PIVOT TALK BUSINESS
真のオタクのすすめ。孤独の快楽を身につけよ【宇野常寛】
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2025年1月14日

プラットフォーム資本主義が拡大する世の中で、承認欲求に飲み込まれず、自分の物語を持って生きるために何が大切なのか?新著の『庭の話』を通して、「制作の快楽」という選択肢を提示した批評家の宇野常寛氏に話を聞いた。 <ゲスト> 宇野常寛|批評家 1987年生まれ。批評誌<PLANETS>編集長。著書に『...
孤独と庭の効用:宇野常寛が語る「現代人のための空間」
人々はスマホを手放せず、常に誰かと繋がっている現代社会。そんな中で「孤独になる場所」の大切さを批評家の宇野常寛氏が語りました。なぜ人は「何者でもない」時間を必要とするのか。「庭」の概念から見る新しい生き方の提案とは?

Q. 現代人に「孤独になる場所」がないとはどういうことですか?
情報プラットフォームの力が強すぎる現代では、電車に乗っている時もカフェで一人でいる時も、常に誰かと繋がっている状態です。最悪の場合、「界隈の空気」を気にしながら生活しています。
人は孤独になる場所を失っているのです。孤独な時間というものは、人と繋がることが気持ちいいのと同じくらい、匿名的な自分になって一人でいることも気持ちいいはずです。私にとって孤独な時間はすでに快楽になっています。
Q. 孤独を快楽と感じる人とそうでない人の差はどこから生まれますか?
これは経験です。特に「オタク」と呼ばれる人々は、10代くらいまでに圧倒的な力でフィクションの創作物に触れ、元の状態に戻れなくなってしまった人たちです。
本当のオタクは、自分の外側にある素晴らしいものに対して祈るように向き合います。自分を飾るナルシスティックな方向ではなく、外側の素晴らしいものに没頭する経験を持っている。オタク力と孤独力は交わるところがあるのです。

Q. 「庭」という概念で何を表現しようとしていますか?
庭は日本語の古い意味では「場所」と同じです。農作業をしたり、家事をしたり、神様に祈る場所だったりと、何かをするための場所を指します。特に「人間ではない物音と触れ合うための場所」が庭なのです。
現代では共同体に対してオルタナティブなコミュニティを作ることで対抗しようという議論が主流ですが、それに違和感があります。むしろ人間から認められるのではなく、人間以外の物事とコミュニケーションすることで世界との関わりを感じる回路を強化すべきだと考えています。

Q. 孤独を経験する機会をどのように作れますか?
これは偶然の出来事しかないと思います。人間は自分が自覚している欲望を検索して見つけると満足しますが、横から襲われるような偶然の出会いをした時に心の深いところまで入り込まれ、心身が変わります。
そういった偶然の出会い、自分が自覚していない欲望を掘り起こされるような場所が必要です。それを私は比喩的に「庭」と呼んでいます。かつて90年代の雑誌文化が担っていたような偶発性をSNS時代にどうインストールしていくかが大きな課題です。
Q. かつての商業空間は「庭」としての機能を持っていたのですか?
80年代90年代は日本人が買い物の快楽を覚え始めた時代でした。インターネットもない時代、何かを買いに行くと、目的以外のものも目や耳に入り、次々と欲望が掻き立てられていました。
そこでは偶然いろんなものに出会え、誰であろうと1000円出せば1000円のものが買える平等な場所でした。何者でもない自分になれる場所だったのです。しかし現在はGoogleで検索すれば欲しいものが正確に見つかり、Amazonや楽天で買い物が完結するため、その機能が失われています。
Q. 現代の「庭」的な場所をどう作れますか?
「静脈系」が重要だと考えています。「動脈系」で物を作る産業に対して、「静脈系」は捨てる系の産業です。物を捨てたり、メンテナンスしたり、排泄するといった活動は、意識して高く取り組もうとしなくても必ず行わなければならないことです。
例えばゴミの分別や、単身者が増えている現代では家事を家の外にアウトソーシングするランドリー喫茶のような場所が公共空間として捉え直されると、街は豊かになります。
もう一つは「働く」ことです。オフィスより街のカフェで仕事をした方が気持ちいいのは、自分の仕事が閉じられた共同体の中ではなく社会に意味があるものだと実感しやすいからです。高層ビルよりもホテルのラウンジやカフェ機能のある場所で働くことで、雑音が入り、世界観が広がります。

Q. 資本主義と「庭」の概念は相反するものですか?
全く相反するものではありません。資本主義プラス再分配が現時点では最良の解決策だと考えています。「帰ってきたウルトラマン」の第33話「怪獣使いと少年」を例に挙げると、共同体からの排除に対して、資本主義はお金があれば誰でも等しくパンを買えるという解放をもたらします。
ただし、資本主義の中で何者かになりたいという欲望と同時に、何者でもありたくないという欲望も人間には存在します。この後者の欲望にアクセスできていないことが現代の問題です。「庭」の概念は資本主義をうまく利用してより良い社会に導くための提案なのです。
Q. 政治に関するメディアの問題点は何ですか?
政治コンテンツが人気を集めるようになると、問題そのものではなく問題についてのコミュニケーションに全振りするインセンティブが高まります。効率よく注目を集めるには、主流派の意見に対して強い調子でイエスかノーを言うのが簡単だからです。
こうなると人間は問題そのものについて考えるのではなく、周りをキョロキョロしながらどちらにつくと自分が強く賢く見えるかを考えるようになります。それは短期的には再生数を稼げても、長期的には誰も得しない状況に陥ります。
政治は他人の物語であり、観客になりがちです。自分の物語をしっかり持った上で世の中をどうするかを考える順序が正しいのです。物作りなどを通して自分をちゃんと確立することが大切なのです。