PIVOT TALK DEBATE
氷河期世代対策の予算はいらない
(59)
4,471回視聴
2025年2月27日

就職氷河期世代に関する議論が盛り上がっている。この世代は本当に割を食ったのか?予算をつけて支援策を打ち出す必要はあるのか?エコノミストの永濱利廣氏と、雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏に議論してもらった。 <ゲスト> 永濱利廣|第一生命経済研究所 首席エコノミスト 早稲田大学卒業、東京大学大学院経済...
世代間対立を超えて:就職氷河期世代問題の本質と未来志向の対策
就職氷河期世代への対策は30年続き、580億円の予算が投じられてきた。しかし現在も氷河期世代を強調する政策が必要なのだろうか。エコノミストの永濱利廣氏と雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏による対談から、世代を超えた本当の課題と解決策を探る。
「氷河期世代」という言葉はもう不要?
Q: 就職氷河期世代対策は現在も必要ですか?
就職氷河期世代対策として30年間で580億円もの予算が使われていることに対して疑問がある。世代を区切って対策を立てるのではなく、問題設定自体を変えるべきだ。現在の40代から50代の中には確かに苦労している層があるが、その問題は「氷河期世代だから」というより、「非大卒の非正規社員の男女」という別の切り口で捉えるべきだ。
また、近年の若い世代の非正規率も徐々に上がっており、氷河期世代だけを特別視するのではなく、世代を超えた雇用問題として捉えるべきである。本当に支援が必要なのは、就職の状況が厳しかった特定の世代というより、現在困難に直面している働き手全体だ。

AIによる職業の変化と必要な対策
Q: 今後AIの進展で職業はどう変わりますか?
技術の進歩により、特にパソコンの中で完結する仕事は大幅に減少するだろう。事務職や専門職の多くは今後必要なくなる可能性が高い。このような構造変化に対応するためには、転職支援の教育システムを充実させることが重要だ。
最近では地方の工場などで高卒者を採用する動きがあり、大学出て一般事務職に就くよりも工業高校から工場に就職した方が給料が良くなってきている。手に職をつける方向へ労働力をシフトさせていくことが望ましい姿だと考えられる。

Q: 教育システムはどのように変革すべきですか?
現在の日本の教育システムよりも、ドイツなどのマイスター制度のように、若いうちから職業系の教育に進める道を用意することが必要だ。全員が大学に進学するシステムではなく、職業訓練や実践的な技術を身につける教育の道を作ることが重要だ。
また、現在多数ある大学のうち、需要の少ない大学を職業訓練の場に業態転換させるという案も有効だろう。大学を新設するよりも既存の教育機関の活用が経済的にも効率的だ。
心の健康と就労支援
Q: 就労困難者の中には精神的な問題を抱える人も多いのでは?
就職氷河期世代を含む現在の40代から50代では、職場の環境や雇用状況から精神的に病んでしまう人が多い。例えば、採用抑制の影響で中間管理職になっても部下がいないため、管理業務と実務の両方を担わなければならず、大きな精神的負担を抱えるケースが見られる。
このような問題に対応するためには、心の健康をサポートする体制も必要だ。サポートステーションなど、精神的な問題を抱えた人たちを受け入れる場所が一定の効果を上げており、そうした場所を通じて就労支援を行うことも重要だ。
女性の雇用と柔軟な働き方
Q: 40代以上の女性の雇用状況と対策はどうあるべきですか?
現在の40代から50代の女性では、パート主婦が多い。良い大学を卒業しても、結婚や出産を機に退職するケースが多かった。こうした女性たちを労働市場に取り込むために、柔軟な働き方ができる正社員制度の導入が必要だ。
例えば、週休4日制の正社員制度や、都合の良い時間に働ける正社員制度など、より自由度の高い働き方ができる正社員の形を増やしていくべきだ。非正規と正規という二分法ではなく、様々な勤務形態を持つ正社員という形に移行していくことが望ましい。
人口構造と将来の課題
Q: 第二次ベビーブーマー世代が高齢化すると、どのような社会問題が生じますか?
現在のシニア層の貧困率は約2割だが、人口の多い第二次ベビーブーマー世代がシニアになった場合、同じ貧困率でも貧困者数は現在の倍程度に増加する可能性がある。また、この世代が今後親の介護に直面する中で、様々な社会問題が生じると予想される。
こうした将来的な課題に対応するためには、健康で長く働ける社会環境を整備することが重要だ。定年延長や、年金の支払い期間を60歳から65歳に延長するなどの対策も検討すべきだ。時間をかけて働くことで、資産形成の遅れを取り戻すこともできる。
ジョブ型雇用と新しい正社員像
Q: 非正規雇用問題を解決するための雇用制度改革とは?
非正規と正規という区分自体が差別的な意味合いを持つようになっている。これを解消するためには、ジョブ型雇用の導入が有効だ。職務を明確に定義し、その職務に応じた雇用契約を結ぶことで、柔軟な働き方と雇用の安定を両立させることができる。
例えば、4人で行っている仕事を5人で行い、その分2割休みを増やすという形態を取れば、企業の人気も高まるだろう。このように、すべての従業員を正社員として扱いながら、働き方のグラデーションをつけていく方向が望ましい。
政策転換の方向性
Q: 就労支援政策はどのように転換すべきですか?
「氷河期世代」という切り口をやめ、真に困っている労働者を「就労困難者」として支援する政策に転換すべきだ。特定の世代を対象とする支援ではなく、職業教育やリスキリングを通じて、誰もが新しい仕事に就ける環境を整備することが重要だ。
特にホワイトカラーよりも、手に職をつける技術職の訓練に重点を置くべきである。マシニングセンターの操作など、実践的な技術を教える職業教育を充実させることで、本当に困っている若い世代を支援することができる。
政府が提唱しているリスキリングについても、現在はサラリーマンの能力向上に重点が置かれているが、就労困難者が新しい職業に就くためのリスキリングという視点も必要である。
まとめ
「氷河期世代」という括りで政策を立てることをやめ、世代を超えた就労困難者への支援に転換すべきである。特に、職業教育の充実、柔軟な働き方ができる正社員制度の導入、ジョブ型雇用への移行などが重要だ。AIによる職業構造の変化も見据え、時代に合った雇用政策を進めていくべきである。