日本再興ラストチャンス
医療費の世代間格差はなくせるか?
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2025年3月8日

【collaborated with 経済同友会】 日本再興ラストチャンス。日本が失われた30年を経て、これからどのように経済を再興するべきなのか。経営者と有識者と対談を通じて、日本再興に向けた具体的なアクションプランを発信していく。 【Sponsored】 <ゲスト> 武藤真祐|経済同友会 規制...
日本の医療制度、真の課題と未来の形
日本の医療は「岩盤」と言われるほどの課題を抱える。コロナ禍でのオンライン診療解禁が象徴するように、抜本的な改革なくして持続可能な医療はありえない。
巨額な国民医療費、現場の人手不足、不公平な世代間負担。これらの問題にどう向き合い、どのような未来を描くべきか。医師や専門家の知見から、医療の「今」と「これから」を深掘りする。
Q. 日本の国民医療費はなぜ巨額化しているのか?その背景にある構造的な問題とは何か?
日本の国民医療費は年間に約42兆円と莫大であり、子供の教育にかかる文教予算約5兆円の8倍以上にもなる。急速な高齢化が主な要因だ。しかし、この莫大な費用を単なるコストと捉えるのは危険である。
慶應義塾大学教授の中村氏は、自身ががんを患った経験から、医療の「質」と「安定性」が人生のセーフティネットとして不可欠であると痛感したという。病を抱える人々にとって医療は生命線であり、削るべき対象ではないと認識を改めたのである。
医療費の数字削減だけでなく、限られた予算で医療システムをいかに経営し、運営していくかという視点が求められる。医療現場は社会と連携し、多様な知見を取り入れ最適な解決策を探る必要がある。
Q. 医療現場の人手不足は深刻化しているが、タスクシフトやデジタル化はなぜ進まないのか?
人手不足にもかかわらず、医療現場のタスクシフトやデジタル化は「岩盤」のように停滞している。在宅介護では、患者が苦痛を訴えても看護師が法的に医療行為を行えない場面が多く、医師の指示や処置が必須なため、適切なケアが遅れるジレンマがある。
特定行為は一部可能になったものの、医師の職域死守や医療過誤訴訟リスクへの懸念から抜本的な解決には至らない。アメリカのナースプラクティショナーのように診療や処方まで行う制度も日本では導入されにくい。
デジタル化も遅れ、医療界は未だ「紙とFAX」文化が根強い。個人情報保護への過剰な懸念やデータ悪用時の差別リスクを恐れるあまり、改革が阻害されているのだ。これにより
日本の医療はデジタル化が国際的に一周遅れ
の状態だ。オンライン診療が広まったのもコロナ禍という「外圧」があったからであり、平時に利用者目線の医療改革を進めることの困難さが浮き彫りになる事例と言える。
Q. 「良い病院」や「良い医師」をどう見極めればよいのか?ミシュランガイドのような評価は医療に適用できるのか?
医療の質評価は複雑であり、「ミシュランガイド」のような星評価や安易な「名医ランキング」は医療の本質にはそぐわない。商業目的のランキングは信頼性が疑問視される傾向にある。
聖路加国際病院循環器内科医の水野氏は、患者満足度と質の高い医療が必ずしも一致しない点を指摘する。丁寧に説明する医師は人気でも、治療技術は劣る可能性もあるためだ。中村氏も教育経済学の例から、「目先の評判だけでなく、長期的な視点での成果こそ重要」と説き、真の「良い医療」は時に耳の痛い忠告であっても、長期的に患者の健康に貢献するものだと主張した。
安易な評価制度は「クリームスキミング」を誘発し、軽度な症例ばかりを診る傾向を生む。結果、困難な病状を扱う病院が成績上不利になる矛盾も生じる。
見極め方としては、医療機能評価機構など公的機関や国際認証機関の評価を参考にすべきだ。また、若手医師には「医療もサービス」という意識が浸透しており、対話を重視する傾向にある。複合的な情報と医師とのコミュニケーションを通じて、自身に合った医療機関を選ぶ賢明さが求められる。
Q. 現役世代の医療費負担に対する不公平感は高まっているが、この課題に対しどのような解決策が考えられるか?
現役世代は、賃金が伸び悩む中で社会保険料負担が増加し、親の介護も始まり多重苦に直面している。人口の5人に1人が後期高齢者となる現状で、「昔は恵まれていた高齢者世代ばかり優遇され不公平」という不満は根深く、これは「年齢」という大雑把な基準での制度設計に起因する。
不公平感解消に向け、まず「ローバリューケア」、健康改善効果が薄い診療や薬(湿布、風邪薬など)の保険適用見直しが急務である。共助は「運悪く病気になった人を助ける」ものであり、何でも保険適用にすべきではない。
中村氏は、自治体により22歳まで無料の乳幼児医療費無償化の歪みも指摘した。年齢ではなく、病状の重さや経済力に基づき「困難な状況にある人」を助けるべきだと主張する。
不必要な保険制度の肥大化を抑制し、本当に必要な医療に公的資金を集中させること。これが現役世代の不満を和らげ、持続可能な医療制度への第一歩となる。
Q. 真に公平な医療負担を実現するための「応能負担」の原則とは何か?それを実現するために具体的に何が必要か?
持続可能で公平な社会保障の根幹は「応能負担」である。これは、年齢に関わらず、所得と資産の支払い能力に応じて医療費などを負担するという考え方だ。経済的余裕ある者が多く支え、困窮する者への支援を厚くすることで、社会全体の共助原則を再構築する。
応能負担の実現には、国による国民の所得と資産の正確な把握が不可欠である。中村氏は、「国は所得や資産を把握せず、年齢で区切る乱暴なやり方をしている」と厳しく批判した。高資産・低所得の高齢者と、低資産・中所得の若い世代が混在する中、現行制度は実情にそぐわない。マイナンバー制度があるにもかかわらず、その情報が所得と資産の把握、応能負担原則に活用されていない点は大きな問題だ。データに基づく政策決定により、
対象不明確な一律給付を排除
し、必要な人に必要な支援を届ける仕組み確立が求められる。
高額新薬の登場も医療費圧迫要因で、社会がどこまでカバーすべきか国民的議論が必要だ。自己管理や予防へのインセンティブ付与も医療費抑制に繋がる。武藤氏は、自助努力と共助のバランスの重要性を説き、「予防」「医療」「介護」を生涯通じた一貫システムとして再設計することの必要性を強調する。人生100年時代、支払い能力に応じた公平な負担と、困難な状況にある人への確実な支援が、社会保障全体を築くための最後の道となる。