
フジテレビ問題の本質とは?メディアのSNS民化とコーポレートガバナンス
フジテレビ問題の本質とは?メディア業界のコーポレートガバナンスと未来
フジテレビの不祥事問題が大きく報道されているが、その本質はどこにあるのか。専門家が語るメディア業界の現状と課題、そして将来像について深掘りする。


Q. フジテレビ問題の本質は何だと考えますか?
フジテレビの問題には複数の層があります。第一に、タレントと元女性社員の間のトラブルという個別事案。第二に、フジテレビの組織がこの問題にどう関与したか。第三に、女性社員を接待要員として使うようなカルチャーがあったかどうか。第四に、コーポレートガバナンスやコンプライアンスの観点から見て適切だったか。
これらが混同して議論されていることが混乱を招いています。しかし根本的な問題は、組織としてのコーポレートガバナンスの欠如です。社員が被害を受けた場合、一般企業であれば事実確認をして被害者を保護するという適正なプロセスがあります。しかしフジテレビではこのプロセスが機能していなかった。
さらに問題なのは、報道する側のメディアもSNSの民のようになってしまい、独自の取材に基づかない感想や正義を述べるだけになっていることです。結果として「何がファクトなのか」が消えてしまいました。

Q. メディアの取材不足が指摘されていますが、具体的にどのような問題があったのでしょうか?
記者会見に集まった記者たちは、誰も独自取材をしていませんでした。例えば事件そのものへのフジテレビの関与は取材が難しいとしても、フジテレビ社内に接待文化があったかどうかは、匿名条件で社員に取材することは可能だったはずです。
また、今回の問題でフジテレビが最も動いたのは、広告主が次々と広告を引き上げたタイミングでした。約70〜100社が広告を引いたと言われていますが、なぜ広告を引いたのか、その理由を広告主に取材した記者はほとんどいませんでした。
本来ジャーナリズムの基本は、自分で一次情報にあたり、それをもとに質問することです。しかし今回はそれができていませんでした。これはメディアがSNS的なものに毒されてしまった証拠でもあります。ニュースがワイドショー化し、第一次情報をSNSから引っ張ってくることが当たり前になっています。
Q. フジテレビのコーポレートガバナンスについて、具体的にどのような問題点がありましたか?
一般企業のスタンダードとして考えると、社員がハラスメントを受けた場合、まず事実確認を行い、被害者の保護を最優先します。その上で組織としての対応方針を決定するプロセスがあります。
しかしフジテレビでは、このような適正なプロセスが機能していませんでした。コンプライアンス部や外部の弁護士による事実確認も行われなかったようです。これは自社の従業員に対する安全配慮義務を果たしていないということになります。
興味深いのは、この問題が起きたのが2023年6月、つまりBBCがジャニーズ事件を報道して3ヶ月後だということです。ジャニーズ問題では広告主が番組から一斉に手を引いたことで、メディアの対応が一変しました。そのタイミングでこうした問題が起きたということは、フジテレビがジャニーズ事件から何も学んでいなかったということを示しています。
Q. 20年前のライブドア事件と今回の問題には何か関連性がありますか?
20年前、ライブドアがフジテレビの親会社である日本放送の株を取得しようとした際の交渉担当者だった塩野氏によれば、当時のフジテレビ側の交渉相手は三菱商事出身のビジネスパーソンでした。その人物が後の富士山麓ビルなど不動産ビジネスを牽引したということです。
皮肉なことに、この不動産ビジネスが成功したからこそ、フジテレビの体制が維持されてきたという側面があります。現在のフジテレビの収益構造を見ると、放送メディア収入は右肩下がりですが、不動産事業が伸びています。
本来、通信と放送の融合という流れの中で、テレビ局は視聴者を顧客にするという転換を図るべきでした。しかしスポンサー商売という古い体質が足かせとなり、その転換ができませんでした。
Q. メディア業界全体としての構造的な問題は何でしょうか?
放送や新聞は特権的な規制業種であり、インフラ産業でした。しかし、インターネットの登場によりコンテンツがデジタル化され、巨大なインフラがなくても誰でも情報発信ができるようになりました。
この変化に対応できず、パラダイムシフトが起きた瞬間に、それまでの特権が足かせになってしまいました。その結果、新聞やテレビは新しいマーケットを取り損ね、後発のNetflixやAmazonのようなグローバル企業に市場を奪われています。
また、メディアのジャーナリズム機能も弱体化しています。ジャニーズ問題でも今回のフジテレビ問題でも、メディアを動かしたのはジャーナリズム精神ではなく、広告主の動きでした。これは日本のメディアのマネジメントにジャーナリズムが根付いておらず、商業主義が中心になっていることを示しています。
Q. コンテンツビジネスの成功例として挙げられる事例はありますか?
サイバーエージェントが運営するAbemaは2016年に開始し、長く赤字でしたが、2022年のカタールワールドカップの放映権を買い切るなど大きな投資を行い、2024年に14億円の黒字を達成しました。特に注目すべきは、その収益の38%がアニメであることです。
また、「鬼滅の刃」も重要な例です。このアニメは従来のような地上波の主要局ではなく、東京MXやBSイレブンといった小規模局での放送と、動画配信サービスを中心に展開しました。アニメ放映前は単行本の累計発行部数が350万部でしたが、半年後には1200万部、そして1年後には1億部を突破しました。
重要なのは、このような成功事例において、地上波テレビの役割が限定的だということです。特に若い世代はNetflixやHuluなどの動画配信サービスを通じてコンテンツを消費しており、テレビ離れが進んでいます。
Q. メディア業界の将来はどうなると予想されますか?
メディア業界、特にテレビ局は古い広告ビジネスモデルから脱却できないまま20年が経過し、その間にNetflixやAmazonのようなグローバル企業に市場を奪われています。
今後はコーポレートガバナンスの強化と、ビジネスモデルの転換が求められます。特に経営陣の問題は大きく、現在のメディア企業の経営者はコンテンツでヒットを生んだプロデューサー出身者が多いですが、今後はビジネス感覚を持った経営者が必要になるでしょう。
また、視聴者を直接の顧客と捉え、アカウントを獲得するといった戦略も重要になります。放送と通信の融合が進む中、どのようにして視聴者との関係を構築し、収益化するかが課題となります。