超予測
【2025年超予測:自動車(後編)】トヨタとテスラ。ソフトウェア大競争
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2024年12月30日

バッテリーEVの失速と中国市場の変調により、大型リストラが吹き荒れた2024年の自動車業界。絶対王者のトヨタ、新興のテスラ・BYD、そして、両者に挟撃されるホンダ・日産。2025年の勝敗の分かれ目となるのは何か?自動車アナリストの中西孝樹氏に超予測してもらった。 <ゲスト> 中西孝樹|ナカニシ自動...
自動車産業の未来戦略:中国EVとの闘い方から日本メーカーの活路まで

Q. 中国のEV市場の現状と日本自動車メーカーが直面している課題は?
中国のEV市場は赤色の勢力、つまり中国勢に市場が染められている状況だ。価格面を見ると、ドイツ勢と日本勢は中国メーカーと比較して5万から10万円ほどの価格差があり、全く戦えるような状況にはない。中国では、激しい値引き競争が起きており、テスラ並みの値引きをしている状況だ。
中国メーカーの強さの原点として、BYDは非常に統合度の高いソフトウェアを持っている。ハードウェアも内製化が進み、技術力が急速に向上している。10万人もの研究開発人員を擁し、ソフトウェア開発を驚異的なスピードで進めている。
さらに、ファーウェイも大きな存在感を示している。彼らの統合システムは標準化され、クラウドでバックアップされている。中国で車を作るためには、もはやファーウェイのシステムを活用することが欠かせない存在になりつつある。

Q. 中国の自動車産業戦略はどのように形成されてきたのか?
中国政府は2018年から2019年頃にテスラに中国進出を認めた。当時は新エネルギー政策が思うように普及せず、市場活性化のために「池にナマズを入れる」感覚でテスラを呼び込んだ。それが「サメ」のような存在になり、NIやリーなどの非常に強い新興勢力が生まれてきた。これらの企業が提供する価値を大衆価格で提供し始めたのがBYDだ。
しかし、中国政府は新興勢とBYDだけが繁栄することを望んでいない。国営企業や主要都市の企業も大切だ。そのため、奇瑞汽車や北京汽車などの公営企業も、BYDやNIOのビジネスモデルを模倣して電気自動車に特化した新ブランドを次々と立ち上げている。
このように、中国は政府の意向を受けた戦略的ブランドが一丸となって、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)とバッテリーEVの国際化と大衆化を進めている構図になっている。
Q. 日本メーカーはこの「勝てない戦い」にどう対応すべきか?
日本を含めた伝統的なグローバル勢は、従来ヨーロッパやアメリカ向けにグローバルモデルを開発してきた。しかし今は中国が先行しているため、開発課題として中国専用モデルの開発を先に行うことが必要だ。つまり、グローバルモデルと中国専用モデルの分離が第一になる。
これを行わないと、まず中国市場で負け、さらに中国企業がタイなどのASEAN諸国、オーストラリア、中近東、中南米などグローバルサウスに急速に進出するため、そこでも敗北する連鎖が起きる。
したがって、中国専用モデルを先に開発して戦える力を作りながら、2026年から2027年にグローバルモデルを投入し、最終的にはグローバルモデルと中国専用モデルを一体化開発するという道筋が必要だ。
特に日本の大手自動車メーカーは中国市場を捨てることができない。中国市場を失うことは、あらゆる市場での敗北につながる恐れがある。ソフトウェアとデータは分断するとしても、ハードウェアやアーキテクチャは連携可能だ。
Q. トランプ政権2.0は日本の自動車産業にどのような影響を与えるか?
トランプ政権2.0における関税政策には3つの議論がある。まず、日本やヨーロッパからの輸出に対する関税の引き上げだ。現在の2.5%から10〜20%への引き上げが検討されているが、これは政治交渉の側面が強く、日本がアメリカへの投資を示せば解決できる可能性がある。
次に、中国からの輸入に対する追加関税だ。最大60%までの引き上げが検討されているが、自動車に関しては中国からの直接輸出はほとんどないため、影響は限定的だろう。
最も懸念されるのは、メキシコとカナダに対する追加関税だ。メキシコは不法移民、カナダは不法薬物を理由に、これらを抑制しない場合は追加関税をかけるという脅しをかけている。ここが日本の自動車産業にとって最大の課題であり、特にメキシコに大きな工場を持つ日産とマツダにとっては深刻な経営課題となる可能性がある。

Q. トヨタとホンダの今後の戦略は?
トヨタは2023年に策定した戦略で、専用EVと汎用のマルチパスウェイ(複数の動力源に対応できるプラットフォーム)の両方を準備する方針だった。現在はさらに進化し、専用EV投資の一部を下方修正し、マルチパスウェイの比率を高め、プラグインハイブリッド車に力を入れる方向に進んでいる。
そのため、新しいエンジン開発も進めており、1.5Lターボや2.0Lターボなど電気リッチを前提としたエンジン設計を採用している。さらに、SDV戦略をEVだけでなくプラグインハイブリッドとも結びつける方針だ。
一方、ホンダは2020年からハイブリッド戦略を進め、2024年には三部敏宏社長が電気自動車への注力を発表した。しかし、実際には両輪戦略を取っており、18年ぶりとなる中型・ミッドサイズのプラットフォーム刷新を行い、ハイブリッドを前提とした新しいプラットフォームと1.5Lと2.0Lの直噴エンジンを開発した。
Q. 自動車産業の構造変化は?
自動車産業は大きな構造変化を迎えている。リーマンショック後は中国市場の爆発的成長により高成長時代が到来したが、コロナ危機後は低成長時代に入り、今後は年平均0.4%程度の成長率が予測されている。
また、内燃機関を中心とした標準化の戦いから、パワートレインの多様化によるEVとSDVの戦いへと変化している。さらに車体構造も変わり、従来のエンジンを中心とした統合制御から、ソフトとハードが分離された組み合わせ型の産業へと移行している。
ビジネスモデルも売り切り型から継続課金型へと変化し、バリューチェーン全体を取り込み、データと資源を紐づけるリカーリング型のビジネスモデルへと変わりつつある。自動車産業はもはやテック産業であり、この構図に乗れるかどうかが今後の成否を分ける。