PIVOT TALK BUSINESS
ジョブ型人事のリアル。年収ピークは40歳前後に
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2025年3月3日

日本で急速に広がる「ジョブ型人事」。ジョブ型になると、人事や年収はどう変わるのか?ふつうの会社員はジョブ型時代にどうキャリア戦略を考えるべきか?パーソル総合研究所の藤井薫・上席主任研究員に聞いた。 <ゲスト> 藤井薫|パーソル総合研究所上席主任研究員 電機メーカーの人事部・経営企画部を経て総合コン...
ジョブ型人事で40歳前後が収入のピーク?「累積貢献度からリアルタイム評価へ」専門家が語る厳しい現実
現在、日本企業の多くが「ジョブ型人事」への移行を進めている。従来の年功序列型から職務や成果を重視する制度へと変わる中、私たちのキャリアや収入はどう変化するのか。パーソル総合研究所の藤井薫・上席主任研究員に、ジョブ型人事の実態とこれからのキャリア戦略について聞いた。

Q: ジョブ型人事はどのくらい広がっているのですか?
少なくとも関心レベルでは企業の6割程度に広がっています。ジョブ型の中核である「職務給」(仕事に対して給料を払う)については、「役割給」と呼ばれる形を含めると、一般社員でも半分くらいの企業に導入されています。
政府も昨年「ジョブ型人事ガイドライン」を出して方針を示していますが、実態は20社の事例集のような内容で、解説なしでは理解しづらいものでした。
Q: ジョブ型人事制度導入で何が変わりますか?
最も大きな変化は、「累積貢献度を加味してくれていた価値観・評価処遇観からリアルタイム評価になる」ことです。
従来の日本型人事では、長く勤めていれば給料が上がるという仕組みでした。例えば同じ仕事をしていても、1年目と10年目では10年目の方が給料が高くなるのが一般的でした。これは「累積貢献度」を加味していたからです。
しかしジョブ型では「今現在の仕事」に対して給料が払われます。同じ仕事をしていれば、経験年数に関わらず同じ給料になる可能性が高まります。非常にドライな考え方ですが、これがジョブ型の本質です。
また、年齢に関係なく適材適所で人材を配置するため、若くても優秀な人には大きなチャンスが与えられます。反面、従来のように「順番待ち昇格」はなくなり、いわゆる「ミドルパフォーマー」(普通の会社員)は昇格機会が減少する傾向にあります。

Q: 役職定年はどうなりますか?
ジョブ型では年齢に関係なく適材適所で人材を配置するため、役職定年制度は廃止される動きがあります。しかし、これは必ずしも良いことばかりではありません。
従来の役職定年制度では、例えば55歳まで役職についていられるという保証がありました。しかし役職定年がなくなると、より早くポストオフ(役職から外れること)になる可能性も出てきます。
例えば40歳前で課長になったとして、次の昇格がない場合、課長のまま65歳の定年まで25年間も在籍することは現実的ではありません。おそらく10年程度で新たな優秀な人材にポストを譲る可能性が高まります。リクルートの言葉を借りれば「ベターな人材への入れ替え」が進むのです。これは企業としては当然の論理かもしれませんが、個人にとっては厳しい現実です。
Q: 40歳前後で収入のピークが来るというのは本当ですか?
残念ながら、マネジメント職にならない場合はその可能性が高いと考えています。
仕事の習熟度でいえば、1年目と3年目では明らかに3年目の方が高く、3年目と5年目でも5年目の方が高い傾向にあります。しかし5年目と10年目になると、人による差が大きくなり、一概に10年目の方が優れているとは言えません。
企業の採用では、基本的に「我が社の定型業務ができる人」を最低基準としています。この定型業務から企画業務へと移行する段階までは昇格しますが、その先の高度専門職やマネジメント職へ進める人は限られています。
給与体系を見ると、一般社員の給与レンジ(幅)は数万円程度しかないため、数年で天井に達します。マネジメント職にならず、特別な専門性も持たない場合、40歳前後で給与のピークを迎える可能性は十分にあります。
Q: マネジメント職と専門職の違いは何ですか?
ジョブ型人事では、管理職と専門職に明確な区別をつけています。管理職は責任が重く、実際にマネジメントをする人材を指します。一方、専門職はその分野の専門性を持った人材です。
従来の日本企業では「管理職層」という広い概念があり、実際にマネジメントをしていなくても「管理職層」として処遇される場合がありました。しかしジョブ型では、実際にマネジメントをしている人とそうでない人を明確に分け、前者に高い処遇を与える傾向があります。
ジョブ型導入の大きな理由の一つは、実際にマネジメントをしている管理職に適切な報酬を払うことにあります。これは良いことですが、一般社員層については「2の次、3の次」という側面もあります。

Q: 専門職になれば高い給与を得られますか?
専門職のハードルは非常に高いです。部長級の給与をもらえる専門職は「業界の第一人者」レベルが求められます。大企業でもそのような人材はほんの一握りです。課長クラスの専門職でも「1人で数人分の貢献ができる人」という基準があり、これを満たすのは容易ではありません。
実際の運用では「希少性」という軸も考慮されます。例えばIT職種のように市場で取り合いになっている職種では、課長級の給与を払わないと採用・維持できない場合、専門職として処遇することがあります。
営業職については専門職としての道が特に厳しいです。営業は1人で突出した業績を上げることが難しく、また人数も多いため希少性が低いと見なされがちです。優秀な営業マンは基本給ではなくボーナスで報いるという考え方が一般的です。

Q: ジョブ型時代のキャリア戦略はどうあるべきですか?
30代から40代にかけては、何かの専門家になっておくことが重要です。所属企業の肩書きがなくても別の場所で同じような価値を提供できるスキルを持っていれば、再現性のある能力があると評価されます。
40代から50代にかけては、プレイヤーとしてどこで活躍できるかを考える必要があります。65歳までの長いキャリアを前提とすると、50代以降もプレイヤーとして働くことがデフォルトになります。
収入を伸ばし続けたい場合は、マネジャーの道を選ぶ方が有利です。ジョブ型では、マネジメント職とそれ以外の差が明確になり、マネジメント職の方が収入面で優位になります。
もう一つの可能性は、「人の力を利用する」能力を磨くことです。マネジャーはポジションパワー(職位の権限)を使って人をつなげて仕事を進めますが、ポジションがなくても実質的に同じことができる人がいます。企業の枠を超えたネットワーキング力を持ち、何人分もの力を発揮できる人材には価値があります。これはポジションに紐づいていない個人としての強みになります。
ジョブ型時代のキャリアは、自分自身の市場価値を常に意識し、企業内の役職だけに頼らない専門性や人脈を築いていくことが重要です。