PIVOT TALK BUSINESS
【年金のリアル:Q&A(後編)】年金制度の残された課題は何か?
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2025年1月10日

複雑でわかりにくい年金制度。視聴者からの疑問に対して、雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏と、社会保険労務士の高橋義憲氏にQ&A方式で解説してもらった。 <ゲスト> 海老原嗣生|雇用ジャーナリスト 大手メーカーを経てリクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画推進、人事制度設...
誰も教えてくれない年金の真実 - 厚生年金拡大から壁撤廃まで
パート勤務の方も厚生年金に加入できるようになり、毎月30〜40万人が新たに加入する流れが進んでいる。専門家たちが語る年金制度の実情と、今後の改革ポイントを詳しく解説。


Q. パート労働者の厚生年金適用拡大はどのように進んでいるのですか?
現在、パート労働者への厚生年金の適用拡大が進行しています。週20時間以上働いていれば、50人以上の企業では厚生年金に加入することが義務付けられるようになりました。これは今年から変更された制度で、それまでは100人以上の企業が対象でした。
この適用拡大により、毎月30万人から40万人が新たに厚生年金に加入する仕組みになっています。さらに将来的には、週10時間までの労働者にも拡大していく可能性があります。
Q. 厚生年金に加入するメリットは何ですか?
厚生年金に加入することで、将来の年金額が増えるだけでなく、様々な保障が手厚くなります。遺族年金や障害年金が充実し、健康保険もセットでついてきます。病気や怪我で働けなくなった場合の傷病手当金なども受け取れるようになります。
特に、パートで家計を支えている方にとっては、万が一の際の備えが充実することで安心感が高まります。将来の年金も増えていくため、長期的に見れば大きなメリットになります。
Q. 国民年金から厚生年金に移行するとどれくらい負担が変わりますか?
国民年金に加入している場合、月々約17,000円の保険料を支払う必要があります。一方、厚生年金に加入すると、収入が88,000円を超えた場合でも、厚生年金の保険料は約8,000円で済みます。しかも、将来受け取れる年金額は多くなります。
これまで国民年金に加入していた方が厚生年金に移行すると、健康保険も含めてより手厚い保障を受けられるようになり、多くの場合で有利になります。
Q. 年金制度改革に対する反対意見はどこから来ているのですか?
適用拡大に対する反対には主に二つの側面があります。一つは労働者本人からの反対で、手取り収入が減ることを懸念する声です。将来たくさんもらえるとしても、現在の収入が減るのは避けたいという考えです。
また、厚生年金と一緒に加入が必要になる健康保険についても、「払い損になる」と感じる人が少なくありません。
もう一つは企業側からの反対です。企業にも保険料負担が生じるため、特に中小企業からは準備期間や対応コストについての懸念が表明されています。
Q. 年収の壁の問題はどう解決されつつありますか?
年収106万円の壁が話題になっていますが、この壁は最低賃金の上昇に伴って実質的に意味がなくなりつつあります。週20時間以上働けば、最低賃金でも自動的に106万円に到達してしまうからです。
そのため、年収の壁を撤廃し、週20時間という労働時間だけを基準にする方向で制度が変わりつつあります。将来的には、労働時間に関わらず、1円から税金や社会保険料を徴収し、必要な人には給付を行うシームレスな制度が理想的だという意見も出ています。

Q. 今後の年金制度改革で注目すべきポイントは何ですか?
現在検討されている重要な改革ポイントとして、国民年金の加入期間の延長があります。現在は20歳から60歳までの40年間ですが、これを65歳までの45年間に延長する案が出ています。
この改革が実現すると、所得代替率(現役世代の平均収入に対する年金受給額の割合)が約4%上昇すると試算されています。5年間で約100万円の追加保険料を支払うことになりますが、65歳から受け取る年金が月1万円増えるため、10年で元が取れる計算になります。
Q. 年金制度にはまだどのような課題がありますか?
自営業者に関する課題が複数あります。例えば、自営業者でも5人以上雇用している企業は厚生年金への加入が義務付けられていますが、飲食店やクリーニング店、旅館などの生活衛生営業は30人まで加入義務がないという不均衡があります。
また、自営業者の家族従業員(約100〜200万人)の保障が薄いことも問題です。これらの課題はマイナンバーカードやインボイス制度の普及により、所得把握が進むことで解決に向かう可能性があります。

Q. 現役世代の負担軽減について、考慮すべき点は何ですか?
現役世代の負担軽減を主張する政党が増えていますが、その影響を慎重に考える必要があります。社会保障の負担を減らし自費負担を増やすと、金持ちは得をしますが、低所得者は親世代のケアにより多くの費用を負担することになり、結果的に家計の負担が増える可能性があります。
厚生年金の保険料率は既に18.3%で上限に達しており、これ以上は上がらないことも知っておくべき点です。「どんどん保険料が上がる」という主張は必ずしも正確ではありません。
また、「現役世代の負担」という言葉には企業負担の軽減という側面もあることを理解する必要があります。

Q. 年金制度に関する正しい情報をどう広めるべきですか?
年金制度に関する議論は10年以上前から続いていますが、多くの国民はその経緯を知りません。急に出てきた議論のように見えることもあります。
社会保障教育の充実が重要です。金融経済教育と同様に、社会保障についても学校教育に組み込み、国民の理解を深める必要があります。また、専門家が分かりやすく正確に情報を発信する機会を増やすことも大切です。
年金制度は国民生活の基盤となる重要な仕組みであり、デマや誤解に惑わされず、正確な情報に基づいた議論が必要です。