PIVOT TALK BUSINESS
家を買うなら2030年以降。新時代の住まい選び
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2025年1月21日

高騰が続く都心のマンション価格。今の「家が買えない」状況は今後も続くのか?タワマンバブルに崩壊の萌芽はあるのか?新時代の「住まい選び」は何を重視すべきか?オラガ総研の牧野知弘代表に話を聞いた。 <ゲスト> 牧野知弘|オラガ総研 代表 1959年アメリカ生まれ。東京大学卒業後、第一勧業銀行(現みずほ...
タワマンバブル崩壊後、住宅市場はどう変わる? 2040年には「住宅ローンって何?」の時代に
世代交代と社会変化が進む中、不動産市場の未来はどうなるのか。不動産投資の専門家・牧野知弘氏が語る、これからの住まい選びと街づくりの新時代。

Q. タワーマンションバブルが崩壊したら、家は買いやすくなりますか?
家を買いやすくなるのは、むしろ2030年以降です。東京都や首都圏で大量に人がいなくなり、相続案件がどんどん出てくるため、23区内の郊外にある戸建て住宅などが、今よりもはるかに手に入りやすくなります。
現在、東京都の空き家は約90万戸あり、全国900万戸の空き家の1/10が東京にあります。23区内では世田谷区が空き家数トップで、個人住宅の空き家も非常に多い状況です。この傾向はさらに加速していきます。
2040年頃になると、今の小学生(アルファ世代)が社会人になる頃には「住宅ローンって何?」という時代になるかもしれません。住宅が非常に安くなるため、ローンを組まなくても買えるようになるのです。


Q. 現在家を買おうとしている人は、どうすればいいですか?
焦る必要はありません。家は単に金銭的な理由だけで買うものではないので、自分が気に入った場所や街に住みたいという思いがあり、ローンを組んでも返せる範囲であれば買っても構いません。
特にパワーカップルは有利で、片方だけの収入で返せるくらいのローンを夫婦でシェアすれば、どちらかの収入が減っても余裕で返せます。避けるべきなのは夫婦ともに「つま先立ち」になるほどのフルローンです。
不動産投資の世界から見ても、現在の市場は「パツンパツン」の状態です。金利が上がる中で期待利回りが下がり、インフレで賃料が上がるという期待も、空き家・空室が多い中では特定のエリアでしか実現しないでしょう。

Q. これからの住まい選びで最も重要なポイントは何ですか?
自分の生活とライフスタイルに合った街やエリアを選ぶことが最優先です。建物は優先順位でいうと2番、3番、4番くらいにすぎません。
従来は「会社が新宿にあるから新宿まで何分で着くか」「駅まで何分か」「急行が止まるか」といった通勤の利便性が最大の基準でした。しかし、現在はリモートワークの普及により、東京都の調査では約45%の企業がリモートワークを実施し、そのうち67%が週3日以上行っています。鉄道会社の通勤定期利用者数も、コロナ前の2019年と比べて2023年は8割程度にしか戻っていません。
この変化は今後も続くでしょう。30年や35年の住宅ローンを組む場合、その期間が終わる頃には働き方や生活スタイルが大きく変わっている可能性が高いのです。
Q. どのような街選びが理想的ですか?
自分のライフステージに合った街を選ぶことが重要です。海が好きな人は海辺の町に住み、山が好きな人は山の方に住むなど、自分の趣味や嗜好に合わせた選択ができます。
理想的なのは、「自分はこの街の住民なんだ」と誇りに思える街です。日本の街が育たない大きな原因は「引き継がれていかない」ことにあります。少なくとも祖父、父、自分という3世代が同じ町で暮らし、同じ小学校に通うなど、会話が繋がるような街づくりができれば理想的です。
例えば湘南エリアでは、卒業して出ていった子どもたちが就職して家を持つ時にまた戻ってくるケースが多いです。お店に行けば出身中学校が同じ人がいるなど、「ゆるい繋がり」があります。このように街に住むことが日々の生活の中で幸福感をもたらす「ウェルビーイング」な状態が大切です。

Q. 街づくりの面白い事例はありますか?
立川のグリーンスプリングスは注目すべき事例です。立川駅北口の約4万平米の土地を地元の立川飛行機という会社が開発しました。都市計画上、住宅が建てられない土地だったため、大手デベロッパーはマンションが建てられないという理由で参入しませんでした。
立飛は住宅を建てずに、容積率500%のところを150%しか使わず、エリアの中心に1万平米もの広場を設け、その周りに地上4階建て程度の商業施設やオフィス、劇場ホール、ホテルなどを配置しました。広場には自然を生かしたカスケードやビオトープを作り、子どもたちが遊べる空間になっています。
立飛の社長は「儲からないかもしれないが、立川を中長期的にどれだけいい街にするかという挑戦をしている。20年30年で元が取れればいい」と考えています。このように短期的な利益だけでなく、街の価値を長期的に高める取り組みが理想的です。

Q. 今後はどのような街づくりが増えるでしょうか?
これからは、それぞれの街が独自のコンテンツを確立し、住民がその街を誇りに思えるような場所が人を集めるでしょう。例えば、ペット好きが集まる「ワンワンヴィレッジ」や「にゃんにゃんヴィレッジ」のような特定の嗜好を持つ人たちのためのコミュニティができる可能性があります。
また、3世代混ぜこぜの町づくりも興味深い例です。金沢では学生がお年寄りのお世話をすると家賃が安くなるシステムがあります。お互いが補助し合う仕組みを一つの村の中でシステム化していくことで、新しい形の共同体ができるでしょう。
エンターテイメントを街の核にしていくのも注目されています。大手デベロッパーだけでなく、中小の不動産業者も知恵を結集して新しいコミュニティを作ることで、日本の不動産の未来は多様化していくでしょう。
Q. 大手デベロッパーとは違う視点での街づくりは可能ですか?
大手デベロッパーは株主への配当など短期的な利益を優先せざるを得ないため、長期的な視点での街づくりは難しい面があります。現在のデベロッパーは「国際競争力を確保する」「国際交流の場にする」といった似たようなキーワードを使っていますが、実際にはマーケティングの視点が不足しています。
一方で、立飛のような地元に根ざした企業や、住民が主体となって街づくりに参加するケースもあります。不動産のハードウェア(建物)だけでなく、その中で何をするかというソフトウェア(コンテンツ)がこれからの時代には重要になります。
専門家やアーティスト、文化人などを含むプロジェクトチームを作り、美術、芸術、文化などさまざまな側面から街のソフトウェアを作り込んでいくことが、これからの開発のテーマになるでしょう。
資本主義の論理だけでなく、ウェルビーイングを重視した街づくりが、長期的には持続可能な街を作り出すのです。