PIVOT TALK BUSINESS
ジョブ型雇用のリアル
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2024年12月18日

人口減少下でさらに加熱する人材獲得競争。優秀な人材を獲得し、活躍してもらうために大企業はどう人事制度を改革しているのか?ジョブ型を導入した富士通、ロール型を採用するリクルートの人事リーダーが語る人事戦略。 <ゲスト> 柏村美生|リクルート 執行役員 大学卒業後、1998 年リクルートに入社。『ホッ...
日本企業の魅力的な組織作りと人材戦略──リクルート、富士通、政府の視点から
働き方改革が進む現代日本で、企業はどのように魅力的な組織を作り、人材を活かしていくべきなのか。リクルートの柏村美生氏、富士通の平松浩樹氏、そして政府・自民党の小林史明氏が語る人材戦略の最前線と、これからの日本企業のあり方について解説する。
Q. 魅力的な会社とは何か?
リクルートでは、創業以来「価値の源泉は人」という考え方を中心に置いている。社員一人ひとりがチャレンジできる環境や機会を提供し、それに見合った報酬を実現するサイクルを回し続けることが重要だ。
富士通では2020年からジョブ型人事制度に大きく舵を切った。その背景には「自立と信頼」という関係性の構築がある。会社が社員を信頼して制度設計し、機会をオープンに提供する。それに応えて社員が自立し、成長・挑戦するという関係性を目指している。
政府の立場からは、労働市場改革が日本の成長戦略であり、製造戦略そのものだという視点がある。2050年に人口が1億人になる「8がけ社会」を見据え、デジタル化・ロボティクスの活用と企業のM&Aによる骨太化が重要となる。そのドライバーとなるのが個人であり、一人ひとりのパフォーマンス向上が必要不可欠だ。
Q. リクルートの「個の尊重」とは具体的にどういう考え方か?
人間は自分が本当にやりたいことに取り組む時に、最大のパフォーマンスを発揮する。一人ひとりの好奇心がきちんと発揮される環境や機会を提供することが重要だ。これはリクルートの創業者が文学部出身だったこともあり、「人は自分のやりたいことをやった時に一番パフォーマンスが出る」という考え方が代々受け継がれている。
様々な価値観やバックグラウンドを持った人たちが最大限に生かされ、生きることが企業としても合理的だ。多様性や働き方の重要性というより、一人ひとりがパフォーマンスしやすい環境を重視している。甘やかすということではなく、社員が機会に気づき、チャレンジし、高い成果を出すという当たり前のサイクルを回し続けることが目標だ。

Q. 富士通のジョブ型人事制度導入の目的と成果は?
ジョブ型人事制度を導入しても、社員のマインドやマネージャーの振る舞いが変わらなければ機能しない。そこで富士通では、仕事に挑戦する機会や学ぶ機会を徹底的に全社に提供することに注力した。
最も顕著な効果が出たのは、ポスティング(社内公募制度)の大幅拡大だ。幹部職の採用は100%ポスティングで行うようにした結果、2020年から4年間で国内8万人の従業員のうち、2万7000人が応募し、1万人が実際に移動した。さらに移動した人たちのエンゲージメントが大幅に向上した。
自分で「これがやりたい」と思って移動することが、組織の活性化や個人のパフォーマンス最大化、エンゲージメント向上に大きく貢献する。また、こうした機会の創出により自主的な学びも増加し、学習時間や学習者数が4.5倍ほどに増えた。強制しなくても、目指すポジションに必要なスキルを学ぼうという意欲が高まっている。

Q. 社内公募制度をうまく機能させるコツは?
不合格になった人へのフィードバックを必ず行うことが重要だ。「ここが良かったが、ここが足りなかったから不合格」という具体的なフィードバックが、さらなる学びのモチベーションになる。また、上司には応募したことは内緒にしておくことで、何度でもチャレンジできる環境を整えている。
社内の健全な人材流動と市場原理を機能させるために、「やりたい人が動くのが一番良い」という考え方を組織内で共有することが前提となる。人気のある組織とそうでない組織が生まれるが、人気のない組織は自らの魅力を発信して人材を獲得する努力をすることが求められる。
これにより社内で人材獲得競争が起き、さらには外部からの中途採用も活性化した。組織やポジションの魅力をきちんと伝えて人材を獲得する力が培われた結果、外部からも人材を引きつけられるようになった。
Q. リクルートの人材マネジメントポリシーはどう変化している?
リクルートでは2011年に「自立・チーム・進化」という方針を打ち出した。自立的に働くこと、チームで最大のパフォーマンスを出すこと、そして個人と組織の成長が会社の成長につながるという考え方を強調している。
会社として社員に約束することとして、チャレンジする機会の提供、成果に見合った報酬、そして多様なワークスタイルの実現を掲げている。特に適切な人材に適切な報酬を支払うことは、世界的な人材獲得競争の中で重要性を増している。
また、リクルートは2012年に1社から7社に分社化し、2021年に再び1社に統合、さらに2025年には2つに分割する予定だ。こうした組織変更により「良質なカオス」を生み出し、社員が自らをリセットして新たなスキルやテーマに向き合う機会を創出している。

Q. 政府は成長分野への労働移動をどのように促進しようとしているか?
大きく2つの側面がある。まず、グローバルな人材獲得競争で日本企業が勝つための環境整備だ。すでにASEAN企業の管理職の方が日本の大企業の管理職より給料が高いという現実がある。もはや国内だけの視点では不十分で、国際的な競争力を考える必要がある。
次に、AI導入などのテクノロジー実装により、ホワイトカラーの仕事が減少する一方で、エッセンシャルワーカーなど従来ブルーカラーと呼ばれていた分野での人材需要が高まる。こうした分野の業務改革や生産性向上を担える人材の育成が求められる。
具体的な施策としては、ストックオプション制度の改善や、RSU(譲渡制限付株式ユニット)を一般社員にも無償発行できるような法改正を目指している。また、2023年8月末に「ジョブ型雇用のガイドライン」を発表し、高いパフォーマンスを発揮する人材の採用と、パフォーマンスが不十分な場合の対応策を明確化した。
Q. ジョブ型雇用の本質は何か?
ジョブ型雇用の本質は、従来の日本型の「囲い込み型」から脱却し、会社と社員が「選び、選ばれる関係」になることだ。ビジネスの変化に合わせて人材のポートフォリオも変えていく、ビジネスに連動した人材ポートフォリオマネジメントが重要となる。
日本では「簡単に解雇ができない」という懸念があるが、パフォーマンスが期待に満たない場合や仕事がなくなる場合でも、人事と上司と本人による定期的な話し合いを通じて、社内外の選択肢を提示し、サポートすることで対応可能だ。
囲い込み型の仕組みでは、社員は自分の昇進や仕事が「上から落ちてくる」という受け身の姿勢になりがちだ。テクノロジーの進歩や社会課題の複雑化の中で生き残るためには、社員一人ひとりが会社と対等な関係で、自分の人生と仕事を考える姿勢が必要だ。

Q. 世代間の価値観の違いにどう対応すべきか?
「日本企業や日本人はジョブ型に向いていない」「若い人はいいが年配者は無理」といった考えは思い込みに過ぎない。富士通の調査では、ポスティングへの応募や学習時間の増加は20代から50代まで、ほぼ同じ割合で起きている。年齢に関わらず、成長したい、挑戦したいという気持ちは共通しているのだ。
アメリカの働き方も、1980年代までは日本と大きく変わらず、終身雇用や年功序列が一般的だった。技術のサイクルが早くなかった時代には、一つの会社で長く働く方が国として生産的だったからだ。しかし、時代の変化に合わせて働き方も変わっていく必要がある。
現在の20代と50〜60代では働き方の価値観が大きく異なるため、一つの制度ですべてをカバーするのは難しい。世代間で考え方を変えて対応していくことが求められる。アメリカの変化にも30年かかったことを考えると、日本も長期的な視点で取り組むべきだろう。
Q. 日本の将来をどう見ているか?
日本の将来は明るいと考えるべきだ。ジョブ型雇用で人材をしっかり活かせている企業はまだ少なく、それだけ伸びしろがある。過去3年間で約150万人の人口減少があったにもかかわらず、日本経済は550兆円から600兆円まで成長した。正しい経済活動と政策があれば、人口が減少しても成長は可能なのだ。
政府は規制改革を徹底的に行い、企業はその中で運用して活躍する。経営者と人事部門に求められるスキルは今後ますます高まるため、それを共に高めていくことが重要だ。
また、企業のM&Aも成長戦略の鍵となる。年間2社以上のM&Aを行った企業に税制優遇を行う制度も2024年4月から始まった。新しい会社を取り込んだ際の人材マネジメントにも、良い人事制度が必要となる。
日本企業の魅力を高め、成長を続けるためには、人材の流動性を高め、一人ひとりが自立して成長できる環境を整えることが不可欠だ。そして、それは企業だけでなく、政府も含めた社会全体で取り組むべき課題なのである。