
年収123万の壁へ 立ちはだかる社会保険の壁【山田真哉】
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2024年12月23日
三田友梨佳と後藤達也がタッグを組み投資だけでなく「教育資金」「老後資金」など日々の生活にまつわる正しいお金の知識を専門家が提唱する「新常識」を基に学んでいくトーク番組。“オタク会計士”こと山田真哉氏が社会保険の壁と財源論について提言。 <ゲスト> 山田真哉(公認会計士・税理士) https://w...
年収の壁は毎年動く!? 106万円・130万円問題の今後と対策
税制と社会保険制度に存在する「年収の壁」問題が注目を集めている。政府・与党と国民民主党の協議により、壁の引き上げ幅が議論されているが、今後の制度はどう変わるのだろうか。税理士の山田真哉氏が解説する年収の壁の実態と今後の展望について、Q&A形式でまとめた。

Q. 「106万円の壁」と「130万円の壁」とは何ですか?
この二つの壁は、パートやアルバイトの年収が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が急増する境目です。106万円の壁は社会保険の加入基準で、これを超えると健康保険料と厚生年金保険料の支払いが発生し、手取り収入が大きく減少します。130万円の壁は、配偶者の税制上の優遇措置である配偶者特別控除が縮小する境目です。
これらの壁により、パートで働く人が収入を調整して壁を超えないようにするケースが多く、労働時間の抑制や人手不足の一因となっています。国民民主党は「年収の壁」を178万円程度まで引き上げるよう主張していますが、与党は120万円台での引き上げを検討していると報じられています。

Q. 収入が106万円を超えると具体的にどのような影響がありますか?
106万円を超えると社会保険に加入する必要があり、手取りが15%程度減少します。その代わり将来の年金は増えますが、実際のシミュレーションによると、手取りが年間約15万8000円減る一方で、将来の年金は年間5700円程度しか増えません。単純計算では元を取るのに28年もかかることになります。
健康保険料も考慮すると、65歳で年金をもらい始めた場合、93歳まで生きなければ元が取れない計算です。特に若い世代には将来の見通しが難しく、この「壁」を超えることに二の足を踏む原因となっています。
Q. 国民民主党案で壁が178万円に引き上げられるとどうなりますか?
国民民主党案で178万円まで壁が引き上げられれば、年収100万円から106万円の壁を超えても手取り率が94%程度に下がるだけで、その後も現状のように80%まで急激に下がることはありません。これにより労働抑制効果が減少し、人手不足の解決につながる可能性があります。
山田氏は「中途半端に120万円や130万円に設定すると、人手不足の解決にはならない」と指摘しています。少なくとも106万円や130万円の壁を超える水準でなければ効果が薄いとの見方です。
Q. 学生アルバイトや親の扶養に入っている場合はどうなりますか?
学生アルバイトの場合、現状では年収100万円の時点で手取り率は99%ですが、103万円を超えると親の特定扶養控除がなくなり、手取り率が80%まで急落します。さらに130万円を超えると所得税が発生し、国民健康保険に自分で加入する必要が生じ、手取り率は76%にまで下がります。
これが飲食店など学生の労働力に頼る業種では大きな問題となっています。学生は収入が103万円を超えないよう働く時間を調整するケースが多く、現状では時給の上昇もあり、週20時間程度の勤務でも簡単に100万円を超えてしまう状況です。
Q. 年収の壁の引き上げによる税収への影響はどうなりますか?
国民民主党の試算では、年収の壁を178万円に引き上げると年間7兆円以上の税収減が見込まれます。これに対する財源論が議論となっていますが、税収減と経済活性化によるカバーの関係は複雑で予測が難しい状況です。
山田氏は「財源論と年収の壁の話を本当にリンクさせていいのかどうか」と疑問を呈しています。減税に対して常に財源論が持ち出されると、「結局今財源がないと言っているから、一生財源はないということになる」と指摘しています。
Q. 今後、年収の壁はどのように変わっていく可能性がありますか?
これまで30年近く動かなかった年収の壁が今回見直される可能性が高まっていますが、今後は毎年動くような仕組みに変わる可能性があります。物価や賃金の上昇に連動して壁の金額も変動する「マクロ経済スライド」のような仕組みが考えられます。
これにより企業側は配偶者手当の見直しを迫られ、個人も毎年変わる壁に合わせて働き方を調整する必要が出てくるでしょう。山田氏は「毎年動くのが良いか悪いかは別として、皆様が情報にアンテナを張っていなければいけない時代になっていく」と指摘しています。
Q. 理想的な制度改革とはどのようなものですか?
理想的には社会保険と税制が「なだらかな坂」になることです。特に社会保険の壁は「崖」のようになっているため、これを緩やかにすることが望ましいとされます。しかし、既に保険料を払っている人との公平性の問題や、将来の年金額への影響などの課題があります。
長期的には共働き世帯に適した税制・社会保険制度に20~30年かけて移行していくことが現実的な解決策と山田氏は考えています。一方で「大きな改革は難しいので、既存の制度を少しずつ直していくしかない」という見方もあります。

Q. 年収の壁問題は政治的にどう動いていくでしょうか?
年収の壁問題は国民の関心が高まっており、次の参議院選挙の争点になる可能性があります。政治的な力関係や各省庁の縦割り行政の問題もあり、改革の行方は流動的です。
税制は財務省、社会保険は厚生労働省と所管が分かれており、「お互いがお互いのせいにしている」状況もあるため、政治がリーダーシップを発揮して横串を通す必要があります。制度の複雑さ自体が心理的な壁となっているため、シンプルで分かりやすい仕組みが求められています。
Q. 企業側への影響はどうなりますか?
年収の壁が引き上げられると、これまで壁を意識して労働時間を抑制していた人が増えて働くようになり、社会保険に加入する人が増加します。これにより企業の社会保険料負担も増大するため、特に中小企業には大きな負担となる可能性があります。
現在でも社会保険料の企業負担割合を増やす議論もあり、超大企業では企業負担7割・従業員負担3割といった形で負担割合を高めているケースもあります。しかし、中小企業にとっては大きな負担になるため、こうした施策の拡大には反対の声も多くあります。
Q. 今後の働き方や税制のあり方はどう変わるべきですか?
社会全体として、共働き世帯に適した税制・社会保険制度への移行が必要です。日本の制度は「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という前提で設計されたものが多く、現代の働き方とのミスマッチが生じています。
今後は賃金上昇が続き、70代でも働く人が増えるなど、働き方の多様化が進むことが予想されます。年収の壁を気にせず、希望に応じて働ける社会を目指すべきであり、そのためには税制と社会保険制度が労働意欲を阻害しない設計になることが重要です。

