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トランプ2.0が為替に与える影響【唐鎌大輔×田内学】
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2024年12月31日

株・保険・住宅など資産運用にまつわるスキルセットを一流のプロの講義を受けて学ぶMONEY SKILL SETの応用編。2025年1月に誕生するトランプ政権が為替に与える影響を唐鎌大輔と田内学が真剣対談 <ゲスト> 唐鎌大輔(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト) 著書「弱い円の正体 仮面の黒...
2025年の為替はどうなる?円安が進行する構造的要因と上手な付き合い方
為替相場は日本経済に大きな影響を与える重要な指標だ。2025年の為替相場はどうなるのか、特にトランプ政権下での見通しや円安の構造的要因について、専門家の見解をQ&A形式でまとめた。


Q. トランプ政権はアメリカの金利と為替にどのような影響を与えるか?
トランプ政権の政策は基本的に「インフレ促進型」と言える。財政政策では法人税引き下げやトランプ減税の恒久化を目指し、通商政策では中国向けに60%、メキシコ経由で入ってくる製品には100%、世界全体には10〜20%の関税を課す「ユニバーサルタリフ」を掲げている。
金融政策については「低金利が好き」と発言しているが、これらの政策は全体としてアメリカの物価を押し上げる方向に作用する。インフレを抑制するために利下げを進めてきたFRBにとって、この状況は「トランプ2.0はインフレ2.0」という状況を生み出す可能性が高い。
マーケットのコンセンサスとしては、トランプ政権下でインフレが再発し、ドル高・円安の要因になると見られている。


Q. 円安にはどのような種類の投資家が影響しているのか?
為替市場にはドルを買う人が2種類存在する。
1. すぐに買う人:価格をあまり気にせず短期的に動く投資家。ドルを買って小麦などの商品を購入するなど、保有期間が短い。
2. ゆっくり買う人:価格を気にする長期投資家。ドルを長期保有する目的で購入する。
短期的な相場変動は「すぐに買う人」の影響が大きく、長期的なトレンドは「ゆっくり買う人」の影響が大きい。トランプ政権によって金利が上昇するとの見通しから、「すぐに買う人」が先回りして動いている状況だが、本当にドル高が続くためには「ゆっくり買う人」が継続的に出てくる必要がある。
前回のトランプ政権時は長期金利が上昇していた時期だったため、魅力的な投資対象としてドルが買われたが、今回も同様の状況になるかは不透明だ。
Q. 円安は一時的なものなのか、それとも構造的なものなのか?
過去10年間、日本は円高を経験していない。変動相場制が始まった1973年から貿易収支とドル円相場を見ると、2013年頃から円安トレンドが続いている。この時期は日本の貿易黒字がなくなった時期と一致している。
2022年の日本の貿易赤字は20兆円、2023年は9.3兆円、2024年は予想で5.5兆円程度と改善傾向にあるものの、コロナ禍以前の2019年でも年間1〜2兆円の赤字だった。これは構造的に外貨が漏れやすくなっていることを示している。
日本は経常収支が黒字だから大丈夫という意見もあるが、その黒字の内訳を見ると、第一次所得収支(過去の投資からの収益)によるものが大きい。この中には日本企業が海外で稼いだ利益をそのまま現地で再投資するケースや、投資家が米国債の利子や米国株の配当金をそのまま外貨で保有するケースが含まれる。これらは会計上は黒字だが、実際には円に換金されないため、為替レートには影響しない。
キャッシュフローベースで経常収支を見ると、2022年は約10兆円、2023年は約12兆円の赤字になっており、これが円安の構造的要因と考えられる。
Q. デジタル赤字とは何か?それは円安とどう関係しているのか?
デジタル赤字とは、サービス収支のうち「その他サービス」に含まれる通信・コンピューター・情報サービスの赤字を指す。具体的には、クラウドサービスの利用料やAI関連サービスへの支払いなどが含まれる。
日本のサービス収支は、インバウンド観光による「旅行収支」で大きな黒字を出している一方で、「その他サービス」では大きな赤字を出している状態だ。2023年の旅行収支黒字は約3.6兆円、2024年は5〜6兆円程度になる見込みだが、サービス収支全体では約3兆円の赤字となっている。
日本はアニメや漫画などのコンテンツ輸出で外貨を稼いでいるものの、海外プラットフォームへの支払いがそれを上回っているのが現状だ。
Q. 円安との上手な付き合い方は?
円安だけを解決しようとするのではなく、根本的な問題を理解することが重要だ。円安の背景には人口減少や生産性の問題がある。2040年には15歳未満の人口が1194万人まで減少する見通しで、これまでの成長率を単純に延長して考えることは難しい。
外資系企業の誘致は一つの解決策となる。例えば熊本県では外資系企業の進出により、雇用や賃金の状況が改善している例がある。日本全体でマクロ経済に起きていることとは異なる動きが見られる地域もあり、こうした取り組みを参考にすることも有効だろう。
Q. 海外旅行の高さは為替だけの問題なのか?
日本人が海外旅行で「高い」と感じる要因は、為替だけではなく各国の賃金水準の差も大きく影響している。例えば、ニューヨークのJFK空港で売られている水が3.7ドル(約600円)と高く感じるのは、円安の影響もあるが、そもそもの値札が高いことが主因だ。
値札の高さは現地の賃金水準を反映しており、アメリカなど先進国では賃金の上昇率が日本よりも高い。日本が「失われた30年」で賃金が停滞する中、他国との差が広がってきた結果、為替以上に物価差を感じるようになっている。
現在、日本人が旅行して「物価が同じくらい」と感じるのは韓国や台湾などで、これらの国は1人当たりGDP(ドル建て)が日本とほぼ同水準になっている。かつてアジアにおいて突出していた日本の経済的地位が相対的に低下している現実も理解する必要がある。