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10年で150兆円投資。乾坤一擲のGX戦略
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2024年12月19日

日本が乾坤一擲の策として打ち出した、GX戦略。10年間で官民150兆円を投資する予定だ。GXの本質とは何か?日本の勝ち筋はあるのか? 竹内純子氏に解説してもらった。 <ゲスト> 竹内純子|国際環境経済研究所理事 1994年慶応義塾大学法学部法律学科卒業後、東京電力株式会社入社。2011年の福島原子...
「GXって何?」150兆円投資でカーボンニュートラルを目指す日本の最後の賭け
GX(グリーントランスフォーメーション)とは何か、どのように進められているのか、そして日本の産業はどう変わっていくのかについて、環境エネルギー分野の専門家である竹内純子氏の解説を質問形式でまとめました。

Q. GXとは何ですか?何を目指しているのですか?
カーボンニュートラルという言葉が広まった後に登場したGX(グリーントランスフォーメーション)は、単にCO2を減らす取り組みを超えたものです。GXでは、エネルギーを安定的かつ安価に確保しながら経済成長につなげることを戦略的に考えています。
カーボンニュートラルが「2050年に排出量を実質ゼロにする」という目標だけを示すのに対し、GXはその過程で経済成長をどう実現するかという観点を含みます。世界的に見ると、アメリカやヨーロッパはCO2削減を単なる環境対策ではなく、自国の経済成長戦略として位置づけています。

Q. 日本のGX戦略の規模はどれくらいですか?
日本政府は、GXを推進するために10年間で20兆円を投資する計画です。この投資により、民間からも130兆円の投資を引き出し、官民合わせて合計150兆円規模の投資を目指しています。これは日本にとって「最後の賭け」とも言える大規模な取り組みです。
この20兆円は、「GX経済移行債」という国債を発行して調達します。岸田政権の下で決定されたこの政策は、意外と大胆な取り組みと評価されています。

Q. エネルギー政策と気候変動政策はどう関係していますか?
両者は表裏一体の関係にありますが、考え方の時間軸が異なります。エネルギー政策は足元を見て、現実的に10年後のエネルギー需要をどう賄うかを保守的に考えます。一方、気候変動政策は産業革命以来最大級の社会変革を求めるもので、2050年のゼロカーボンという目標から逆算して考えるバックキャスト的アプローチをとります。
この両者を2050年までの25年という短期間で結びつけていくことが課題です。その段差をどう埋めるかがGXの取り組みの一つといえます。
Q. GXではどんな政策が進められていますか?
GXでは主に以下の4つの取り組みが重要です:
1. 脱炭素電源の安定供給確保 - 再生可能エネルギーや原子力などの整備
2. 移行期間の化石燃料確保 - 脱炭素へ移行する間も安定供給が必要
3. 産業構造の転換促進 - 鉄鋼や化学産業など製造方法の抜本的変更
4. カーボンプライシングの導入 - 炭素排出に価格をつける仕組み
特に注目すべきは「規制と支援の一体型投資促進策」です。単に政府が支援するだけでなく、例えば「エコカーを名乗るにはグリーンスチールを使わなければならない」といった規制を設け、民間投資を促進する仕組みです。
Q. カーボンプライシングとは何ですか?どう導入されるのですか?
カーボンプライシングとは、CO2排出に対して価格付けをする仕組みです。これにより、企業や個人がCO2排出削減に向けた行動を取るよう促します。日本では2023年5月に成立した法律で導入が決まっていますが、具体的な金額はまだ決まっていません。
政府は「新たな国民負担にならないよう」に配慮し、現在の再生可能エネルギー賦課金や石油石炭税が将来的に減少する部分に徐々に導入する方針です。しかし、カーボンプライシングの本来の目的は、エネルギーコストを上げることで省エネや電化などの行動変容を促すことであり、「痛みがない」と言われると効果に疑問が残ります。
Q. 日本の産業はGXでどう変わるのでしょうか?
GXにより産業構造全体が変わります。例えば鉄鋼業では、製造方法を水素還元製鉄という全く新しい技術に変える必要があります。これにより、大量の水素を供給できる場所に製鉄所が立地するなど、産業立地そのものが変わる可能性があります。
また、原子力発電の活用も重要です。特にデータセンターなどデジタル化に伴う電力需要が急増しており、これに対応するためには原子力という選択肢が不可欠です。岸田政権がGX電源法を改正し原子力活用の方針を打ち出したことは大きな一歩でした。
Q. GXビジネスでスタートアップの役割は何ですか?
GXの主役は企業と技術であり、政府の役割は技術や意欲を持った人たちが報われる土俵を整えることです。特にエネルギー分野ではスタートアップへの期待が高まっています。
既存のエネルギー企業は安定供給を最優先するため、新しいチャレンジが難しい面があります。スタートアップは「0から1」を生み出し、大企業と連携して「1から10」にし、大企業が「10から100」にするという役割分担が理想的です。
ただし、エネルギーインフラは規模の経済が働く分野であり、スタートアップだけでは担いきれません。また、大企業とスタートアップの連携には、体力差からくる摩擦もあります。お互いが歩み寄り、良いエコシステムを作ることが重要です。

Q. エネルギー分野での起業にはどんな可能性がありますか?
エネルギー分野は規模が大きく参入障壁が高いように見えますが、以下のような視点で起業の可能性があります:
1. 既存市場の穴を見つける - 例えば、小型アップサイクル装置の運転データを可視化するサービスなど
2. 分散したリソースを束ねる - 家庭の蓄電池や電気自動車のバッテリーを束ねて電力需給調整に活用
3. 参入市場をピボットする - インフラ全体ではなく、グランピングや別荘市場など特定ニーズから始める
4. 技術を多角的に見る - 電気自動車は「タイヤがついたバッテリー」として捉え、防犯機能など多様な用途を考える
異業種からの参入も重要です。産業そのものが変わる中で、業種を超えた連携が新たな価値を生み出します。エネルギーの基礎知識を持ち、相手の抱える課題や本質を理解することで、有意義な協業が可能になります。