MONEY SKILL SET EXTRA
円安との上手な付き合い方【唐鎌大輔×田内学】
(115)
1.1万回視聴
2025年1月7日

株・保険・住宅など資産運用にまつわるスキルセットを一流のプロの講義を受けて学ぶMONEY SKILL SETの応用編。2025年1月に誕生するトランプ政権が為替に与える影響を唐鎌大輔と田内学が真剣対談 【出演】 唐鎌大輔(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト) 著書「弱い円の正体 仮面の黒字...
円安の正体と付き合い方、2025年の日本経済をどう生き抜くか
日本経済の大きな課題となっている円安。海外資産への投資ブームや人口減少など、様々な要因が複雑に絡み合い、私たちの生活に影響を与えています。この記事では、専門家の知見から円安の実態と向き合い方について解説します。


Q. 円安はなぜ起きているのでしょうか?
日本は世界的に見ても対内直接投資(外国企業による日本への投資)の割合が極めて低く、GDP比で5〜6%程度です。これは北朝鮮よりも低い水準で、バングラデシュやネパールの次に低い状況です。
一方で、日本からの資金流出は加速しています。財務省のデータによれば、2023年1月から10月までの投資信託経由での海外有価証券購入額は約10兆円に達しました。これは2022年の年間合計4.5兆円の2倍以上で、異例の規模です。
この背景には、新NISAの導入などによる個人投資家の海外資産への資金シフトがあります。特に、S&P500やオールカントリーといった海外株式投資信託への資金流入が顕著です。
Q. 日本の貿易赤字が拡大していますが、その構造的な問題は何ですか?
貿易赤字の大きな要因として、デジタルサービスへの支出増加があります。クラウドサービスやストリーミングサービスなど、海外プラットフォームへの支払いが年々増加しています。例えば、Amazonプライムが1,000円値上げしても多くの人が解約しないように、必需品化したデジタルサービスへの支出は削減しにくい性質があります。
これは原油輸入に似た「デジタル原油」とも言える構造的問題です。EUでは、App Storeの30%手数料などに対する規制が始まっていますが、日本ではこうした対応が遅れています。
インバウンド観光客の増加は貿易赤字の改善に貢献する可能性がありますが、人手不足という別の壁に直面しています。日銀短観の雇用人員判断DIによれば、最も人手不足が深刻なのは宿泊・飲食サービス業であり、これはインバウンド産業そのものです。政府は訪日観光客を6,000万人に増やす目標を掲げていますが、サービス提供能力の限界が見えています。

Q. 個人投資家の海外投資と円安の関係はどう捉えるべきですか?
海外資産への投資ブームについて、2020年頃から日本株よりも海外株式への資金流入が顕著になっています。これは「みんながやっているから」という日本人特有のコード(行動パターン)が強く働いている可能性があります。
投資の観点からは、金融理論的には様々な種類の資産を持つことがリスクを小さくします。「全部ドル建て米国株が大正解」という主張は、この2年の円安による見かけ上のパフォーマンスに過ぎず、健全な分析とは言えません。
また、海外投資を促進するNISA制度についても、日本経済への影響を考慮した制度設計の議論があってもよいのではないかという指摘もあります。イギリスでは自国株式優遇枠を設ける議論もあったようです。

Q. 人口減少は日本経済にどう影響しますか?
日本の人口問題は今後さらに深刻化します。2065年には人口が8,800万人程度まで減少し、労働生産人口は現在の7,500万人から4,500万人程度になると予測されています。
特に深刻なのは出生数の減少です。政府統計では2040年の15歳未満人口を1,194万人と予測していますが、これは年間80万人の出生を前提としています。しかし、実際の出生数は既に70万人を割り込んでおり、今後の人口減少はさらに加速する可能性があります。
人口減少は経済規模の縮小を意味し、株式市場の規模にも影響します。GDP(国内総生産)は基本的に「取引量×価格」で計算されますが、人口減少により取引量自体が減少すると、インフレによる価格上昇だけでは経済成長を維持できなくなります。
Q. 円安と日本経済の未来に対して、どう向き合っていけばよいですか?
円安対策として有効なのは対内直接投資の促進です。例えば熊本県ではTSMCの進出により雇用・賃金環境が改善しています。政府は2030年までに対内直接投資の残高を現在の50兆円から100兆円に増やす目標を掲げています。
しかし対内直接投資促進のボトルネックとなるのが、労働力不足と電力供給の問題です。これらを解決するには移民政策や原発再稼働などの議論が避けられませんが、イデオロギー対立を招きやすいテーマであり、政治的にも取り組みにくい課題となっています。
円安を前提とした対策としては、個人レベルでは分散投資を心がけることが重要です。また、企業レベルではドル建て収益を増やす戦略を検討することも必要です。
長期的には、イノベーションを生み出す「勇者」の育成と、それを支える社会環境の整備が不可欠です。デジタルプラットフォームビジネスなどで日本発のイノベーションを創出し、経済全体を押し上げていくことが求められています。