組みもあった。麻布に拠点を作り、20代から40代の若手社員を配置して、秋元康氏や歌手、映画監督など様々な分野の人々と交流し、若者に刺さる商品開発を目指した。こうした健全な「遊び心」がパナソニックには今、欠けているのかもしれない。
津賀一宏前社長時代には、グーグル出身の松下陽氏を招聘するなど、外部から刺激を取り入れる試みもあった。パナソニックは真面目な企業文化を持つが、大阪はお笑いの文化もあり、そうした遊び心を活かした取り組みの余地はまだあるはずだ。
ソフトウェアとサービスへの転換は進んでいるか
パナソニックコネクトを中心にソフトウェア強化の動きはあるが、まだ道半ばだ。ソフトウェアを活用したサービス、特にリカーリング(継続収益)モデルの構築が課題となっている。
例えばブルーヨンダーというサービスは、使用量に応じて継続的に収益が得られるサブスクリプションモデルだ。このようなモデルは最初は先行投資で赤字になるが、6-7年後に急激に収益が上がってくる。パナソニックのこうしたサービスもそろそろ成果が出てくる時期かもしれない。
ソフト人材の確保が課題
ソニーは厳しい時代にもソフトウェア人材を大量に確保した。伊藤穰一氏の時代にソフトウェア技術者を多く採用し、それがプレイステーションやモバイル事業などの成功につながった。
一方、パナソニックはかつてネット会社も作ったがそれを手放してしまった。現在、AIやIT分野の人材獲得競争は激しく、パナソニックがどのようにして優秀なソフトウェア人材を集めるかは大きな課題だ。
住宅事業の可能性を生かせるか
パナソニックの住宅事業は、実はプラットフォームビジネスの可能性を秘めている。家は毎日帰る場所であり、そこでの生活データは非常に価値がある。いつ起きて、いつ寝て、どれくらい電気を使うか、何人で暮らしているかなどの情報は、様々なサービス開発につながる。
特に高齢者向けのセキュリティや緊急時の対応など、家の中での行動データを活用したサービスの可能性は大きい。住宅ローンを通じて長期的な顧客関係も構築できる。太陽光パネルやペロブスカイト電池なども組み合わせれば、新たな事業の柱になる可能性もある。
パナソニックの次のリーダーは誰か
パナソニックでは伝統的に、テレビ・AV事業出身者が社長になることが多い。楠見雄規社長もその出身だ。これからの事業転換を考えると、次のリーダーがどういう人材になるかは重要だ。
テレビ事業を手放すという決断は、その事業の出身者である楠見社長だからこそできた面もある。しかし今後のソフトウェアやサービス重視の戦略を進めるには、新たな視点を持つリーダーシップが必要かもしれない。

パナソニックの復活に必要なもの
パナソニックは日本を代表する企業として、今後5年から10年で復活を果たしてほしい。そのためには、単なるコスト削減や組織改革だけでなく、「パナソニックとは何か」という明確なビジョンと、それを実現するための具体的な戦略、そしてソフトウェアとサービスへの本格的な転換が必要だ。社員や顧客が「ワクワク」するような明確なメッセージを打ち出し、真の意味での「ワンパナソニック」として統合された価値を提供できるかどうかが鍵となる。