PIVOT CAREER
BBCキャスターに聞く キャリアの築き方
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2025年1月13日

日本人初のBBCレポーター・大井真理子氏は三児の母でもある。子育てとジャーナリストとしてのキャリアを両立させる秘訣を聞いた。 <ゲスト> 大井真理子|BBCワールドニュースキャスター 1981年東京都生まれ。BBCニュース日本人初のレポーター兼プレゼンター。シンガポールを拠点に朝のニュース番組を担...
「日本人初のBBCレポーター大井真理子氏に聞く、海外メディアのキャリアと子育ての両立」
キャスターとしての顔だけでなく、記者、プロデューサーとマルチに活躍する大井真理子氏。日本のテレビ局とは異なる働き方で18年間BBCで活躍し続ける彼女に、キャリア形成と子育ての両立について話を聞いた。

Q. BBCでの役割はどのようなものですか?
BBCニュースチャンネルで平日の朝放送している「ニュースデイ」と「ビジネスデイ」という番組のキャスターやレポーターが主な仕事です。また、BBCラジオへの経済ニュース報道や、個人的な企画として日本の経営トップへのインタビューも行っています。自らリクエストを出し、インタビューを取材、編集して、テレビ、ラジオ、ウェブサイトの英語・日本語記事まで一貫して担当することもあります。他にも30分番組で日本特集を担当することもあり、多岐にわたる業務を行っています。
Q. 日本のテレビ局とBBCの働き方の違いは何ですか?
BBCを含むイギリスのテレビ局では、キャスター、レポーター、プロデューサーといった役割の区別があまり厳密ではありません。基本的に全員がジャーナリストとして雇われ、様々な業務を担当します。契約上のタイトルもジャーナリストやシニアジャーナリストで、その上にエディター(編集者)というマネジメント職があります。
対してアメリカのテレビ局は、キャスター、レポーター、プロデューサーの役割がより明確に分かれており、日本のテレビ局の構造に近いです。BBCではニュース発生時には、テレビ出演だけでなく、ラジオ担当や記事執筆も同時に行うことが一般的です。
Q. キャスターになるには特別な採用があるのですか?
BBCでは特にキャスターとして採用することはほとんどありません。まずジャーナリストとして入社し、スクリーニングテストを受けます。上司の前でニュース原稿を読んだり、急な速報時の対応力をテストされます。世界中の情勢をある程度把握していることが求められますが、全てに精通している必要はなく、自分の得意分野があることが重要です。
Q. キャリア形成において転機となった出来事は何ですか?
大井氏は入社後約1年で、誕生日の特別企画としてウェブサイト用の番組に出演する機会を得ました。そこで認められて徐々にレポーター業務を任されるようになりました。また、ロンドン勤務になって1ヶ月後に第一子の妊娠が発覚したことも大きな転機でした。
妊娠による自身のキャリアへの影響を心配しましたが、上司から「毎日の小さなニュースではなく、東京オリンピックのような大きなイベントに集中しなさい」というアドバイスを受けました。それを機に、東京オリンピックの担当を何年も前から積極的に希望し続け、実現させました。

Q. 自分から仕事を取りに行く姿勢はどこで身につけたのですか?
オーストラリアの高校・大学時代に、自分でインターンシップなどの経験を獲得する必要があったことが大きいです。現地の友人たちは親や親戚のコネがある中、コネがなかった大井氏は自ら行動する以外に方法がありませんでした。
例えば、友人がお掃除のバイト先でテレビ局のディレクターから名刺をもらってきてくれたことをきっかけに、毎週のようにメールを送り続けて、最終的にインターンの機会を得ました。この経験から、自分を売り込むことに抵抗がなくなりました。

Q. 3人の子育てとキャリアの両立は、どのように実現していますか?
大井氏は「シンガポールだから可能だった」と率直に語ります。シンガポールではヘルパーさんを雇える環境があり、彼女の助けなしには両立は難しかったでしょう。急な速報対応で出張が入った時に、家に大人が誰かいるという状況は非常に助かりました。
また、子供の成長に合わせて働き方も変化させています。小さい頃は肉体的なケアが必要でしたが、小学生になると学校での悩み相談など精神的なサポートが重要になりました。朝早くからの番組担当を外してもらい、子供たちと夕食を共にできる時間帯に働くようシフトを変更したこともあります。
Q. 子育てとキャリアの両立で大変だったことと、乗り越えた方法は?
子供が小さい頃は、オムツ替えや寝かしつけなど自分がその場にいなければならないことが大変でした。BBCでは3人子育てをしながら働く女性は少なく、不安を感じることもありましたが、上司から「3人子供がいるお父さんはたくさんいるのに、なぜお母さんはできないと思うの?」と言われ、考え方が変わりました。
また、報道の仕事は「いつでも行きます」と言えなくなる葛藤もありました。例えば、香港のデモ発生時に生後間もない子供を抱えながらも現場に行きたいと強く思った経験がありました。しかし「必ず次のチャンスはある」という上司の言葉に励まされ、徐々に受け入れられるようになりました。
最近では後輩が出張に行くことを「よかったね」と思えるようになり、精神的な余裕も生まれています。

Q. メディアの変化についてどう感じていますか?
大井氏が入社した約20年前から、「テレビは終わる」という話がBBC内であり、実際に大きな変化が起きています。以前はテレビの夕方7時のニュース番組が最優先されていましたが、今はウェブサイトのライブページをリアルタイムで更新することが最も重視されています。
現場からの情報をいかに早くデジタルプラットフォームに送れるかが求められるようになり、会社の採用方針も変わっています。テレビとデジタルの立場が完全に逆転し、BBCの戦略も数年前から大きくシフトしています。