ECONOMICS101
人口減少で激変する日本経済(後編)
(103)
7,393回視聴
2025年2月27日

人口減少で、日本経済は激変する。リクルートワークス研究所の坂本貴志氏に、これから日本経済に起こる3つの変化を、データを元に予測してもらった。聞き手は第一生命経済研究所 首席エコノミストの永濱利廣氏。
日本経済の最大の問題は人口減少?専門家が語る未来の労働市場と産業構造
日本の人口減少が経済や社会に与える影響について、リクルートワークス研究所の坂本貴志氏と第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が語った対談からポイントをまとめました。人手不足、医療福祉産業の拡大、外国人労働者の増加など、これからの日本経済の行方について専門家の視点から解説します。

Q: 日本の労働市場はどのように変化していますか?
現在、日本の労働市場は人手不足が顕著になっています。これまで日本では女性や高齢者の労働参加が進んできましたが、今後は人口そのものが減少するため、労働力の確保が一層難しくなると予測されています。現状ではすでに構造的な人手不足の状態にあり、この傾向は今後も続くでしょう。
また、外国人労働者の数も近年大幅に増加しています。2022年の外国人労働者比率は3.0%で、労働者数は182万人に達しています。この増加傾向は、「日本の賃金が安いから外国人は来ない」という一部の専門家の見解とは反対の現象です。

Q: 日本最大の産業は将来何になると予測されていますか?
日本最大の産業は就業者数で見ると、医療・福祉になると予測されています。この分野は2003年から2023年の間に500万人から910万人へと約400万人も増加しており、突出した伸び率を示しています。労働力人口が増えた分の多くが医療福祉分野に吸収されてきました。
しかし、この傾向には課題もあります。医療福祉分野は労働投入量が大幅に増えているにもかかわらず、労働生産性はほとんど向上していません。これは、医療介護が本質的に労働集約的なサービスであり、AIなどによる効率化が比較的難しい業種であることが要因です。

Q: 医療・福祉が最大産業になることの経済的影響は?
医療・福祉産業が拡大し続けることには懸念があります。この産業は主に公的支援で成り立っているため、産業の規模が拡大するほど社会保障負担も増大します。労働者ベースで最大の産業になるだけでなく、付加価値ベースでもこの産業が最大になると、日本経済の成長にとって大きな課題となる可能性があります。
民間主導の成長ではなく、公的支援に依存した産業が経済の中心となると、財政負担が大きくなり、経済全体の活力が失われる恐れがあります。今後は、医療・福祉サービスの効率化を進めつつ、産業構造のバランスを保つことが重要になるでしょう。

Q: 企業の新陳代謝は今後どうなると予想されますか?
現在、日本企業の新陳代謝が加速しています。2023年には倒産件数が増加しており、市場からの退出が進んでいます。この背景には、賃金上昇によるコスト増加があります。これまで企業は安い労働力を活用してコストカットをする経営手法が可能でしたが、人手不足が続く中ではこの方法が難しくなっています。
また、日本の労働者のうち中小企業に属する割合は20年前の8割から現在は7割に減少しています。この傾向は、企業の統合や買収(M&A)の活発化によるものと考えられます。政府も九州型のM&Aなどを支援する動きを進めており、今後もこの流れは加速するでしょう。

Q: 外国人労働者の増加は日本経済にどのような影響を与えますか?
外国人労働者の増加は、労働市場の需給や賃金水準に影響を与えています。データによると、外国人労働者の賃金水準は日本人労働者よりも低く設定されていることが多く、これは外国人労働者が若い年齢層に集中していることも一因ですが、全体として労働コストを抑制する効果があります。
この状況は賃金上昇を抑制する要因となる可能性があり、日本人労働者の賃金にも影響を与えかねません。外国人労働者の受け入れ政策については、十分な議論が必要です。
Q: 人口減少は地域にどのような影響を与えますか?
人口減少は地域社会に大きな影響を与えます。多くの地域で人手不足が深刻化し、必要なサービスが提供できなくなる恐れがあります。その結果、住民はより便利な都市部へ移動する「足による投票」が行われると予想されています。
また、老朽化したインフラの維持コストも大きな問題です。すべての地域でインフラを同じように維持することは財政的に難しく、人が住む場所の集約化や選択と集中が重要になってきます。地方の存続をどう考えるかは今後の大きな論点になるでしょう。
Q: 人口減少に対して明るい見通しはありますか?
人口減少は一見すると暗い話題ですが、異なる視点から見ると必ずしも悲観的になる必要はないという見方もあります。例えば、日本における労働力人口の定義を15〜64歳ではなく、実態に即して20〜69歳とすれば、見方が変わる可能性があります。
また、国連の2100年までの人口予測によれば、日本の人口は減少するものの、ドイツやフランス、イギリスといった国々よりも多い水準を維持すると予想されています。さらに、インドやインドネシアなどの人口増加が続く国々との経済関係を強化することで、成長の機会を見出すことも可能です。
Q: 今後の日本経済に何が必要ですか?
専門家は、市場メカニズムに任せて自然な調整を進めることの重要性を指摘しています。その上で、医療福祉分野では薬剤師の作業効率化や介護の記録業務・見守り業務などをデジタル技術で省力化するなど、少ない人数で効率的にサービスを提供する方法を追求する必要があります。
地域間の医療費負担の格差にも注目し、医療費負担が高い地域での取り組みを改善することで、社会保障負担の軽減を図ることも検討すべきです。人口減少という前例のない課題に対して、画一的な解決策はありませんが、データに基づいた冷静な分析と柔軟な対応が求められています。