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財務分析:日産のキャッシュはいつまで持つか
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2025年2月21日

日産の業績・財務が悪化しているのはなぜか?今後、キャッシュはどれだけ持つのか?日産の過去と今を財務の観点から、財務戦略アドバイザーの田中慎一氏に分析してもらった。
日産はいつまで持つ?財務戦略アドバイザーが解説する「4割減の販売台数」と「6%に跳ね上がった借入金利」
日産自動車の業績不振が続いている。ピークだった2018年3月期から販売台数が4割も減少し、現在の財務状況は楽観視できる状況ではない。日産はこの状況をどう打開していくのか?今回は財務戦略アドバイザーの田中慎一氏に、日産の財務分析をしてもらい、今後の展望について話を聞いた。

日産の苦境を示す「一言」とは?売れていないという現実
Q: 日産の現状を一言で表すとどうなりますか?
日産の現状を一言で表すと「売れていない」に尽きる。日産の販売台数のピークは2018年3月期で577万台だったが、直近では340万台まで落ち込んでいる。わずか数年で4割も減少しており、特に北米市場では4割減、中国市場では半減という厳しい状況だ。
この状況の背景には、日産がEV(電気自動車)に振り切った戦略がある。一方でトヨタ自動車は、ハイブリッド車を軸としたマルチパスウェイ戦略を展開し、現在の自動車市場で成功している。日産はEVシフトに賭けたが、市場環境が追いつかず、結果として売れない状況に陥っている。
「内田体制」で業績は本当に悪化したのか?円安とコロナ特需の錯覚
Q: 内田誠CEOの交代劇が話題になっていますが、現在の経営陣下での業績は実際どうなのでしょうか?
内田体制の日産を見ると、売上高や営業利益は一見回復して見える。しかし、これは円安とコロナ後の特需による「錯覚」だ。販売台数の落ち込みは止まっておらず、改善されていない。
収益性を見ると、日産の1台あたりの粗利(あらり)は直近で58万円、粗利率は14%程度だ。一方、トヨタは1台あたり120万円、テスラは140万円の粗利を出している。トヨタの粗利率は25%を超えており、この差は歴然としている。このまま行けば、日産単独での存続は非常に厳しい状況と言わざるを得ない。
カルロス・ゴーン時代から始まっていた衰退の兆し
Q: 日産の業績低迷は、いつ頃から始まっていたのでしょうか?
日産の営業利益のピークは2006年3月期、つまり約20年前だ。それ以降、業績は右肩下がりの傾向にある。カルロス・ゴーン氏のCEO在任中後半から既に業績悪化の兆候は見られていた。
ゴーン氏は2011年に「生産能力を800万台に拡大する」という野心的な計画を発表し、実際に720万台まで拡大した。しかし、販売が追いつかず、結果として過剰な生産能力を抱えることになった。規模拡大を目指して投資を続けたが、利益とキャッシュが伴わない状態が続いてしまった。
また、コストカットの過程で、製品の魅力を損なう削減も行われた可能性がある。これにより、価格を下げないと売れない状況になり、持続可能なビジネスモデルを構築できなくなってしまった。

日産は本当に「1年以内に資金ショート」するのか?
Q: メディアでは「日産は1年以内に資金ショートする」という報道もありましたが、実際はどうなのでしょうか?
この報道は過度に悲観的だ。現在、日産のバランスシート上には、すぐに換金可能な有価証券を含めて約2兆円の現金がある。また、銀行からのコミットメントラインもあるため、今年や来年に突然資金ショートする可能性は低い。
ただし、2026年3月期には1兆3000億円の長期借入金と約8000億円の社債の返済期限が到来する。通常、健全な企業であれば借り換え(ロールオーバー)で対応するが、日産の信用格付けが低下していることが懸念材料だ。
特に、S&Pによる格付けが「BB」(投資非適格級)になったことで、特に海外市場での新規社債発行が難しくなっている。国内市場では一定程度の社債発行は可能だが、全額をカバーするのは厳しい状況だ。
日産の借入金利はどれほど悪化しているのか?
Q: 格付けの低下で、日産の資金調達コストはどう変化していますか?
日産の借入金利は急騰しており、直近では6%程度まで上昇している。この水準は日本の大企業、特にプライム企業ではほとんど見られない高さだ。投資非適格級の格付けとなると、新規の社債発行では更に高い金利(3〜5%以上)が必要になるだろう。
日産のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のスプレッドも上昇しており、現在は約200ベーシスポイントとなっている。これは楽天やソフトバンクグループなど、格付けが低い企業と同等、もしくはそれ以上の水準だ。ただし、現時点では500〜600ベーシスポイント以上の「危険水域」には達していないため、すぐに破綻するリスクは低い。

日産はこの危機をどう乗り切るべきか?
Q: 日産はこの状況をどのように打開すべきでしょうか?
日産が単独で生き残るのは非常に難しい。今後5年間で電動化・知能化に2兆円、10年で4兆円という大規模な投資が必要とされる中、日産の財務状況ではこれを単独で実行するのは困難だ。
選択肢としては、やはりホンダとの統合が最も現実的だろう。一度は交渉が決裂したが、日産の現状を考えれば再交渉の可能性は高い。
もう一つの選択肢として、プライベートエクイティファンド(PEファンド)が日産を買収し、再建した上でホンダやその他の自動車メーカーに売却するというシナリオも考えられる。ファンドにとって「出口」が見えている案件は魅力的であり、専門家による迅速な事業再編が行われる可能性がある。
いずれにせよ、日産が採るべき戦略は、「すべてをやる」というフルラインナップ戦略から脱却し、得意分野に絞った事業展開に転換することだ。かつての日産は「スカイライン」や「フェアレディZ」などの象徴的な車種があったが、現在はその特色が薄れている。製品の魅力を取り戻すことが重要だ。