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徹底解説:シリア政権崩壊
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2024年12月15日

シリア解放機構の攻撃により崩壊したアサド政権。今後、シリアはどう統治されるのか?中東情勢にどんな影響を与えるのか?トランプ政権はどう動くのか?東京大学大学院教授の鈴木一人教授に聞いた。 <ゲスト> ▼プロフィール 鈴木一人|地形学研究所 所長/東京大学公共政策大学院 教授 専門は国際政治経済学。英...
シリア政権崩壊の衝撃と中東情勢への影響
シリアで突如として起きたアサド政権の崩壊は、中東地域に新たな展開をもたらしています。なぜアサド政権は12年間の内戦を経てこのタイミングで崩壊したのか、そして今後のシリアと中東情勢はどうなるのか。東京大学大学院教授で地政学研究所所長の鈴木一人氏に詳しく聞きました。

Q. アサド政権崩壊の背景は何ですか?
アサド政権崩壊の主な要因は、支援国の弱体化にあります。約12年間続いた内戦は8年前に一度収束しましたが、アサド政権を支えていたロシアとイランという二つの柱が弱くなりました。ロシアはウクライナ戦争で手一杯となり、イラン側からの支援を担っていたヒズボラもイスラエルとの戦いで力を失っていました。
このタイミングでトルコがシリア北部のイドリブ県で反体制派を支援し、攻撃を開始したところ、予想以上にシリア軍が弱体化していたため、反体制派が急速に進撃し、ダマスカスまで制圧する事態となりました。アサド大統領はロシアに亡命する結果となりました。
これは日本の歴史に例えると、平安時代の源平合戦で、最初は平清盛が源頼朝を東国に流していたのに、突然源頼朝が力をつけて京都に攻め上がってきた際、平家軍が鳥の音で怯えて逃げるように、あっという間に都が落ちたような状況に似ています。

Q. このアサド政権崩壊は専門家にとっても予想外だったのでしょうか?
このシリア情勢の急変は、ほとんどの専門家にとって想定外でした。イスラエルのガザ地区やヒズボラとの戦いに注目が集まっており、シリアへの関心は比較的薄れていました。確かに、イスラエルがシリア内のヒズボラやイラン部隊への攻撃を行っており、シリアの防衛能力が弱っているという印象はありましたが、このタイミングで反体制派が動き出すことは想定されていませんでした。

Q. 反体制派を支援したトルコの役割は大きかったのですか?
トルコは中東・高カフカス地域における「隠れた巨人」的存在です。過去にはアゼルバイジャンとアルメニアの紛争でも、トルコはアゼルバイジャンを支援し、ドローンなどを提供してアルメニアに対する優位性を確立させました。
今回のシリア内戦とアゼルバイジャン・アルメニア紛争は構図が似ており、ロシアがアサド政権(アルメニア側)を見捨て、トルコが反体制派(アゼルバイジャン側)を支援するという構図でした。トルコは中東の様々な勢力に影響力を持つ支援を積極的に行っています。
Q. シリア解放機構は統治能力を持っているのでしょうか?
シリア解放機構(HTS)は、もともとシリア北部の山に囲まれた資源の乏しい地域で活動していた組織です。そこでアサド政権の攻撃を受けながらも生き残ってきた実績から、一定の組織力と行政力はあると考えられます。
ただし、シリア全体となると、クルド人やイラク人など様々な民族が混在し、旧イスラム国の残党とも関係を構築する必要があります。HTSの統治能力はまだ未知数ですが、アサドのように恐怖で支配するタイプの組織ではないため、「アサド政権が戻るよりはマシ」と考える人々の支持を得る可能性はあります。
シリアは基本的に部族社会であり、各部族間の紛争を防ぎながら統治できるかがHTSに課せられた試練です。これをうまく処理できれば、安定した統治も可能かもしれません。
Q. HTSを支援する国はどこになるのでしょうか?
現時点ではトルコが主な支援国ですが、今後はイランやロシアも関係構築を試みる可能性があります。イランはHTS経由でレバノンのヒズボラへの支援ルートを確保したいと考えるでしょう。ロシアもシリア国内の軍事基地の保障のためにHTSとの関係を模索するかもしれません。
場合によっては、イスラエルが裏でHTSを支援する可能性も考えられます。イランの影響力排除につながるならば、イスラエルにとってもメリットがあるためです。HTSは現在トルコ以外の主だった支援国なしで動いていますが、今後さまざまな国とのネットワーク構築が進むでしょう。
Q. アメリカはどのような立場を取るのでしょうか?
バイデン政権は任期があと1ヶ月しかないため、大きな動きはないでしょう。トランプ次期政権は基本的にイスラエルと足並みを揃える方針になると思われます。
ただし、HTSは元々アルカイダ出身の指導者が率いる組織であり、アメリカによってテロ組織認定されているため、直接的な支援は難しいでしょう。アメリカはシリアの不安定化がイラクに波及することを懸念しており、イラク内のイラン系武装組織と反アサド政権勢力が結びつくシナリオを最も警戒しています。
Q. 今回のアサド政権崩壊は中東全体にどのような影響を与えますか?
イスラエルとヒズボラの関係については、ヒズボラがシリアに注ぐエネルギーがなくなることで、体力回復のスペースが早まる可能性があります。ただし、イスラエルとの戦いで消耗が激しかったため、大規模な紛争に発展する可能性は低いでしょう。
最も注目すべきはイスラエルとイラン、イスラエルとトルコの関係です。トルコがHTSを支援することで、トルコの影響力がイスラエル近くまで及ぶことになります。ガザ紛争以降、トルコとイスラエルの関係は悪化しており、トルコの影響下にあるHTSがシリアを支配することは、イスラエルにとって必ずしも好ましい状況ではありません。
一方で、イラン支援下にあったアサド政権が崩壊したことは、イスラエルにとってはポジティブな側面もあります。しかし、中東全体の不安定さが増すことはあっても、決定的な変化にはつながらないと考えられます。
Q. トランプ次期政権の中東政策はどうなるでしょうか?
トランプ政権の優先課題はイスラエル支援とロシア・ウクライナ戦争の停戦だと思われます。シリア問題の優先度はそれほど高くないでしょう。
アメリカはエネルギー自給が可能になったため、中東への依存度が低下しています。トランプにとって中東への関心は主にビジネス面や、イスラエル支援の文脈で重要となります。シリアはビジネスの対象でもなく、イスラエル支援の観点でも重要度が低いため、積極的な関与は期待できません。
サウジアラビアなど湾岸諸国も、シリアを含むレバント地域(シリア、イスラエル、レバノン)の問題には消極的な姿勢を示しており、イスラエルとの関係悪化を避けたいという意向が強く表れています。
Q. ロシア・ウクライナ戦争の停戦はトランプ政権下で実現するでしょうか?
トランプの仲介による停戦実現の可能性はありますが、それは恒久的な平和につながるものではないでしょう。トランプはウクライナに対して「停戦に応じなければ武器支援をしない」などの圧力をかけて、強制的に停戦を実現させようとする可能性があります。
しかし、このような強制的な停戦は不安定であり、すぐに崩壊する恐れがあります。プーチンにとっては停戦期間を軍備増強の時間として利用し、トランプ政権の終盤に再び攻勢を強める可能性もあります。トランプが停戦を実現したとしても、それは一時的なものに留まるでしょう。