PIVOT TALK MONEY
急速な円安の必然。1月の利上げはない
(55)
6,279回視聴
2024年12月24日

急速な円安が進むドル円市場。日米の金融政策がどう影響しているのか?日銀が利上げに慎重になっているのはなぜか?為替ストラテジストの佐々木融氏に聞いた。 <ゲスト> 佐々木 融|ふくおかフィナンシャルグループ チーフ・ストラテジスト 2023年12月から現職。日本銀行で調査統計局などを経て国際局(当時...
なぜ日銀は利上げを躊躇するのか?市場が見る円安の行方
日銀が利上げを見送る一方でFRBは利下げを実施。この状況下でドル円相場は急速に円安方向へ進んでいる。この背景には、アメリカ側の「タカ派的な利下げ」と日銀側の「ハト派的な据え置き」という対照的な姿勢がある。なぜ日銀は利上げに踏み切れないのか?その理由と今後の見通しについて、市場の専門家の視点から解説する。

Q. アメリカの利下げと日本の利上げ見送りにより円安が急速に進んでいますが、この背景をどう分析していますか?
アメリカ側は「タカ派的な利下げ」、日銀側は「ハト派的な据え置き」という状況です。アメリカの金利が上昇方向へ、日本の金利が低下方向へ向かっているため、ドル円相場が上昇しています。
FRBは予想通りの利下げを行ったものの、メンバーの1人が反対したことや、先行きの見通し(ドッツチャート)において、2025年の利下げ回数が4回から2回に引き下げられたことが注目されます。市場の利下げ期待は大幅に後退し、現時点では2025年末までに50ベーシスポイント(0.5%)の利下げさえ織り込まれていない状況です。
さらに、2年金利がFF金利(政策金利)に近づき始めていることから、市場は先行きの利上げの可能性も意識し始めています。これはドルが買われる要因となっています。

Q. アメリカのインフレ状況はどうなっていますか?
FRBが重視するPCE(個人消費支出)価格指数は、前年比2.8%と依然としてFRBの目標である2%を大きく上回っています。過去の利下げ局面と比較しても、インフレ圧力の鈍化が十分ではないことが伺えます。
また、トランプ次期大統領の政策も市場が意識し始めています。移民制限により賃金上昇圧力が高まる可能性や、関税引き上げによるインフレ圧力などを考慮すると、将来的に利上げが必要になるシナリオも排除できません。
Q. 日銀の利上げ見送りはどのような背景があったのでしょうか?
日銀の決定後の上田総裁の記者会見が市場に影響を与えました。賃金動向についてさらなる情報を求めていることや、経済のモメンタムを確認したいという発言は予想の範囲内でしたが、トランプ政権の政策がどのような影響を与えるかを見極めたいという発言は、長期にわたって利上げを見送る姿勢を示唆しました。
また、輸入物価の状況についても言及があり、今後ドル円相場が上昇しても、前年比で見た輸入物価はあまり上昇しないという見方を示しました。これは過去にドル円が161円まで上昇した際も、前年比でフラット程度だったという経験に基づいています。
こうした発言を受け、市場は1月の利上げ期待を大幅に後退させ、3月、5月と先送りする見方が広がっています。
Q. 日銀はなぜここまで利上げに慎重なのでしょうか?
日銀の姿勢の背景には2006年から2007年の利上げ後にリーマンショックが発生し、すぐに利上げ撤回を余儀なくされた経験があります。この「トラウマ」が、2024年7月の利上げ後に株価が急落した経験で再び蘇った可能性があります。
また、日本には依然としてデフレマインドが根付いているため、あえてインフレ方向に振れることでデフレマインドを払拭しようという戦略がある可能性も考えられます。日本政府の借金問題を考慮すると、インフレを起こすことが解決策の一つになるという見方もあり、政府と日銀が意図的にインフレを許容する方向に動いている可能性もあります。

Q. 1月の日銀会合では利上げがあるとお考えですか?
12月の会合で上田総裁が示した判断材料(春闘の動向、トランプ政権の政策影響、輸入物価の状況)は、1月までにほとんど新しい情報が得られない可能性が高いです。もし1月に利上げをするなら「何が新しい情報だったのか」という説明がつかなくなるため、論理的に考えて1月の利上げはないと見ています。
仮に経済指標が日銀の予想通りに推移しているにもかかわらず、利上げを行わない状態が続くようであれば、日銀が意図的に「ビハインド・ザ・カーブ」(後手に回る金融政策)の状態を作り出し、インフレを許容しようとしている可能性が高まります。
Q. このまま円安が進行した場合、為替介入はあるのでしょうか?
介入が行われるとすれば、2024年7月に介入が行われた161円を超えてからだと考えられます。しかし、トランプ政権への移行期間中は、アメリカと協議するための窓口が明確でなく、介入が技術的に難しい状況にあります。
さらに、トランプ政権は日本に対して自動車輸出削減や防衛費増額などの要求を行う可能性が高く、為替介入の承認と引き換えに政治的な譲歩を求める可能性があります。
また、日本はこの2年間で外貨準備の約9%を使用しており、介入の余力にも限界があります。過去の介入を見ると、アメリカの金利低下と同時期に行われた場合のみ効果があり、単独での介入はあまり効果がありません。
今後、年末年始の流動性の低い市場で161円を超えるような動きがあれば介入の可能性はありますが、現在のアメリカの金利環境では効果は限定的かもしれません。
